第167話 続・ミストラル王国、(勇者と間違えて)とんでもない者を召喚する
――ミストラル王国 王都 ミスティ王宮――
突然の襲撃者は1人だけではなかった。
――――チュドォォ~~~ン!!
「オラアアアアアアアアアア!!俺の可愛い孫を拉致ったのは何所のどいつじゃあああああああああああああ!!??」
「あ、お祖父ちゃん!!」
――――この日、ミストラル王国に『魔勇者王』ビル=スプロットが襲来した。
「お前かあ!?死ね!!」
「グワアアアアアアアアアァァァァァァァァァ・・・・・・!!!」
「ちょっとお祖父ちゃん!?」
『魔勇者王』は近くにいた宰相にハイキックを当て、宰相は天井を突き破って遠くに飛んでいった。
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――聖国 聖都 教皇庁――
同時刻、ダーナ大陸最大宗教『ジーア教』の最中枢である聖都の教皇庁では教皇と枢機卿達が集まって1人の枢機卿に対する審問会を開いていた。
「―――――以上が、司法省長官、マウリシオ=ヴィッロレージ枢機卿への罪状です。彼は禁忌指定である悪魔召喚を行っただけではなく、我等が庇護すべき信徒達を自宅に軟禁、さらには各国の要人より金銭を受け取り便宜を図る等、崇高であるジーア教を貶める行為を長年に渡り続けていたのです!」
「なんと卑劣な!!」
「神の信徒として以前に、人としても許されざる罪ですぞ!」
「聖都を邪悪の巣窟にする気か!?」
「これはもう審議するまでもありません!即刻死罪です!!」
審問官の報告を聞き、枢機卿達は怒りの形相でマウリシオを責めていく。
マウリシオの方は、どうしてこうなってしまったのかと自問自答しながら必死にこの審問会をどうにか乗り越えようとしていた。
「誤解です!!私は生来、邪悪な悪魔になど手は――――」
――――ズゴォ~~~~~ン!!
それは天井を突き破ってマウリシオに直撃した。
マウリシオは悲鳴を上げる事すらできずに撃沈した。
――――この日、教皇庁に天から一筋の流星(っぽい何か)が墜ち、聖都は大混乱に陥った。
「な、何が起きたのだ!?」
「神だ!!我らの神が罪人に天罰を与えたのだ!!」
「おお!!我が神よ!!」
枢機卿達は勝手に天罰が下ったのだと勘違いし、マウリシオを撃沈させた存在へ祈りを捧げたのだった。
一方、終始無言だった教皇はと言うと・・・・。
(―――――今日の昼食は何かのう・・・・?)
若干、ボケていた。
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――ミストラル王国 王都 ミスティ王宮――
「―――――全く、どうして他所の連中はこんなくだらねえことに人を巻き込むんだ?あ゛あ゛?」
「・・・曾々お祖父ちゃん。」
――――この日、ミストラル王国に『大魔王』ラートン=B=スプロットが襲来した。
「テメエが主犯か?」
「が・・・は・・・・・!」
「お父様!!」
「ちょっと曾々お祖父ちゃん!その人死んじゃうよ!!」
「死ねばいい。」
『大魔王』はミストラル王の首を鷲掴みにして持ち上げていた。
今にもポキッと逝っちゃいそうな感じである。
それを見ていた『魔王』と『魔勇者王』はというと。
「死んで問題ないな。」
「ああ、死ねばいい。」
「パパもお祖父ちゃんも!!」
『大魔王』を止められる者は微塵も止める気がなかった。
この2人、本人達は否定してはいるが、『大魔王』の血を色濃く受け継いでいた。
「へ、陛下を助けよ!!」
「「おおおおおおおおお!!」」
呆然としていた近衛隊はようやく正気を取り戻し、ミストラル王の救出に動き出した。
だが、突然の出来事で平常心を失った彼らは判断を大きく謝っていた。
「――――あ゛?」
