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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
聖国編Ⅲ-????の章-
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間話

――次元の狭間のどこか――


 場所は変わり、ここは世界と世界の間に存在する狭間の世界。


 その深淵に存在するある場所で、『魔神』は異世界ルーヴェルトの様子を覗っていた。





――――おのれ………





 『魔神』は苛立ちを露にしていた。


 異世界ルーヴェルトに行かせ、『四至宝』に封印されている己の肉体を解放させに向かった“駒”達が次々に敗北し、このままでは自身の復活が敵わなくなりそうだったからだ。


 遥か昔、忌々しきダーナ神族と彼女達(・・・)から加護を授かった1人の人間によって『魔神』は「魂」、「力」、「体」の3つに分けられて厳重に封印された。


 そして時が経ち、色んな世界に存在する眷属達の働きにより「魂」は解放され、「力」も数十年前に封印が解かれ、残るは異世界ルーヴェルトに封印されている「体」を残すのみだった。


 だが、『魔神』を封印したダーナ神族も馬鹿ではなかった。


 異世界ルーヴェルトを他の世界とは隔絶し、一部の“例外”を除いては別の世界の存在は出入りできないようにしていた。


 その厳重なシステムには『魔神』の眷属ですら手も足も出来ず、仕方なく眷属達の“駒”を、ルーヴェルトのルールに引っ掛からない者達を送り込んだ。


 その際、“駒”達には呪いに近い加護を与え、その情報はリアルタイムで『魔神』にも伝わるように細工を施しておいた。


 そして今、『魔神』の目には“駒”が次々に使いものにならなくなる様子が鮮明に映しだされていた。





――――また…またしても、人間の小僧に……!!





 『魔神』は、ここには居ない勇者の少年に憎悪を膨らませていた。


 嘗て『魔神』を倒して封印した英雄とは似ても似つかない少年だったが、それでも過去の忌まわしい記憶を鮮明にさせた。





――――そして………応龍……!!





 同時に、同じくこの場にはいない『龍神』に対しても憎悪を膨らませた。


 あの時、別の場所で『魔神』の同士たる6柱のうち1柱を封印した張本人、それが応龍だった。


 龍族の中でも最古の1柱である彼の『龍神』は『魔神』達にとって憎く厄介な存在でもあり、そして今も彼の計画を崩していた。


 詳しく説明すると長くなるので要約すると、応龍は『魔神』の計画をとうの昔に見抜いており、それを止める為にブラス=アレハンドロを放置していた。


 ブラスを始末するのは応龍なら朝飯前だが、それだと次々と新しい“駒”が送り込まれるだけだった。


 そこで考えたのが、「ブラス、任務達成は目前 → 初孫登場 → ブラス、心変わり → 『魔神』の体は封印されている『魔釜』ごとチート勇者がゲット! → 『魔神』、悔しがる → 応龍、爆笑」というシナリオだった。


 実際、今の今まで家族は全員死んだと思っていたブラスは『魔神』に――正確にはその眷属の――誘導され、任務の成功報酬として、『魔神』の体が封印されている『ダグザの魔釜』の力で死んだ妻子を生き返らせようと無意識の内に考えていた。


 ブラス自身は家族の事は既に過去の事と割り切っているつもりだったが、それでも完全ではなく、知らず知らずの内に思考を誘導されていた。


 特に七大魔王の一角、《怠惰》のベルフェゴールの呪いにより、特定の内容については思考を制限…考えることを怠けるようにされていた為、今の今まで良い様に利用されてきていた。


 それが今、初孫(ロルフ)との初対面(ファースト・コンタクト)によりあっさりと破られ、ブラスの心に眩い光が差し込み始めたのだ。


 最早、ベルフェゴールの呪いは無意味となりかけていた。





――――ダヌも共犯(グル)か……





 『魔神』は忌々しく、敵の母神の名を上げた。


 おそらく、今回の件には裏で応龍とつながっているのだろうと推測しながら。


 そしてその推測は当たっていた。


 『魔神』は知る由もないが、応龍と女神ダヌはかなり古い知人…というより悪友だったりする。


 『魔神』に限らず、他の神々にとっても迷惑な話しであるが。





――――案ずるな。バロール。





 『魔神』が苛立ちを増し続けていると、そこに別の声が聞こえてきた。





――――ウロボロスか……





 それは、《無限》を司る蛇神だった。





――――問題はない。“駒”はまだ壊れてはいない。





――――……!そうか…ククク……





 ウロボロスの言葉の意味に気付き、『魔神』は先程までの怒りを忘れ笑い始める。


 そして視界に、今の今まで忘れていた別の“駒”達の姿を映す。





――――ククク……英雄気取りの小僧、貴様の甘さを悔いるがいい……!




 『魔神』――――『創世の蛇』の7柱の《盟主》の1柱(最弱)、バロールは自身の加護を与えた“駒”達に力を送り始める。





――――間もなく、次の封印は解かれる……





 星をも飲み込む巨大な蛇は、邪悪な笑みを浮かべながら狭間の遙か先にある1つの世界、ルーヴェルトを見つめながら、自身も彼の世界への干渉を始める。


 バロール同様、封印と彼の世界(ルーヴェルト)のシステムにより干渉範囲は大分制限されているが、手段も抜け目も幾らでもあった。





――――死した《怠惰》と《暴食》に仮初の生を、《強欲》と《嫉妬》に(を……




















--------------------------


――????――


 何も無い世界で眠り続けていた“それ”は、世界の外の異変を感じて数千年ぶりに目を覚ました。


 もっとも、時間の概念すら不明なこの世界で、時間の数値化など無意味に等しいが。





――――誰だ?






――――誰かが来ているのか?





 本来なら、外界から完全に隔絶されたこの世界の外のことなど“それ”が直接察知する事など不可能だった。


 だが、固く閉ざされているこの世界の“蓋”が何か(・・)に反応して生まれた波紋を感じる事で外の様子を間接的に察知することができていた。





――――“鍵”が…封を解く者がここへ近づいている……





――――やめろ………





――――封印を解いてはいけない………





――――アレを…外に放ってはいけない………





――――俺を外に出してはいけない………





――――俺…は……………











――――ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!







――――待ちくたびれたゼェェェェェ!!!!






 何もない世界に、どこか頭の悪そうな笑い声が響き渡った。


 それは先ほどまでと同じ声だったが、前者は知性と温厚さに満ちていたのに対し、後者は粗雑で暴力性に満ち溢れていた。






――――血だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!(外に出たら)人間どもの血肉を飽きるほど喰いまくって、天も地も海も真っ赤な血で染め上げてやるぜぇぇぇぇぇぇぇ!!!!






――――バロォォォルゥゥゥゥゥ!!!!宴の用意をして待ってろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!





 表と裏、光と闇、太陽と月、相反する2つの顔を持つ“それ”は、間もなく訪れるその時を、一方は頑なに拒み、もう一方は歓喜しながら待ち望んでいた。






 遙か古の時代、“それ”は豊饒を司る太陽神として崇められていた。


 しかし、太陽神でありながら、その名の意味には「三日月」や「血塗れ」が含まれていた。


 その正体については明確な記録は少なく、今では蛇とも龍とも言われる謎多き神性であった。





 その神、名を―――太陽と月の龍神(クロウ・クルワッハ)といった。








 ラスボス(?)の登場回でした。


 次回から再び本編に戻ります。

 シリアスには…ならないと思います。



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