第187話 ボーナス屋、エオカイド遺跡を進む3
――エオカイド遺跡 地下30階――
久しぶりに見たみんなのステータスはツッコむ点がいくつもあった。
けど、今は急いでいるから全部後回しだ。
『グェェェェ!!』
「またサンダーバードだ!」
「爆ぜろ!」
全身に雷を纏った魔獣を《爆発》で吹っ飛ばした。
この辺りには火の鳥やら氷の鳥やらが出てきて攻撃してくる。
魔獣というよりは精霊に近い鳥も出てきたけど、そういうのは魔力を吸収して瞬殺だ。
そう、とにかく瞬殺祭りだ!
『『『ピュゥ~~~!!』』』
「また出たぞ!」
「初めて見る奴だ!」
そして、また次の生贄が…じゃなくて障害が現れた。
どこかロボっぽいフォルムの、吹雪を纏った感じのカッコいい鳥だ。
【氷聖銀の霊鷹 ♂】
【分類】鳥類型魔獣
【属性】氷 風
【魔力】100,000/100,000
【ランク】B+
*以下略
全身がミスリルの豪華な鳥だ。
だけど今はどうでもいい。
というか、ミスリルなら腐るほどあるから俺は全くいらない。
『『『ピュゥゥゥゥ!!!』』』
「燃えろ!!」
『『『ピュ………』』』
カッコいい鳥が冷凍ビームを発射した瞬間、カッコいい鳥は紅蓮の炎に飲まれてカッコいい焼き鳥になった。
ちなみにこの魔法は火属性上級魔法の1つ、《紅蓮の断罪》で、敵と認識した対象を徹底的に焼き尽くす魔法だ。
相手が灰になるか、俺が止めない限り延々と燃え続ける強力な魔法だけど、あのカッコいい鳥には5秒も必要なかったみたいだ。
「勇者様、(魔獣の死骸を)拾わなくていいんですか?」
「ん?要らないから問題なし!」
何度も言うが、ミスリルは腐るほどあるから今更採取する必要ない!
さあ、次の階層に行くぞ!
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――エオカイド遺跡 地下35階層――
俺達は順調に進んでいった。
『エサ!エサ!エサ!』
『クウ!クウ!クウ!』
『ニク!ニク!ニク!』
・
・
・
「凍れ!」
『『『ギャァァァァ!!』』』
人語を喋る人面鳥も氷漬けにして倒した。
気のせいか、人面鳥の顔がアッ○さんに似ていた。
ハッキリ言って怖い。
「ゲ!また来たぞ!!」
「また気持ち悪い!!」
「うえぇぇぇぇぇ……」
「しっかりして、ケビン!」
今度は某デラックスっぽい人面鳥が襲ってきた。
ヤバ!
ケビンはあまりの衝撃にダウンしそうだ。
「対空砲火!対空砲火だ~!!」
俺達はケビンが再起不能にならないうちにこの階を抜けた。
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――エオカイド遺跡 地下40階――
「トサカビーム一斉掃射!!」
『『『ゴケェ~!!』』』
その階でも俺達は敵を駆逐しながら次の階層へ続く階段を目指していた。
相手が鳥ばかりだから、空を飛ぶ超コッコ団(仮称)も大活躍だ。
なんか、カンフーやテコンドーを使ってるのもいたのは気にしない。
そして、そいつは俺達がこの階の中央辺りに来た時に姿を現した。
『――――停まれ。』
「「「!!!」」」
初めて聞く声がした瞬間、俺とコッコくん以外のみんながその場で停止した。
『ふむ、我が言霊が通じぬ輩も混じっておったか?』
「誰だ!?」
『ゴケ!?(誰!?)』
俺とコッコくんは周囲を警戒する。
声はするのに気配は全く………いや、ある!!
