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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
聖国編Ⅰ-ロルフの章-
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第172話 ボーナス屋、北に向かう

 ロビンくんのサプライズ報告に息を飲む俺!



「―――『至宝』が見つかった!?」


「いえ、『至宝』が封印されている遺跡の場所が判明したのです。」



 ついにキタ!


 ファリアス帝国の『戴冠石(リア・ファル)』、フィンジアス王国の『光の魔剣(クラウ・ソラス)』、ゴリアス国の『貫く光(ブリューナク)』に続く最後の『至宝』の在処がついに発見された!


 四大国にあるらしいのは分かってたから、残るムリアス国を探せば見つかるのは分かっていたから、判明するのも早かったみたいだな!


 ロビンくんは目の前に地図を広げると、最後の遺跡あり場所を指さした。



ココ(・・)です。」


「え!?ココって……ムリアスじゃないのか?」



 ロビンくんが指したのはムリアス公国じゃなく、その真上にある小国、聖国だった。



「はい。聖国の中枢、聖都です」


「どういうこと!?」



 俺は当然の疑問をぶつけた。


 『至宝』は四大国にあるんじゃないのか?



「シロウ殿の疑問はもっともですが、それについては聖国の歴史を知ればすぐに納得できます。現在、聖国の領土となっている地域はかつてはムリアス公国の一部だった場所、つまり旧ムリアス公国領なんです」



 まとめると、ずっと昔のダーナ大陸には今以上に国が乱立していて、四大国も今のような形はしていなかった。


 ムリアス公国も同じで、当時は現在の聖国領を足しても今の半分程度の国土しかなかった。


 そしてやってきました戦国時代!


 幾つもの国が滅び、四大国は一気に国土を広げて大国の座を手に入れた。


 その後、ムリアス公国は首都を現在のリュミエールに移し、長い平和が続いたのだが、その平和の中で力を付けた勢力が現れた。


 それがジーア教、ダーナ大陸最大最古の宗教だった。


 元々歴史あるジーア教は大陸中に多くの信者がいた為、平和な時代に一気に力を付けてムリアス公国内に自治領を獲得、そして後に独立して現在の聖国になったそうだ。



「そして問題の遺跡は、聖都の中でも更にその中枢、教皇庁の真下にある事が判明したんです」


「マジで!?もしかして、聖国は『至宝』が封印されているって知ってたから、遺跡のある場所を聖都にした?」



 そうじゃないと出来過ぎた話だ。


 ケルトの神を崇める宗教の総本山の真下に、崇めている神の『至宝』が偶々あるなんて偶然にしては出来過ぎている。



「その可能性は高いでしょうね。聖国に関しては、帝国もその全てを把握している訳ではありませんから」


「けど、どうして遺跡が聖都にあるって気付いたんだ?」


「ええ、私達も最初は現在のムリアス公国内を調べたんですが、その内に『創世の蛇』の勢力が公国から完全に手を引いたとことに気付き、現在の公国領には遺跡がないと結論付けたんです。現大公が発見されたのがその証拠です」



 つまり、遺跡が現在の公国内にあるのなら、捨駒勇者達の件に失敗した後も公国内で謀略を巡らせている筈だし、監禁されているのを保護されて今は職務に復帰した大公を、人質にするなり洗脳するなり利用している筈だと考えた訳だ。


 そして嘗て公国領だった聖国にも調査の手を伸ばし、聖都に遺跡がある事が判明したという。



「何より、聖国にはアイアスが潜入していましたからね」



 そう、『創世の蛇』のメンバーで現在はフィンジアスに捕まっているアイアスはジーア教の枢機卿だったし、他の枢機卿も1人はグルっぽかったしな。


 ならば、聖国も怪しいと考えるのは自然な流れだ。



「後はシロウ殿から調査系のボーナスを貰った人に調べて貰ったらすぐに聖都の地下に遺跡がある事が分かったという訳です」


「そうか、最後の1つは聖都にあるのか!」



 ならば善は急げ!


