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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
港町ヴァール編
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第16話 ボーナス屋、領主に会う

今回はちょっと長くなりました。


――港町ヴァール 領主の館――


 俺だ!士郎だ!


 いろいろ遠回りになったが、ようやく領主の館に到着だ!


 館と言っても思いっきりお城だが、この世界じゃ珍しくないらしい。


 まあそれは別として、俺は今、その領主の館の中にいる。



「――――――というか、あっさりと中に入れたな?」


「危険ですが、皇子の書状を持って来た甲斐がありました。流石に死んだ事になっていたとしても、生前に残した書状と言えば無下にはできませんからね。」



 そう、俺達はバカ皇子に(無理矢理)書かせた書状を使って中に入ったのだ。


 取り敢えず、「第一皇子が死ぬ前に書いた領主様宛の書状を届けに来ました。」と嘘八百を並べたら難なく中に入り領主の執務室に案内されたって訳だ。


 まあ、書状はちゃんとした内容だけどな。前半は、だが・・・・・・。


 それは置いといて、流石に上級貴族が住んでるだけあって、部屋の中には高そうな装飾品や絵画などがあちこちにある。


 全部で幾らするんだ?



「――――――お待たせしました。」



 ドアの向こうから執事の人が入ってきて、その後に1人の貴族っぽい男性が入ってきた。


 うわ~~~、漫画とかに出てくる定番の執事だ!名前はセバスチャンか?



「こちらが領主様です。」


「私が領主のオトマール=F=アンデクスである。貴公らが、先日名誉の戦死を遂げたヴィルヘルム殿下の書状を持ってきた者達か?」


「はい、これが書状です。」



 ロビンくんがバカ皇子の書状を領主のオッサンに渡した。


 外見は俺やロビンくんよりも背の高い40歳前後くらいのスマートなオッサンだ。


 ブロンドの髪に鳶色の瞳をしており、顔付は真面目そうな政治家っぽかった。


 さて、とりあえずステータスを確認してみるか?



【名前】『紺碧の騎士』オトマール=F=アンデクス

【年齢】38  【種族】人間

【職業】領主(ヴァール領) 騎士  【クラス】親バカ伯爵

【属性】メイン:水 サブ:風 氷 木

【魔力】6,900/6,900

【状態】便秘 痔

【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv2) 特殊魔法(Lv1) 剣術(Lv3) 弓術(Lv1) 槍術(Lv1)

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv1) 精神耐性(Lv2) 水属性耐性(Lv2) 火属性耐性(Lv2) 海神リルの加護



 『親バカ伯爵』って・・・・・・・・。そして便秘に痔・・・・・。


 あれだな、見かけは真面目な貴族だけど、普段は一人娘が可愛くてたまらないんだな。


 てか、クラスって本当に何の意味があるんだ?



「・・・・・確かに殿下の筆跡のようだが、この内容は一体・・・・・・?」


「・・・・とりあえず、前半は私達の現状、後半は皇子の心情(・・・・・)です。」


「後半が『村長怖い』が繰り返し書かれているのは・・・・・・?」


「「・・・・・・・・・・」」



 バカ皇子、最近は村長の容赦ない鍛錬に身の危険を感じていたからな~~。


 それはともかく、書状にはファル村であったことや、帝国や王国で暗躍している組織に関する内容が書かれている。


 領主が真っ黒な貴族だったらこの時点でアウトだったが、幸いにもここの領主はバカ皇子と面識があり、事前情報から交渉できる人物であることが分かっていたので素直に書状を渡したのさ!



「まあ、後半は置いておくとして、前半に書かれているこの内容は・・・・・・・!?」


「それについて。詳細はこれから説明します。」



 そしてロビンくんがより詳しく説明していった。


 説明が終わると、領主も後ろで控えていた執事の爺さんも戦慄した顔になった。



「なんてことだ!それでは、帝国の中枢は得体の知れぬ輩どもに踊らされているということか!?」


「それはまだ分かりませんが、少なくとも王族の中でも政治的発言力のある者、おそらく第二皇子ブリッツ殿下か第三皇子エーベル殿下の近くにいるのは確実かと・・・・・。」


「・・・・このようなこと、とても他言などできないぞ!?」



 だよなあ、言ったらすぐに消されるよなあ。


 とりあえず、反応からしてこの領主はまともな貴族みたいだな?


