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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
日本編
161/465

第155話 ボーナス屋、下校する

――某公立高校 校庭――


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『検索:アプリ ハッピーハンター』


 現在は跡形も無く消滅した謎のサイトからダウンロードされるアプリ。

 携帯端末のカメラと連動しており、カメラに写った人から幸運ポイントを狩るゲームということになっている。

 狩ったポイントで自身のアバターを成長させるが、アバターは現実のプレイヤー本人と連動しており、アバターが成長すれば本人も成長するシステムになっている。

 アプリの正体は真犯人の固有能力で創作されたデジタル情報の形をした量産型能力であり、このアプリをダウンロードされた携帯端末を魔法具にする。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 本当に便利だよな、コレ♪


 今の段階だと一部のチートの情報までは得られないみたいだけど、時期に進化すれば可能になるだろう?


 んんん、待てよ?


 じゃあ、大魔王の情報が得られるのはなんでだ?


 まさかワザと・・・!?



「お~い!ボール取ってくれ~!」


「おっと!」



 声とともに野球場の方から一個のボールが飛んできた。


 俺はそれを片手でキャッチし、駆け寄ってきた野球部員に渡した。


 ああ、確か万年補欠とか言われている2年の先輩だ。



「サンキュ~♪」



 補欠先輩はボールを受け取るとすぐ戻っていった。


 俺はなんとなくステータスを視てみる。



【名前】桂 一郎

【年齢】17  【種族】人間

【職業】高校生(2年)  【クラス】補欠先輩

【属性】メイン:土 サブ:火 風 雷

【魔力】450/450

【状態】正常

【能力】――

【加護・補正】物理耐性(Lv2) 精神耐性(Lv2) ド根性 眠れる獅子 大器晩成 無駄に頑丈

【BP】69



 《ド根性》に《無駄に頑丈》って・・・。


 万年補欠なのは《大器晩成》が原因なのか?


 才能自体はどうなんだ?



〈野球の才(Lv1→?)〉(未覚醒)

*この才能を覚醒させるには20pt必要です。覚醒させますか?

 Yes/No



 俺は迷わず覚醒させてみた。



〈野球の才(Lv5)〉(超覚醒!)

*今まで積み重ねてきた努力の分、一気に技能が伸びていきます。



 おお!!


 眠れる才能はデカかった!!


 来年を甲子園に行ってくれそうだ!!



「良い事したな~♪」



 俺は気分が良くなったのでスキップしながら学校を後にした。


 これから向かうのは繁華街、神様クエストを早速クリアしに行くぞ!!






--------------------------


――名古屋市 繁華街――


 とある繁華街には今日も大勢の若者で賑わっていた。


 若者達は歩きながら、または壁に寄りかかったり適当な場所に座りながらケータイやスマフォを操作していた。


 ゲームやメール、SNS等やっていることは様々だ。


 そんな中、とある学校帰りの高校生はスマフォのカメラを群衆に向けながら慣れた手付きで画面をタッチしていった。



(よし!一気に170LPゲット!)



 その高校生―――高橋(たかはし)裕巳(ひろみ)は声を出さないようにしながら歓喜していた。


 彼は『ハッピーハンター』のプレイヤーである。


 先月、彼は受験のストレスを発散する為にスマフォで気晴らしできそうなゲームを探した際、今は消滅している謎のサイトからこのアプリをダウンロードしたのである。


 最初はアマチュアが自作したゲームかと思ってプレイした彼は試しに同じ塾に通う他校の生徒達から“幸運ポイント(LP)”をハントして自分のアバターの強化に使用した。



 『ハッピーハンター』は初期設定の際にプレイヤーの分身であるアバターの設定が行われる。


 設定には自身をカメラで撮影を利用され、不思議な事に初期ステータスはプレイヤーのリアルそのものが正確に反映され、アバターの姿もプロが描いた様なアニメキャラ風になっていた。


 アバターを設定した後、最初はチュートリアルが行われ、使用していケータイやスマフォのカメラで近くにいる人間を画面に映しだし、画面に映った人間から出てくる「♡」を指でタッチ、またはボタン操作でハントしポイントを貯めていく。


 1日にハントできる人数の上限はプレイヤーのレベルによって決まっており、ハントしたLPが高いほど経験値もそれに比例して増え、レベルアップも早くなる。


 そしてゲットしたポイントは別メニューでアバターの強化に使用する事ができる。


 強化の種類は多く、「幸運強化」からはじまり「身体強化」、「才能強化」、「技能強化」、「能力強化」があり、他には「才能追加」や「技能追加」、「属性追加」、「補正追加」等がある。


 尚、「才能」や「技能」などはハントの際に低確率でLPと一緒に獲物からゲットする事ができる。


 レベルは1から始まり、「最高レベルまで到達すればイベントが発生するかも?」という文章がチュートリアルの最後で仄めかされている。


 「幸せをハントしまくって幸せになろう!」とも書かれていたが、所詮は暇潰しのゲーム、それが大半のプレイヤーの素直な気持ちだった。



 だけどは裕巳は違う。


 彼は気付いてしまったのである。


 プレイ初日、その日は塾でテストがあった日だったこともあり、彼は気休めのつもりで同じ塾生からハントしたLPの全てを〈知力〉に全振りし、LPと一緒にゲットした〈数学の才〉や〈技能:文章理解〉も迷わずアバターに装備した。