 先に『至宝』を奪われる前に先手を打たなきゃな!


 俺は一気にテンションが上がったが、ロビンくんは何故か難しい顔をしていた。



「……ただ、1つ大きな問題があるんですよね」


「問題?」


「はい。今までの『至宝』の例から考えて、『至宝』の封印を解くにはそれぞれの国の君主一族の“血”が必要なのはシロウ殿も御存じですよね?」


「ああ」



 それはダニールやブラスを尋問した時にも聞いたし、実際にそれで封印が解けたのは何度も目にしている。


 『光の魔剣(クラウ・ソラス)』はステラちゃんのお祖母さんが封印を解いてステラちゃんの血で覚醒した。


 『戴冠石(リア・ファル)』はヒョーゴが封印を解いて同じくヒューゴの血で覚醒した。


 『貫く光(ブリューナク)』はミリアムちゃんだ。


 なら、最後の『ダグザの魔釜』はムリアスの大公家の誰かが鍵になる筈だ。


 まさか、あの捨駒のアホ殿下が鍵なのか?



「―――これはあくまで推測なのですが、今の大公家の中には、『至宝』の“鍵”となる人物は存在しない可能性があります」


「――――!?」


「この世界の歴史を知らないシロウ殿が驚くのも無理もありません。実はムリアス公国は、長い歴史の間に何度も君主一族が変わっている国なんです。今の大公家も、表向きには(・・・・・)建国の始祖である初代ムリアス大公の血を引いていることになっていますが実際は怪しいとしか言えないんです」



 つまりこういう事だ。


 王国や帝国は国王や皇帝が君主で貴族がその下にあるのに対し、公国(または大公国)は貴族を君主とする国家だ。


 ムリアス公国も建国当初から貴族が統治してきた国家で、その君主は代々ムリアス大公を名乗ってきた。


 だけど長い歴史の中で「大公も所詮は貴族、自分達と対等!」と考える輩が常に現れては君主の座を手に入れようと反乱を起こしたりしてきた。


 しかも、建国から数百年も経つと、公国貴族間での婚姻のせいで、大公家の血を雀の涙ほど引く貴族が国内に大量発生し、「自分達も偉大なる初代大公の子孫!」と調子付く貴族も大量発生する時代も何度かあったらしい。


 そして今から約800年前、内乱の末に元祖ムリアス大公家は大公家の座から落とされ、勝った貴族が2代目ムリアス大公家となった。


 そしてその後も同じ事が何度か起き、現在のムリアス大公家は5代目ムリアス大公家に当たるらしく、しかも長い歴史の中でドサクサに紛れ込んで新たに公国貴族になった連中もいるとかで、今のムリアス大公家が初代大公の血を引いているかどうかは怪しいとしか言えないそうだ。


 ちなみに、同じ四大国でもファリアス帝国は常に皇族と貴族をしっかりと区別していたり、一字は神格化させたりなどして1000年以上の間、君主の座を不動のものとしてきた。


 フィンジアス王国やゴリアス国も、王族と貴族の間にある一定の線を引く一方で、優秀な貴族の子弟を王女と結婚させる事で国王にするなど、様々な策で貴族が暴走しないようにすることで同じ一族が君主の座に収まり続けていたのだという。(つまり代々やり手だった。)



「実際、アレクシス殿下も敵の捨駒にされていましたから、今のムリアス大公家には“鍵”になれる人間は存在しない可能性が高いというのが私達の見解です。」



 う~ん、元祖ムリアス大公家の人間がいないと『至宝』の封印は解けないからこれは大問題だな。


 けど、こういう場合って、必ずどこかに生き残りがいたりするんだよな。


 うん!今までのパターンだときっといるはずだ!



「よし!調べてみよう!」


「え?」



 俺は早速《摩訶不思議な情報屋(エクセレント・リポーター)》を使って検索してみた。


 そしたらビンゴだった!



