第175話 ボーナス屋、北に着く
最近、書く時間が少ない・・・。
――ミストラル王国 ジェダイト公爵領『ジェイド』――
転移した先は別世界だった。
「へっくし!寒っ!!」
『ゴケェッ!!(寒い!!)』
というか風邪引くところだった。
俺は慌てて防寒の魔法を自分にかけ、四次元倉庫にあった厚手のコートを羽織った。
周りがみんな真冬スタイルなのに、俺だけ秋スタイルなのは目立つからだ。
「それにしても、ファル村とは大違いだな~?」
ファル村は気候的には温帯に分類されるが、日本よりも少し温かい感じだった。
それに対してここは真冬、雪は降ってるし、気温も間違いなく体感でも氷点下だ。
防寒着や魔法が無かったら凍死するところだった。
「それに、ヒューゴ達のところに転移したはずなのに、どこにもあいつ等の姿がないな?」
『ゴケェ。(ですね。)』
今の俺ならピンポイントであいつらの目の前に転移できるはずなのに、転移した先は真冬の街のど真ん中だった。
辺りを見渡しても俺の知っている顔は1つも見当たらない。
何でだ?
「こん困った時には、まずは情報収集だな!」
知りたいことがある時は《摩訶不思議な情報屋》の出番だ!
ちょっと検索するだけで、ハイ出た!
「――――領主の館?」
検索した所、ヒューゴ達はこの町の領主の屋敷にいたことが判明した。
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――ジェダイト公爵の館――
領主の家は超豪邸だった。
ヴァールの領主のオッサンの屋敷の比じゃない。
よくある定番の、街がまるごと入ったようなアレな感じの超豪邸だ。
「ファリアス帝国の勇者殿でございますね?どうぞ中へ。」
敷地内へは簡単に入れた。
執事さんAが門の前で俺を待っていたからだ。
「どうぞ、御屋敷までは少々遠いので、馬車にて御案内いたします。」
「・・・・・・。」
俺とコッコくんは特大馬車に乗って屋敷まで移動した。
おい、なんか敷地の中にマジで街がないか?
ここって本当に小国の一領主の家なのか?
規模が凄すぎだろ。
「何時になったら着くんだ?」
「もう間もなくです。」
この執事Aの言う「間もなく」と一般人の「間もなく」は絶対に違う気がする。
その証拠に、馬車が止まったのはそれから30分以上経った頃だった。
「こちらが本邸になります。」
「『・・・・・・・・・。』」
本邸がどんなだったかは敢えて言わない。
みんなの御想像に任せる。
根が庶民の俺には刺激が強過ぎた、とだけは言っておく。
「こちらでございます。」
「・・・何やってんだ、お前ら?」
「「「!!!」」」
『(__)。。ooOZZZZ』
『ゴケェ!(クリスピーくん!)』
執事さんAに案内された部屋に来ると、そこではヒューゴ達が全力で寛いでいた。
暖炉で暖められた部屋で豪華な衣装を身に纏い、巨乳メイド軍団に囲まれていやがる。
どこのブルジョアだ、お前らは!?
「人が心配して来てみれ――――」
「鬱陶しいんだよ!クソ親父!!」
「ブボッ!!」
「!?」
部屋の隅でロルフが知らないオッサンを殴り飛ばしていた。
謎のオッサンはロルフに大量のお菓子を渡そうとしたらしいが、そのお菓子もオッサンと一緒に部屋に飛び散った。
見た感じ、貴族っぽいけどここの主人か?
「旦那様、諦めずに再度挑戦です!」
「次こそ若様との絆を取り戻すのです!」
「根性です!旦那様!」
なんか、執事さんズがオッサンを応援している。
「・・・ん?若様?」
ロルフが若様?
いや、それ以前にロルフの奴、オッサンを「クソ親父」って言ってなかったか?
まさかこのオッサンが・・・・?