 あくまで俺の主観でだけど。



「貴公らの言いたいことは分かった。殿下やフィンジアスの王女を、そしてファル村を護るための協力が欲しいと言うことだろう?」


「はい。」


「だが、それは我がアンデクス家や領民達にはリスクでしかない。領主としては、貴公らの頼みには応えることは・・・・」


「メリットならあるぜ?」


「何?」



 この辺までは予想通りだな。


 下手をすれば自分の家族や領民全てを危険に晒すリスクを良心だけで背負う奴はいないよな。


 いたとすれば、そいつは途方もないお人好しか、何かを企む悪党ぐらいだ。


 本当にまともな貴族なら、今の領主のように断るのが正解だろう。


 と言うわけで、協力するメリットを出すぜ!



「これがメリットだ!」


「これは?」


「ファル村の新しい特産品だ。開けて確認してくれ!」



 俺はテーブルの中央に2つの小袋を置いた。


 そして領主が中身を確認するとあからさまに仰天した。



「これは!」


「ファル村産のコショウと砂糖だ!」


「な・・・・コショウと砂糖がファル村でだと!?」



 ここから再びロビンくんの説明タイム!


 俺が調子に乗って作ってしまった宝の山の話を聞いた領主はその表情を変えていく。



「なるほど、それなら協力しない訳にはいかないな。帝国内でも、我が領地でのみ作れる貴重品を作れる村を、領主が守るのは当然の義務だからな。」


「では・・・・・!?」


「ハッハッハ!喜んで協力しよう!」



 領主は笑い声を上げながら承諾してくれた。


 よし!フライハイトさんに続いて強力な味方をゲットだぜ!


 そうだ!どうせなら、領主のオッサンにもボーナス交換を勧めてみるか?



「じゃあ、記念にボーナスどうです?」


「は?」



 あ、言い方ミスった!


 きっと、「一杯どうです?」みたいに聞こえてたな。


 俺はとにかく誤解されないようにすぐに説明して実際に能力を見せてみた。



「―――――これは、『異界の恩恵』ということか・・・・・・。」


「『異界の恩恵』・・・・・・・?」


「初めて聞く言葉ですね?」


「知らないのは無理もない。これは帝国内でも一部の地域でのみ伝承されている御伽噺ののようなものだ。私も小さい頃に何度か聞いたことがある程度で、ただの言い伝えとしか思っていなかったが・・・・。」



 なんか、意味深な響きだな?


 少し詳しく訊いてみるか。



「どんな言い伝えなんです?」


「内容は至って単純なものだ。この世界とは別の世界からやってきた旅人が災厄に苦しむ村人達を“不思議な力”を使って救ったと言う話だ。この時の“不思議な力”を村人達は『異界の恩恵』と呼び、伝承では不治の病を治したり新天地へと導く門を開いたと言われている。」


「そんな話が・・・・・・」



 なるほど、もしそれが本当だったとすれば、俺以外にもこの世界にトリップした人間が他にもいたって事になるよな?


 もしかしたら、今も俺以外にこの世界にトリップした人間がいるかもな。



「ちなみに、その地域では語尾に『ござる』を付けるのが風習になっている。伝承に出てくる旅人の話し方に由来しているそうだ。」



 確証キタ――――――――!!


 ござるって、思いっきり日本人じゃん!



「それ、思いっきり俺と同郷の人だぜ!」


「――――――――なんと!?」


「そうなんですか?」


「ああ、きっと昔の俺と同じ国の人がこの世界に来たんだと思うぜ?その旅人って、伝承じゃ最後はどうなったんだ?」


「――――――伝承の最後では、故郷に帰ったと言われている。なるほど、どうやらただのお伽噺ではなかったと言うことか・・・・。」



 領主はブツブツと何かを呟き始めた。


 その伝承通りだと、自力で元の世界に帰る手段は存在するってことか?


 まあ、俺の場合は仲間が迎えに来てくれる可能性もあるけどな。



「まあ、とりあえずボーナス取得をやってみます?良かったら執事さんも?」



 と言う訳で、本日2度目のボーナスタイムの始まりだ!


 執事さんは主人より先にやるのを遠慮したのでまずは領主のオッサンからだ!


 なお、先にポイントを調べたら、領主は145、執事さんは240だった。


 執事さん、結構苦労してんのか?


 ちなみにその事を2人に話したら、



「ヘンリク、そう言えばお前はあの大飢饉の生き残りだったな?」

「はい、あの頃は何所に行っても生きるので精一杯でした。先代様に拾って貰わなければ、今の私はいなかったでしょう。」



 どうやら心当たりがあるようだ。


 それにしても大飢饉か・・・・・・。


 そういえば帝国って、食糧問題が多い国なのか?