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――――その日、ミスティ王宮は上半分がプラスαと一緒に一瞬で消し飛んだ。
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「・・・大丈夫?」
「は、はい・・・!」
王女レアはショーンのお蔭で消し飛ばずに済んでいた。
ちなみにこの時、2人の顔は結構近かった。
(この勇者様、近くと見ると凛々しいし、包容力が・・・♡)
――――その日、勇者ショーンは異世界でフラグを立てた。
「―――ほう?戦争に勝ってちっぽけな国を反映するのに、俺の玄孫を利用しようとしたと?」
「何で俺の可愛い孫が関係のない国の食い物にされなきゃいけないんだ?」
「どうして俺の可愛い息子がどうでもいい国を助けなきゃいけないんだ?ああん?」
「ヒ、ヒィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
この世のものとは思えない恐怖に襲われ、ミストラル王は全身から色んな液体を垂れ流していた。
もはや、そこに王としての威厳など無かった。
「つまりだ!そのクランとアルバンって国も同罪ってことだよなあ?なあ、親父、ジジイ?」
「というか、さっきからウゼエ連中の事だよなあ?」
『魔王』と『魔勇者王』は西の方に見える海に視線を向け、水平線の上に浮かぶ艦隊を睨みつけた。
そして『魔王』は艦隊に向かって指を指し、敵意はあるがつまらない物に対する口調で一言呟いた。
「ビーム!」
『魔王』からビームが発射され、それは1秒と掛からず艦隊に直撃した。
そしと大爆発。
――――その日、クラン・アルバン連合艦隊は瞬殺された。
「パパ・・・。」
「ショーン、お前はそこで大人しくイチャついてろ!パパはちょっとだけ出かけてくる!」
「お祖父ちゃんもだ!」
「イチャついてないよ!!」
ショーンの心の叫び余所に、『魔勇者王』と『魔王』の親子は彼の前から姿を消した。
その約10秒後、ミストラル王国の南西から西南西にある2つの都市から光の柱が立ち昇った。
――――その日、クラン帝国とアルバン帝国は呆気なく終わった。
――――訂正。ミストラル王国も終わった。
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――ファリアス帝国 帝都タラ――
「――――ム!これはもしや、師匠殿の魔力!?」
「・・・みたいですね。」
3つの国が終わってしまった頃、遥か南方の帝都タラでは1組の夫婦が帝国で誰よりも早く『大魔王』の存在に気付いていた。
「ジ~ジ~~♪」
「おばあたま~~!」
「お~ヨシヨシ。元気な孫達だな♪」
先代皇帝夫妻は帝都の広場で幼い孫達の相手をしつつ、遙か北の方角を一瞥した。
「どうやら、師匠殿は家族と一緒のようだ。後で挨拶をしに行こうか?」
「そうですね。お土産は何がいいでしょうか?」
「あい?」
「ああ、ルドルフは心配しなくてもいいからね♪」
先代皇帝はジジバカだった。
そしてこの2時間後、先代皇帝の耳にもミストラル・クラン・アルバンの3ヶ国が陥落したとされる情報が耳に入るのだった。
各国が騒然とする中、ファリアスの先代皇帝を含めた一部の者達だけは平然としながら「まあ、それぐらいできるだろう。」と呟いていた。
一方、何人かの皇子達は・・・
「おい!ロルフの奴、大丈夫なのか!?」
「巻き添えになってないか!?ケビン、魔法で調べてくれ!」
「うん!」
「俺達も北に向かおうぜ!」
共の身を案じ、その日の内にミストラル王国へと出発したのだった。
彼らがその後どうなるのか、それはもう少し後の話である。
ちなみに・・・
「息子達が心配だ!俺もミストラルに行くぞ!」
「我が弟達が心配だ!すぐに北に向かうぞ!」
「陛下も殿下も行かなくていいです!」
そんな感じで、とある宰相は色々と苦労していた。