第199話 ボーナス屋、2つに斬る
【告:当システムは《進化する可能性》の干渉により自動進化を開始します。】
【――――完了。】
【現時点を持ちまして、《応報之絶対真理》は《真・応報之絶対真理》に進化しました。】
【当機能は高位の存在にも使用可能になりました。】
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俺のチートがまた進化した!
その直前になんか凄い事があったみたいだけど。
〈勇者は理不尽な存在へまた一歩進化した!〉
やかましい!
『テメエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!何をしやがったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』
ブチギレたクロウ・クルワッハが牙を剥き出しにして襲い掛かってきた。
ちゃんとリセットはされている筈とはいえ、あのビッグサイズが突っ込んで来たらマズイ!
すぐに防御したいけど、今のリセットで魔力を大量に失ってしまった反動ですぐには魔法が使えない。
「勇者様!!」
「シロウさん、危ない!!」
『ゴケゴケェ!!』
けど、代わりに皆がバリアを張った。
そしてバリアに激突するクロウ・クルワッハ!
物凄い衝撃が部屋全体を襲った。
「うおおおおお!!地震かよ!?」
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
うわ!
今度は火を吐いて来た!!
ブレスはリセット対象外なのか!?
あ、バリアにヒビが!
もっとクロウ・クルワッハを雑魚に変えないと!
今度はステータス調整機能だ!
《各ステータスを操作してください。》
【クロウ・クルワッハ(暗黒龍) のステータス】
体力:100(+100) 攻撃:150(+100) 防御:100(+100) 精神:100(+100) 知力:50(-40) 敏捷:100(-40) 器用:100(-40) 保留:0 (単位:%)
知力低すぎ!
道理で、龍神なのに叫んでる内容がバカ過ぎる訳だ。
カッコの中の数字は補正か何かだろう。
〈異次元からの干渉!〉
〈クロウ・クルワッハのステータスが元に戻り始めた!〉
マジか!
リセットをリセットってチートだろ!
こっちは魔力不足……と思ったら、急速に魔力が回復し始めた。
〈アンナは勇者に(愛の力で)魔力を分け与えた!〉
〈コッコくんは勇者に魔力を分け与えた!〉
「勇者様!頑張ってください!」
『ゴケェ!!』
アンナちゃんとコッコくんが回復してくれていた。
よし!
これなら大丈夫だ!
サイドリセット!&ステータスをオールゼロ!!
いっそマイナスになれ!
【クロウ・クルワッハ(暗黒龍) のステータス】
体力:0 攻撃:0 防御:0 精神:0 知力:0 敏捷:0 器用:0 保留:700(280) (単位:%)
マイナスにはできなかった。
〈《真・応報之絶対真理》の新機能により、クロウ・クルワッハのステータスは第三者からの干渉は不可能になった!〉
けど、またリセットをリセットされる心配は無くなったようだ。
ムカつくけど解説者がいるのは便利だな。
〈神ヘルメスは信者が増えた!〉
なってねえよ!
それはそうと、クロウ・クルワッハは?
『うおおお!なんでだあ!なんでおれのこうげきがききゃないんだ~!?』
…………。
能力だけでなく、他の大切なものもリセットしちゃった?
頭をポンポンとバリアにぶつけてるけど、今度はヒビどころか揺れすらほとんど無い。
本当に雑魚になったようだ。
あ、角が片方折れた。
「「「…………」」」
俺以外のみんなも、変わり果て過ぎたクロウ・クルワッハにポカンとしている。
ブラスに至っては遙か遠くを見ているようだ。
みんな、戦闘中だってこと忘れてない?
「………。GO!コッコ団!!」
『『『ゴケェ~!!』』』
取り敢えず、雑魚になった暗黒龍には超コッコ団(新名称引き続き募集中)の餌になってもらうことにした。
雑魚と化したクロウ・クルワッハに群がるニワトリの群、本当にスゴイ光景だ。
『ゴケェ~~~!!』
驚異の吸引力がクロウ・クルワッハの魔力をどんどん吸い込んでいく。
それにしても、幾ら俺がチートでも、この龍神呆気なさすぎだろ?
折角の大ボスなフォルムが台無し過ぎて残念すぎる。
むしろ不自然か?
「勇者様、私達も攻撃した方がいいんでしょうか?」
困ったアンナちゃんが俺にどうしたらいいのか訊いてきた。
ん~、もう超コッコ団(新しい名前付けて♡)が喰い尽くしそうだけど、油断は禁物だからみんなでフルボッコした方がいいかな?
