表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
聖国編Ⅰ-ロルフの章-
184/465

第178話 ボーナス屋、フラグを立てる?

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

『聖都、乗っ取られる』


 今から1分前、聖国の聖都がが侵入者により、一瞬にして乗っ取られた。

 聖都全域は《神術結界》によって外界から隔離され、地上は勿論のこと、地中や空中からの侵入ができない状態となった。

 結界展開時、教皇庁に居た教皇及び枢機卿団は全員侵入者一味に捕まり、現在、教皇は侵入者のリーダーと目される人物に連れられ教皇庁地下へと移動している。

 尚、現在聖都上空には調教(テイム)されている上位クラス以上の魔獣が1000体以上おり、教皇庁直属の聖騎士団に多くの犠牲者が出ている。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 大変な事が起きてしまった。


 最後の『至宝』が眠る遺跡がある聖都が、何者かによって占拠&隔離されてしまった。


 ミストラル王国や他の国にいる封印の“鍵”となる人物を攫ってから動くのかと思ったら、そっちは無視して動いたようだ。



「・・・これは大変だ!!」


「どうした?」


「何かあったんですか?」


「何に驚いてんだ?」


「聖国が落ちた!」


「「「!?」」」



 そういえば、ここに来てからロルフの事ばかり頭が回って本来の目的を忘れてたな。


 俺はヒューゴ達に聖国で起きていることを説明し、ここへは封印の“鍵”になる人物の保護に来たことを伝えた。



「そういうことは先に言え!!」



 はい、その通りです。


 一番最初に言うべきでした。

 


「あれ?ロルフの父さんが何時の間にかいない?」


「ロルフの父さんなら、婆さんに命令されて街に買い出しに行ったぞ?」


「・・・あのオッサン、腐ってもここの領主だよな?大貴族だよな?」


「「「・・・・・・。」」」


「答えてって。」



 ロルフのお祖母さん、サイキョー過ぎ!


 そのお祖母さんは熟練白髪執事さんに支えられながら体を起こし、泣きついているロルフを優しく撫でていた。


 こんな状況じゃなかったら、凄く感動的なシーンなんだけどな。



「それで、シロウさんは聖国に行くんですか?」


「勿論!行くに決まっている!最後の『至宝』も()には渡せないからな!それに、ノエルのお祖父さんが敵に捕まっているし、用済みで殺される前に助けないといけないしな!」


「ん・・・ノエル?」


「何でここでノエル?」


「あれ?言ってなかったっけ?ノエルのお祖父さんは教皇だぞ?」


「「初耳だよ!!」」



 最近は全く出番が無いから忘れている人もいるかもしれないが、現在ファル村に長期滞在している元奴隷の1人のノエル(8歳)はジーア教の教皇の孫だ。


 ノエルの両親は駆け落ちしているから、教皇はノエルの存在は知らないけど。


 そういえば、ノエルの両親を捜すの忘れてたな・・・ヤバ。



「じゃあ、急いで助けに行かないといけないです!僕も一緒に行きます!」



 ケビンは行く気満々だ。


 そしてケビンが行くなら俺もと、2人の兄(ヒューゴとジャン)も一緒に行く事になった。


 愛されてるよなあ、ケビン♪



「ロルフは・・・ダメだな。」


「ああ、あれはダメだな。」


「暫くはダメだな。」


「そっとしてあげましょう。」



 数年ぶりに肉親と会えたのが嬉しかったんだろう。


 ロルフは本日2度目の号泣をまだ続けていた。


 あと数分もすれば泣き疲れて寝てしまいそうな勢いで泣いている。



「あの状態じゃ、戦闘とかは無理っぽいしな。聖都には只でさえ1000体以上の魔獣軍団が暴れているし、きっと敵のボスはもっと強いから今のロルフじゃ・・・・」


「泣き虫は足手纏いだな!」


「ちょっと兄さん!!」



 ヒューゴよ、そう言うセリフはもっとオブラートに包んだ方がいいぞ?


