第197話 魔王モドキ、各国に現る
――ゴリアス国 首都ドーウィン――
前略、
ゴリアス国の首都ドーウィンに魔王モドキが複数出現した。
更に言えば、ドーウィンの空は闇に覆われていた。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
『ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!』
『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
完全に実体化している巨大な魔王モドキは大声て叫びながら周囲に魔力をバラ撒いていった。
魔法耐性の低いゴリアス国民は魔力に当てられて体調を崩していく。
どうにか意識を保てている一部の民衆も、只でさえ魔獣の大群で混乱していたのが、魔王モドキまで現れて大混乱に陥っていた。
「魔王だあ~~~!!」
「世界の終わりだあ~~~!!」
「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!???」
・
・
・
魔獣と戦っていた騎士団達の中からも戦意を失うものが続出していった。
そんな中、破壊された騎士団の施設の跡地の中で、1人の女性が呆然と空を見上げていた。
「…冗談のつもりだったけど、本当に世界が闇で覆われて魔王が降臨したわね。」
そしてこの数秒後、ドーウィン上空に出現した魔王モドキ達は不意に姿を消した。
魔王達を操っていた黒幕の手により、魔王モドキ達はドーウィンから遠く離れた聖都へと強制転移されたのである。
「…まあ、彼なら問題ないわよね?」
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――フィンジアス王国 王都クリーオウ――
同時刻、フィンジアス王国の王都上空にも魔王モドキが出現した。
魔獣を無尽蔵に召喚し続けていた魔方陣が急に消滅した直後に出現した魔王モドキは天に向かって咆哮する。
『『カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』』
王都の外れにある監獄を破壊して現れ魔王モドキは双頭のカラスの姿をしていた。
魔王は王都上空を魔獣の軍勢と共に周回し、地上に禍々しい魔力を撒き散らしていった。
「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」
「「「化け物ォォォォォォォォォォォォ!!!」」」
当然、地上は大パニックだった。
魔獣の召喚が止まって僅かばかりの余裕が生まれた最中での魔王モドキの出現に、民衆の恐怖は再び急上昇していった。
だが幸いにも、王都には士郎によりチート化した者達が大勢いた。
「第6~9小隊は結界を展開!!魔力汚染から民衆を守れ!!」
「「「ハッ!!」」」
「ステラ様!信じられませんが、アレは魔王のようです!魔力量が桁違いです!!」
「『マモン・アルターエゴ』…!!フィリス、私達も行くぞ!!」
「お供します!!」
王都で魔獣退治をしていたステラ達は、王都と王都に暮らす民を守るべく、(魔法で)空へと飛んでいった。
だが、ドーウィンと同様、クリーオウに現れた魔王もまた、ステラ達とまともに戦う事無く数分後には不意に跡形も無く姿を消した。
「魔王はどうした!?」
「おそらく、何処かに転移したものと……」
「―――まさか…!!シロウ!!」
ステラは女の勘が冴え、魔王が何所へ行ったのか一瞬で勘付いた。
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――ファリアス帝国 帝都タラ――
更に同時刻、ファリアス帝国帝都上空にも魔王モドキが出現した。
『BUBUBUBUBUBUBUBUBUBUBUBUBU!!!』
「「「キモイ!!」」」
「大きい蠅~!」
帝都に現れた魔王モドキは巨大な蠅だった。
空一面を闇で覆い、嵐を生み出していた。
それだけでなく、全身から大小無数の虫型の魔獣を生み出していた。
「ハハハハハハハハ!!来るがよい魔王よ!このヴィ―――うっ!?」
「ハイハイ、殿下は危ないので下がってましょうね~!」
何時もの調子のバカ皇子は、士郎の能力によってチート化した宮殿メイド達に担がれていった。
余談だが、ファリアス宮殿に勤めている女性のほぼ全てがとある事件がきっかけでチート化している。
現状、ファリアス宮殿内では男性よりも女性が逞しく立派に動いている光景が広がっていた。
『BUBUBUBUBUBUBUBUBUBUBU!!』
『ヘエ?魔王ベルゼブブも堕ちるとこまで堕ちたみたいだな?』
帝都中に魔獣を撒き散らしていく魔王の前に赤い龍が立ち塞がった。
焔龍イグニスだった。
『―――成程な。死んだベルゼブブの残り滓を入れた生贄に、魔力を無理矢理注いで一時的に復活させたか?取り敢えず、燃えろ!』
『BUBUBUBUBUBU!!??』
魔王は炎上した。
これから聖都へ転移しようとした直前での攻撃に、魔王は避ける事が出来なかった。
さらに言えば、魔王と言っても所詮は残り滓なので複雑な思考は持たず、本能と魔力の供給者からの指示に従うだけの存在だった。
それでも国家1つを滅ぼすには十分すぎる力を持っている為、只ではやられなかった。
『おっと!残り滓でも魔王ってことか?』
『BUBUBUBUBUBUBUBU!!!』
嵐の力を爆発させ、全身を焼く炎を消す魔王。
地上は既に帝国の猛者達の張った結界で護られていたが、もし、結界が無かったら今ので帝都は消し飛んでいただろう。
『――――《赤の神龍焔》!!』
『BU――――』
だが、所詮は残り滓、イグニスの敵ではなかった。
イグニスは、自分の一族の中でも神龍に至った者にしか使えない“焔”を用い、魔王モドキを焼き尽くした。
残ったのは、生贄にされていたダニールだけだった。
『ま、見殺しにするのも後味悪いしな!』
イグニスは地上に向かって落下していくダニールをキャッチすると、ついでとばかり周囲をウロチョロしている無数の魔獣を炎で瞬殺しながら地上へと下りていった。
(しっかし、面倒な事になってきたな。そろそろ、叔父貴やファーブニル達にも声を掛けとくか?)
今はこの世界にいない者達のことを考えながら、イグニスは地上へ下りる。
帝都を襲撃していた魔獣が全滅したのはそれから10分後のことだった。
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――エオカイド遺跡 地下100階(最下層)――
「――――喰え!!コッコくん!!」
『ゴケェ~!!』
一方、聖都地下にある遺跡の最下層では、魔王モドキとの戦いがあっさりと終結していた。
『ゴケッ!!』
『オッ――――』
『ギャ――――』
実体化途中だったダブル魔王は、文字通りコッコくんの餌食となった。
《神喰いの嘴》でダブル魔王モドキを捕え、《神聖なる食事》でしっかりと残さず食い尽くしたのだった。
「やったな!コッコくん!」
『ゴケェ!!』
「「「…………」」」
士郎とコッコくんはハイタッチした。
その様子を、その場にいた殆どの者が敵味方関係なく呆然としながら見ていたのだった。
〈コッコくんは《魔王殺し》と《魔を喰い殺す者》を手に入れた!〉
そして、何処からともなく奇妙な音声が聞こえてきた。
誰だお前?
ちなみに、村長を始めとした最強爺さん&婆さんズはその他大勢の魔獣を殲滅しています。
あと、コッコ団の新名称は引き続き募集中です。