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

『検索:元祖ムリアス大公家の子孫の生き残り、『至宝』の“鍵”』


 初代ムリアス大公の一族はダーナ神暦686年の「第一次ムリアス内乱」により大半が死亡し、運良く大公派の貴族に匿われた5名だけが生き残り他国へと亡命した。

 生き残った5名は最後の元祖大公の子供2名と甥姪3名で、他国で名を変えて生き、亡命した国の王侯貴族と結婚して子孫を残している。

 現在、元祖ムリアス大公家の血を引き、尚且つ『至宝』の“鍵”の資格を持つのは元ミストラル王国の王家に2名、元アルバン帝国のハイノース公爵家に1名、モーブ王国のブロンド男爵家に1名、ロホ王国の王家に3名である。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 このチート、本当に便利だな♪



「無茶苦茶ですね」


「兎に角、“鍵”の心配は無さそうだな!“連合”に加わっているモーブ王国とロホ王国と連絡を取って協力してもらおうぜ!」


「そうですね。急いで両国に連絡します!」



 ロビンくんは椅子から立ち上がり、すぐに行動に移ろうとした。


 だがその時だった。



――――ピロロ~ン♪



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

『ロホ王国、モーブ王国にて同時誘拐事件発生!』


 今から数分前、ロホ王国のルアンナ第四王女、モニカ第五王女、モーブ王国の男爵令嬢シドニーがほぼ同時刻に『創世の蛇』によって攫われた。

 ロホ王国では第二王子も襲われたが、抵抗した為に石化の呪いを掛けられた。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 いきなり不味い事になった!



「―――――!!」


「……先手を打たれた!」



 タイミングが良いのか悪いのか、俺が戻ってきたその日に『至宝』の封印の“鍵”になる人が一斉に攫われてしまった。


 というかロホ王国、第三王女に続いて狙われ過ぎだな。


 近衛隊にもボーナスをあげたのに、警備体制はどうなってるんだ?



「―――マズイ!ミストラル王国には(ヒューゴ)達が……!!」


「あ!」



 そうだった!


 ロホとモーブが狙われたんだから、ミストラルとアルバンも狙われる可能性がある!


 そして今、ミストラルには父親を捜しにいったロルフと、ロルフを追ったヒューゴ達がいる!


 今のヒューゴ達のレベルなら早々にやられたりはしないだろうけど、危険な事に変わりはない!



「父上達にも知らせてきます!!」


「じゃあ、俺は先にあいつらの所に行ってくる!!」


「分かりました。弟達をお願いします!!」


「おう!!」



 ロビンくんは勢いよく部屋を飛び出し、バカ皇帝の所に向かって走っていった。


 ん?


 走るより、瞬間移動の方が早いんじゃね?


 ロビンくん、動揺してるな。



「よし!俺はすぐに出発だ!」


『ゴケッ!』


「って、うおお!?」



 俺が独り言を口にした瞬間、何時からいたのか、隣にはコッコくんがいた。


 マジでビックリした。



「お、驚かすなよ~!」


『ゴケェ~。(ごめんなさい。)』



 コッコくんは頭を下げて謝った。


 気のせいか、ちょっと見ない間に、コッコくんの姿がまた変わった気がする。


 羽の色が今度は金に似ているけど金より神々しい色をしてるし、魔力がまた跳ね上がっている。


 また進化!?



「いや、今はそれよりもロルフとヒューゴ達だ!コッコくん、一緒に来てくれるか?」


『ゴケッ!(はい!)』


「よし!出発だ!」



 ちょっと気に掛かったが、今はそれを考えている時じゃない。


 今はあいつ等がいる(元)ミストラル王国に向かうのが先だ!


 俺はクラウ・ソラスを抜いて床に突き刺した。



「――――転移!」



 そして俺とコッコくんの姿は宮殿内から一瞬で消えた。


 無事でいろよ!!







 次回はロルフ視点に変わります。


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