 それは兎も角、前回のブリューナクの時なんかは堕天使や悪魔を通り越して魔王モドキが登場したからな。


 帝都奪還の時は大怪獣だったし、今度もきっと、とんでもないボスキャラが登場するのは間違いないだろう。


 今のロルフには、精神的にそんな大バトルは負担が大きい。


 今回は御留守番していてもらおう。



「今度の敵は誰だろうな?」


「ファル村をー正確には村の近くー襲撃したダニールやアイアスって奴も出てきたし、一緒にいたっていうもう1人なんじゃないか?」


「あ、待てお前・・・」



 ヒューゴ達がその男の名前を口に出そうとするのを俺は慌てて止めようとした。


 確信は無いが、この場で奴の名前を出すのは不味い気がする。


 また何かのフラグが立ちそうな気が凄くする。



「ブラスだよ兄さん!ブラス=アレハンドロ!」


「そうそう、それ!」


「わあ~~~!!」



 俺の制止は間に合わず、ケビンがフルネームで喋った。


 そして、見事にフラグが立った。



「・・・ブラス?」



 ロルフのお祖母さんは孫を撫でる手を止め、凄く驚いた顔で俺達の方を見た。


 その顔には、「どうしてあの人の名前を?」と分かりやすく出ていた。


 ああ、やっぱりそういう事なのか。


 まあ、名前を見た時点でもしかしたらとは思ってたけど、まさか本当にそうだったとはな。


 異世界を含めても、世間は本当に狭いようだ。




「――――何故、私の夫の名を皆さんが・・・?」




 この人、『創世の蛇』のブラスの奥さんだよ、


 ん?


 ということは、もしかしなくてもロルフはブラスの孫・・・!?


 なんか、少年漫画とかでよくある展開になりそうだ。







--------------------------


――聖国 聖都地下――


「―――――ッ!」



 同時刻、ブラスは不意にクシャミが出そうになるのを堪えていた。



(・・・誰かが噂をしているようだな?)



 長年の経験から、今堪えたクシャミが誰かに噂された事によるものだと察するブラス。


 彼は今、ジーア教の教皇を連れて聖都の地下を下りている最中だった。



「―――名も知らぬ者よ、このような所業はもう止められよ。今なら、我等の神もお許しになられるだろう。これ以上、我等だけでなく罪無き民まで傷付ければ、其方の魂は永劫消えぬ傷に蝕ま・・・」


「説教をする暇があるのなら早く進むことだ。」


「待たれよ。これより先にあるのは聖域、許しを得ぬ者が踏み入れれば、神罰が下るのだぞ!!」


「心配は無用。我らはその神の命で来ている。」


「なっ・・・!」



 教皇は目を丸くし、すぐに嘘だと否定しようとしたが、ブラスの目を見て思いとどまった。


 生まれた時から信仰に身を捧げてきた教皇は、その職業柄、人の嘘を見抜く高い洞察力を持っている。


 最近は偶にボケがちだが、それでも根も葉もない嘘に惑わされるほどその人を見る目は衰えていない。


 だからこそ、教皇にはブラスの目を見ただけで解った。



(嘘ではないのか・・・!?)



 ブラスの言葉が虚言でないことを、教皇は十分に理解してしまった。



(では、これは神の御意志によるものなのですか!?)


「・・・あれが入口か。」



 教皇が困惑する中、下へと続いていた階段の終着点が視界に入った。



「成程、聖域への入口に相応しい“門”だな。」



 そこにあったのは荘厳な姿をした巨大な“門”だった。


 全体が金属でできているようなその門には余計な飾りなどは無く、門としての形状をしているだけの、見る人によっては不恰好とも言えるかもしれないものだったが、その姿からは言葉では言い表せないような不思議な存在感が伝わってきていた。



「――――最後の『至宝』への道、開けさせたもらおう。」


「よ、止すのだ!!その門は、決して開けてはならぬ!!」


「開け。」



 教皇の制止を気にも留めず、ブラスは“門”に触れてたった一言呟いた。


 その直後、大きな音を立てながらダーナ大陸の四大遺跡の1つ、『ダグザの魔釜』が封印されているエオカイド遺跡への入口が開いたのだった。



「おお・・・!!聖域への扉が・・・・!!」


(全知全能の最高神、ダグザの領域・・・。)



 “門”が完全に開ききるの待ち、ブラスは教皇を連れてエオカイド遺跡の中へ足を踏み入れていった。


 目指すは最後の『至宝』が封印されている遺跡の最深部。


 封印を解く為に必要な“鍵”は保険の分も含め、既にブラスの手中にある。


 後は邪魔者よりも先に遺跡の最深部にたどり着き、そこにある最後の『至宝』の封印を解いて回収するだけだった。



(・・・『ダグザの魔釜』か。)



 ブラスは、この遺跡に眠る最後の『至宝』についての事前情報を再度確認していった。


 ケルト神話の最高神、ダグザの所有していた『魔釜』。


 神話によれば、規格外な力を幾つも持ち合わせていた。


 無限に食料をもたらす力、どんな神格を持つ神や魔王でも封印する力、そして・・・




死者を復活させる(・・・・・・・・)力・・・)




 ブラスは、昨日組織より伝えられた今回の任務の報酬に僅かに心を揺らされたが、すぐに思考を切り替えて遺跡の奥へと進んでいった。






 「あれ?あの人って死んだんじゃないの?」

 そう思っている人もいますが、その辺りの事もいずれ解ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