「じゃあ、一斉攻撃開始!」
そして俺達はクロウ・クルワッハに一斉攻撃を仕掛けた。
『ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』
防御力ゼロの状態だからダメージは相当なもののようだ。
だけど、図体がデカすぎるからか中々倒れない。
『ぎゃあああああああ…ガガ……あああああ……ガッ……ああああ……ギガッ……あああ!!!』
ん?
気のせいか?
クロウ・クルワッハの姿や声がブレてるように見えたぞ?
――――ピロロ~ン♪
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『クロウ・クルワッハ、分裂開始!』
様々な攻撃を受け続け、クロウ・クルワッハは2つに分裂を始めた。
『魔神』バロールが生み出した闇の人格こと、『暗黒龍』クロウ・クルワッハが弱体化した為、本来の主人格である『龍神』クロウ・クルワッハが肉体の支配権を取り戻し、異物である闇の人格を体外へ排除しようとしている事による現象。
元々、『暗黒龍』は遥か昔の戦いで後の初代ファリアス帝国皇帝とダーナ神族、及び白の龍皇と赤の龍王により弱体化された状態で封印された為、肉体と精神の同調率が低下、また『龍神』の抵抗もあって能力を嘗ての半分も発揮できない状態だった。
だが、『魔神』の生み出した闇の人格は根深くクロウ・クルワッハの中に張り付いている為、過去の戦いでは消滅させる事は敵わず、現在も『龍神』が必死に排除しようとしているが、『暗黒龍』共々コッコ団に魔力を急速に奪われている為、このままではまた失敗する模様。
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……え!?
超コッコ団(グッドな名前募集!)の大活躍がアダになってる!?
「コッコくんストップ!吸飲ストップ!!」
『ゴケ?』
〈クロウ・クルワッハの魔力は両方とも0になった!〉
遅かった…。
けど、分離できるなら分離した方がいいよな?
ジャンの《古代分離秘術》は生物には使えないし、他には……あった!
使い機会が滅多に無いからすっかり忘れてたけど、今こそあの“技”を使う時だ!
俺はクラウ・ソラスを握って跳んだ。
「みんな、そいつから離れろ!!」
「え?」
『ゴケ?』
みんなをクロウ・クルワッハから離すと、俺はクロウ・クルワッハの頭に向かってクラウ・ソラスを振るった。
「《ディバイド・スラッシュ》!!」
『ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!』
「「「わっ!?」」」
「きゃあ!?」
『ゴケ!?』
クロウ・クルワッハの絶叫と共に、閃光が部屋中を埋め尽くした。
そして視界が真っ白に染まる中、俺はクロウ・クルワッハの体が2つに裂け分裂する光景をみた。
黒い体が一瞬で金ぴかに変わったと思ったら、その巨体から黒い巨体が抜け出してきた。
修業の際、あの大魔王からほぼ強引に覚えさせられた《ディバイド・スラッシュ》。
その効果は、対象となるもの(というか事象?)を2つに分裂させるというものだ。
大魔王は「捕まえた獲物が多重人格とかだった時、分裂させて1人ずつ料理――労働させたり抹殺したり――するつもりで生みだした技」とか素で言ってたけど、俺はそんな趣味は無いから覚えてからは全然使ってなかった。
「こんな使いどころがあったなんて……ん?待てよ、分裂ってことは…」
俺はここで重大な事に気付いてしまった。
俺の目の前で分裂するクロウ・クルワッハは大きさはそのままで分裂している。
そしてここは広いとは言っても地下深くにある密閉空間、そこに同じサイズの巨大ドラゴンが1体から2体に増えたらどうなるか?
答えは決まっている。
〈クロウ・クルワッハは分裂した!〉
〈最深部の部屋は超満杯になった!〉
俺達は一瞬で圧死の危機に襲われた。
〈勇者はピンチになった♪〉
この神、楽しんでやがる…!
後で覚えていろよ!
――――ピロロ~ン♪
今度は何だ!?
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『『魔神』の体、暴走を始める!』
『ダグザの魔釜』に封印されていた『魔神』バロールの“体”が封印が解かれ、暴走を開始した。
中に入る筈だった“魂”が無い状態の為、“魂”が抜かれる直前にあった「破壊」の意志のままに暴走、更には『魔釜』内部に充満していた『暗黒龍』クロウ・クルワッハの狂気等を全て吸収した為、完全に破壊と殺戮のみを行う状態となっている。
あと5秒で『魔釜』から飛び出す。
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「…………」
すみません。
ここはもう満席です。
〈『魔神』バロール(体)が現れた!………ヤバくね?〉
龍神が分裂しました!
そして次回、ついに『魔神』バロールが復活!?