 まあ、それはともかくまずは領主のオッサンからだな。


 俺は画面を表示させて、領主のオッサンが取得できるボーナス一覧を表示させた。



「・・・・あれ?魔法系のボーナスが少ないな?あ、でも〈魔法適正向上〉と言うのがあるな?」


「ほう、それはどういったものなのだ?」


「え~~~と・・・・」



〈魔法適正向上〉 30pt

・特定の魔法に対する適正レベルを1つ上げることができる。

・選べるのは《攻撃》《防御》《補助》《特殊》の中から1つだけである。

・この特典で上げられるのはレベル3までである。



「だってさ!」



 流石にチートレベルの4や5にはなれないようだな。


 そうだよな、もしできたら俺ってチートを量産できる能力を持っている事になるからな。


 まあ、俺の能力自体がチートっぽいけどな。



「なるほど、しかし私は魔法よりも剣の方が性にあっているのでな。珍しい武器などはないのか?」


「確かあったはずだぜ?」



 そうそう、今までは誰も選ぶ人が少なかったけど、ボーナスの中には武器なんかもあるんだぜ?


 まあ、伝説級の武器だと必要なポイントがとんでもないけどな。



「――――あったあった!取り敢えず剣だけでいいか?」


「ああ、見せてもらおう。」



疾風の双剣(デュアルゲイル)〉 40pt

・持つと風のように早く動けるようになる風属性の双剣。


火竜の牙剣(ドレイク・クレイモア)〉 50pt

・火竜の牙から作られた火属性の両手剣。


〈轟剣テラボルト〉 50pt

・雷電鋼で作られた雷属性の両手剣。

 ・

 ・

 ・

銀雪の宝剣(シルバーグレイシャ)〉 80pt

・ミスリルで作られた氷属性の片手剣。


〈無銘の聖剣〉 100pt

・戦う度に持ち主と共に成長する聖剣。


蒼海の守護剣(ブルーカリバー)〉 120pt

・伝説の金属オリハルコンを一部に使用した水・風属性の片手剣。




「・・・・・何だか、とんでもなく凄い剣ばかりですね?」

「う~~む、物凄く悩むな!」


「旦那様、これは熟考が必要かと。」



 領主のオッサン、子供みたいに目を輝かせているな?


 まあ、ミスリルやらオリハルコンやらでできた剣が出てきたんだから無理もないけどな。


 執事さんも自分の事のように緊張してるな。


 ちなみに、ボーナスに出てくる武器は基本的に店で買えるような物はないみたいだ。



「決めたぞ!この〈蒼海の守護剣〉にするぞ!」


「旦那様、また高い物を選ぶ悪い癖が・・・・・・・」



 執事さん溜息だ。


 あ~なるほどな、この城の高級品は領主の衝動買いの結果か。


 まあ、人間誰でも高い物を欲しがるのは当然の心理だよな。



「じゃあ、後はいつも通りに〈ステータス〉や〈鑑定〉も付けて、ついでに便秘や痔の薬とかもいる?」


「――――――何故それを!?」


「いや、ステータスに載ってたから。」



 あ、どっちも隠してたのかな?


 まあとにかく、領主のオッサンの取得したボーナスは次のようになった。



蒼海の守護剣(ブルーカリバー)〉 120pt

〈鑑定〉 5pt

〈ステータス〉 5pt

〈森の整腸薬〉 5pt

〈万能軟膏〉 8pt  合計143pt 残り2pt



 ちょっと使いすぎたか?


 領主のオッサンが“決定”をタッチすると、何時もの様にオッサンの体が光りだして目の前には剣と薬が現れた。



「おお!!」


「これは凄い!!」



 領主のオッサンも執事さんも驚いてる驚いてる♪



「これは凄い名剣だ!」



 早速剣を鞘から抜くと、刀身から不思議な存在感のようなものが出てきた。


 スゲエな!ゲームだったら間違いなく超レア級の武器じゃん!?


 あの剣、この家の家宝決定だな!


 オッサン、スッゲェ涙流してるぜ!



「じゃあ、薬の方も早速飲んでみたら?」


「おお、そうだった!」



 剣を鞘におさめた領主のオッサンは〈森の整腸薬〉の瓶を開けて一気に飲み干した。


 あれ?あの薬って一度に全部飲んで大丈夫だったっけ?



     ピ~~~~ゴロゴロ・・・・・・・・



 あ、なんか変な音がしてきた!



「う・・・・!ちょっと失礼する!!」


「旦那様、どちらへ?」


「・・・・・訊くな!!」



 領主のオッサンは腹を押さえながら部屋を出ていった。


 あれは飲み過ぎたんだな。


 その後、領主のオッサンはトイレでスッキリしてきましたとさ☆


 あ、トイレには軟膏も持っていったぜ♪






更新時間についてですが、今週から平日も休日も午前10時に統一しようと思います。

次回の更新は19日の予定です。


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