「そこか!!」
『!』
俺は微かに気配がする方に向かってクラウ・ソラスを振るった。
ビームの直撃と同時に、声の主は姿を表した。
『ほう!その剣、まさかと思うがヌアザ様のクラウ・ソラスか?』
「喋るフクロウ?」
『ゴケ?』
姿を表したのは喋る巨大フクロウだった。
図鑑に載っているような普通のフクロウがそのままでかくなったような、そんなフクロウが理知的な眼差しで俺達を興味深そうに見下ろしていた。
今のところ、敵意こそ感じないが、明らかに他の魔獣より遙かに強い気配を漂わせていた。
【闇夜より深き空の知識 ♀】
【分類】神の眷属
【属性】闇 風
【魔力】2,360,000/2,400,000
【ランク】SS++
【状態】正常
【用途】――
【詳細】エオカイド遺跡を守護する5体の守護獣の1体であり、最高神ダグザの眷属。
神代から多くの知識を蓄えており、その多くは人間の世では失われたもの。
基本的に好奇心が強く、珍しいものや初めてみるものに目がない。
基本的な戦闘能力は他の守護獣には劣るが、主であるダグザに与えられた《賢聖の瞳》により、一度見た魔法・能力・技術を習得すると同時に長所・短所を全て理解出来る為、常に相手の弱点を的確に突いて攻撃してくる。
それ以外にも、殺傷力は無いが相手の動きや能力を封じたりする能力も持っている。
弱点は光属性だが、これらの力で対抗して来る為、倒すのは困難。
ついにSSランク超え!
今まで遭遇した魔獣の中で、一二を争う強さだ。
しかも厄介そうな眼を持っているようだ。
ケビンの《賢者の瞳》の上位番か?
『――――成程、異世界人か。クラウ・ソラス以外にも、“何か”を持っているようだの?それに、多くの神々に愛されておる…。おお!母なる偉大な神、ダヌ様にも…!!』
「!」
俺の正体を見破られた!?
『他の者も神々に選ばれし者……。成程、どうやら先に入った者達の仲間ではなさそうだの。』
「先に通った奴らを知ってるのか!?」
きっとブラス達のことだ!!
どうやらこのフクロウ、ブラス達を知っているようだ。
その割には、先にロルフが倒した守護獣のように操られてはいないようだけど…。
『うむ。1人1人が我とは比較にならぬほどの強大な力を持った者達が、お前達よりも先にこの階層を通っていった。忌々しい神の加護を持っていたな。本来なら我は聖域の守護者として、あの者達を排除すべきだったのだったが、奴らは既に我が同胞の1体を傀儡に貶め、先走った他の同胞をも傀儡にしたのだ。我はそれを静観するしか出来なかったが、その直後、また別の侵入者が現れたのだ。』
「それが俺達ってわけか。で、俺達に何のようだ?」
『その前に、お主らの目的を訊こうかの?場合によっては……』
フクロウから微かな敵意が伝わってきた。
場合によっては戦うってことだろうけど、戦力差的に無茶じゃないか?
なんて考えていたら、フクロウの敵意に反応したコッコくんが興奮しはじめた。
『ゴケェ~!!』
「ちょっ!コッコくん!?」
『ム!これは…!?』
興奮したコッコくんは巨大化した。
『ゴケゴケェ!!(勇者様の敵!!)』
『おお!!我の知らぬ未知……ってギャアアアアアアアアア!!??』
「コッコくん!!ストップ!!ストップ!!」
フクロウを敵と認識したコッコくんは、フクロウに《神鶏之息吹》を放った。
フクロウは好奇心を刺激されたのか、目を輝かせ防御も回避も忘れて直撃を受けた。
あ、死んだ………?
「ぷはあ!!やっと動けた~!!」
「ゆ、勇者様……体が痺れました~」
さっきまで動けず固まっていたアンナちゃん達が動けるようになった。
うわあ、この展開だと……フクロウ、死んだな。
『ゴケェ!(フウ!)』
コッコくん、なんか「悪は去った!」って顔している。
フクロウから色々話が聞けたかもしれなかったのに……ん?
「どうしたんですか、勇者様?」
「みんな!また何か来る!!」
俺は新たな強敵の気配を感じた。
それも、フクロウの時とは比較にならないほど攻撃的なやつだ。
何所から………下か!
『グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』
そして次の敵は遺跡の床の下から現れた。