 その結果、その日のテストで彼は同学年の塾生の中で全科目トップになったのだった。


 逆に、彼にLPをハントされた他の塾生達――主に成績上位の常連――は成績を一気に落としてしまい、その後も成績は下降の一途を歩んでいった。



『・・・まさか!』



 最初は偶然かと思った裕巳だったが、プレイを開始して1週間ほど検証に費やした結果、『ハッピーハント』が只のゲームではない事に気付いたのだった。


 それからの彼の行動は速かった。


 毎日ポイントが高い人々、主にリア充にターゲットを絞ってLPを狩り続けどんどんレベルを上げていく。


 稀にLPと一緒にゲットする才能も全部アバターに装備させ、LPも自身のチート化にどんどん消費していった。


 そして彼が『ハッピーハンター』プレイしてから約1ヶ月、彼は1ヶ月前のストレスが嘘のように生き生きとしていた。


 頭の中がスッキリし、学校や塾で勉強した内容はすらすらと頭の中に入って瞬時に理解できるようになり、先日の全国模試では自己採点だけでも余裕で全科目過去最高得点を採っていた。


 更に恋愛運も上昇させたせいか、以前から淡い恋心を抱いていた相手だけでなく、学校の後輩や同中の女子高生からも告白され、前者とは正式に交際を始めてDTを卒業する事も出来た。


 問題があるとすれば、LPを消費して〈ハーレム属性〉を装備したせいで告白してきたその他の女子達にも迫られ、うっかり酒を盛られた勢いで全員にハッスルしたことくらいである。


 だが幸運な事に(・・・・・)彼女は裕巳を振ることはなく、逆にライバルが増えた事で燃え上がり、現在、1人の男を巡って女の戦国乱世が巻き起こっていたりする。



「儲け♪儲け♪今日も沢山ハントできたぞ♪」



 裕巳は今日も上機嫌だった。


 補正に〈幸運〉を加え、〈金運上昇〉も手に入れたお蔭で彼の財布はここ毎日潤いまくっていた。


 親に内緒でナンバーズやスクラッチで少しずつポケットマネーを稼いでおり、既に親の月収以上を稼いでいたりする。



「さてと、もう行くか。」



 現在の裕巳のアバターのレベルは43、『ハッピーハンター』の全プレイヤーの中では――『ハッピーハンター』はネットに繋ぐことで最新の順位を確認する事ができる――3番目に高いレベルであるが、彼は今以上に積極的に順位を上げようとは思っていなかった。



(調子に乗り過ぎて、何もかも失うなんてオチにはなりたくないからな。最初はテンションが上がって燃えちまったけど、これだけのものがノーリスクで得られる訳がないからな。自重はしないと。)



 彼は漫画が好きなのでこういうファンタジー的なイベントの定番の展開を理解していた。


 ノーリスクハイリターンなんて都合が良すぎるアプリにはきっと裏があると睨み、最近は派手に使わないようにしていた。


 ・・・一応ではあるが。


 だが、この一応の自重が後に彼の運命を大きく左右する事になる。



(今夜も親は遅いし、一発くらいヤルかな?)



 こっちの方(・・・・・)は調子に乗っているようだった。





--------------------------


――名古屋市 とある溜まり場――


 『ハッピーハンター』ランキング第1位、松尾(まつお)信愛(のぶちか)は調子に乗っていた。



「オラオラ!さっきまでの威勢はどうしたぁ?このままあの世に行きたいかあ~?」


「グホッ・・・!!も、もう・・・や・・・」


「ああ?全然聞こえねえな~?」



 髪を真っ赤に染めた信愛は床に転がっている何人もの男達を蹴りながら自分のスマフォのカメラを男達に向けていた。


 彼はプレイヤーの中で真っ先に『ハッピーハンター』の力に気付き、初日にハントしたLPの全てを攻撃力に振っていた。


 今年高校を卒業した彼は進学するでもなく、かといって就職をしている訳でもなく好き勝手に日々を過ごしていた。


 そんなある日手に入れたこのアプリ、信愛はリスクがあるなど想像すらせずに使いまくり、特に普段から気に入らない相手からLPや各種才能・技能をハントし、仲間の前で痛め付けて勢力を伸ばしていった。


 更にはアバター強化の際、アプリの中でも隠し(・・)機能になっている〈能力追加〉を発見し、〈魅了の魔眼〉や〈念力(サイコキネシス)〉を手に入れ、気に入った女性を年齢を問わず自分のものにして貪っていった。


 邪魔をする者は力で捻じ伏せ、街を恐怖で支配していた。



「・・・・・・。」


「チッ!気絶しちまいやがったか。しょうがねえ、後はお前らで楽しむか?」


「「「ヒィ!!」」」


「おら!俺の眼を見ろ!」


「「「あ・・・・・・」」」



 怯える女性達の心を魔眼で奪った信愛、彼は下卑た笑みを浮かべながらズボンを下ろした。


 ちなみにノーパンである。


 そして今日もまた、彼は欲望脳のままに楽しみ続けていった。


 だが、彼は気付かない。


 調子に乗って使い続けている『ハッピーハンター』、そして約1ヶ月も好き放題に重ね続けていた悪行の数々が自分自身に破滅を齎すということに・・・。







 取り敢えず、日本編は『ハッピーハンター』事件で一区切りさせる予定です。

 それにしても、敵役は変態にしか思えない。



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