【名前】ループレヒト=M=L=ジェダイト
【年齢】35 【種族】人間
【職業】領主 【クラス】ロルフの親父
【属性】メイン:土 氷 サブ:水 風 火
【魔力】12,000/12,000
【状態】軽傷
【能力】攻撃魔法(Lv3) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv1) 剣術(Lv2) 槍術(Lv2) 弓術(Lv2) 盾術(Lv1) 体術(Lv1)
【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv1) 土属性耐性(Lv2) 氷属性耐性(Lv2) 毒耐性(Lv1) 凍傷耐性(Lv2) 数奇な運命 やや強運 運命神ラケシスの加護
【BP】136
ピンポイントかよ!
物凄く分かり易く『ロルフの親父』と載っていやがる。
『皇帝の落胤』や『貴族の落胤』よりも分かり易過ぎる。
ロルフの父さんが貴族なのは分かっていたが、まさかこんな超大貴族だとは思っていなかったな。
「ロルフ!父さんは絶対に諦めないぞ!!」
「ウゼエ!!」
よく見れば、ロルフの父さんの顔はボコボコだ。
殴ったのは1発だけじゃないみたいだな。
執事さんズやメイドさんズは温かく見守るだけで、誰も止めようとはしていない。
使用人総意の放置か。
「御茶が入りましたたので、こちらにどうぞ。」
執事さんAも全然気にしていない。
あんてマイペースな屋敷なんだ、ここは・・・。
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「――――つまり、要約すると・・・
1、空からお姫様が落ちてきた。
2、開拓村でドラゴン倒して英雄になった。
3、王国に入ったはいいが、(大魔王のせいで)各地で足止めをくらった。
4、この街に来た直後に引かれそうになった馬車に乗っていたのがロルフの父さんだった。
5、感動の親子の再会にはならず、ロルフは息子の気を引こうとする父親を殴り続けている。
6、それを温かく見守る公爵家の皆さん。
という訳だな。」
「そういうこと!お陰で俺達も巻き込まれてココに連れてこられたんだよ。本当に、迷惑なオッサンだよな?」
「・・・その割に、かなり寛いでないか?」
クリスピーくんに至っては、暖炉の近くで丸くなって昼寝しているし。
というか俺、クリスピーくんが起きているところはほとんど見たことないんだけど?
「それなら、《念話》で知らせればいいだろ?」
ロビンくんからは王国入りしたところまでしか聞いていない。
ロルフの父さんが見つかったなんて報告はロビンくんも聞いていないはずだ。
「それなんですけど、この公爵領の隣の貴族領に入った辺りから、《念話》も《転移》もほとんど使えなくなったんです。まるで、ものすごく強い魔力に妨害されているみたいな・・・」
「へ、へえ・・・。」
俺は思わずケビンから視線を逸らした。
それ、絶対大魔王の仕業だ。
玄孫がこっちに勇者召喚されたのにブチギレて家族と一緒に潰しに行ったからな。
きっと、犯人一味が逃げる可能性を万が一にも無い様に徹底的に罠とか仕込んでいるんだ。
その為の魔法妨害だ。きっと!
「――――今更父親面するな!!あんたのせいで母さんがどれだけ苦労したと思っているんだ!?」
「お前の言うとおりだ。全部、あの時私が先代陛下の意志に屈したりしなければこんな事には・・・!!だけどロルフ、私はお前のこともアリシアのことも忘れた事など一度たりともない!!」
「五月蠅い!!」
「ロルフ!私は家族を誰よりも愛している!!それだけは信じてほしい!!」
親子喧嘩はまだ続行中のようだ。
あんなに父親に会いたがっていたのに、何であんなに荒れているんだ?
「なあ、ロルフは何であんなに荒れてるんだ?」
「それは・・・・・・」
「「それにつきましては、私達から御説明いたします。」」
「うお!?」
俺達の会話に2人の執事さんA・・・・違う、双子か。
どうやら執事さんAは双子だったようだ。
金髪に灰色の眼をした、見た目30歳前後のイケメン執事兄弟だ。
「旦那様と若様について語るにはまず、このミストラル王国についてもお話ししなければなりません。」
そして双子執事は勝手に語り始めた。
あ、他の執事さんズやメイドさんズがBGMを演奏し始めた。
余計な気を利かせなくていい。