第152話 ボーナス屋、学校に行く
「ん・・・!」
目を覚ます。
俺が寝ているのは2人部屋の二段ベッドと下のベッドだ。
上のベッドには俺より1つ年上の高校生がまだ寝ている。
当然だが彼も俺と同じ孤児で、俺がこの施設に来る2年前からここで暮らしている。
その話はさておき、俺は急に目が覚めてしまった。
腕時計を見るとまだ朝の6時前だ。
何時もならあと30分は寝ている筈なのに、今日は何故か何時もより早く目が覚めてしまった。
「・・・あれ?」
俺は部屋の中に違和感に気付いた。
おかしい、明らかにおかしいぞ?
「天井が・・見える?」
そう、俺の視界には天井だけが映っていた。
二段ベッドの下の段のベッドの上から見上げているんだから、本来なら天井じゃなくベッドの底が見え
るはずだった。
更に、いつもなら真上から聞こえてくるはずのイビキが横から聞こえてくる。
俺は起きあがって横を見る。
そして部屋の中の異変に気付いてしまった。
「ええええ!?部屋が広いぃぃぃぃ!?」
「・・んだよ、五月蠅いなあ・・・?」
俺の心からの叫びに、隣のベッドで寝ていた同室の男が不機嫌そうに目を覚ました、
ゴメン、けど・・・
「って、何じゃこりゃああああああああ!!??」
「そっちの方が五月蠅い!!」
松田〇作かお前は!?死んでないけど!
「部屋が広いぃぃぃぃぃ!?」
「だからそっちが五月蠅い!!それと、それは俺が先に言っただろ!!」
だけど無理もない。
元々この部屋は二段ベッドと机が二つの六畳間だったはずだ。
それが今、ベッドは二段ベッドではなくなり、ピッタリくっついていた学習机もゆとりある距離に離れていて、部屋の中央は小さなテーブルとクッションがあるだけじゃなく、遊戯室と食堂にしかなかった液晶テレビがBDレコーダー付きで置いてあった。
ハッキリ言って、俺が昨日まで暮らしていた部屋だとは思えない!
「・・・どうなってるんだよ、士郎?」
「俺にも分かんねえよ、慶太兄さん。」
ちなみに、俺の隣のベッドで呆然としている同室者の名前は神谷慶太17歳、高2だ。
渉にとって俺が義兄であるように、この人は俺にとって義兄のような人だ。
最近と言うか、今まで話題にも上がらなかったのは普通の一般人だからだ。
決して影が薄いとか、酷い理由じゃないから。
「兎に角外を見てくる!!」
そして俺は寝間着のまま部屋を飛び出し更に驚く。
新築同様に綺麗な床や壁、ある筈のないエレベーターホール、明らかに面積がおかしい庭、俺は外に飛び出して仰天する。
なんと、昨日までは所々老朽化が見え始めた俺達の家が一夜にして――――
「―――匠の技!!??」
遠くからサ〇エさんの声が聞こえたような気がした。
勿論それは幻聴だが、直後に幻聴ではない音が耳元で鳴った。
――――ピロロ~ン♪
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『名古屋市、大魔王の前に落城する。』
大都市名古屋は本日をもって大魔王の監視下に置かれた。
名古屋市長を始めとする名古屋市に属する全公務員の生殺与奪の権利は大魔王に握られてしまった。
理由は市長と一部の市議達が調子に乗って知らず知らずの内に大魔王の逆鱗に触れてしまい、何も知らない他の公務員一同も巻き添えをくらってしまった。
この事実を知っているのは大魔王に喧嘩を売った一味と、日頃から陰で問題を起こしていて者達だけであり、清廉潔白な職員達は何も気づいていない。
市長一派は本日中に記者会見を行い、過去の罪の告白をした後に警察に自首して逃亡する模様である。
尚、大魔王は気まぐれで市内の某児童養護施設を市から買い取った。
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「またか・・・・。」
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「でさ~、弟から聞いた話だと~、「ルチオが世話になった借りを返す」って話みたいだよ~?」
「何で普通に朝食食ってるんだ?」
「園長さんがどうぞって言ったから~♪」
(((園長ぉぉぉぉぉ!!!)))
施設は大魔王によって生まれ変わった。
大魔王の恐るべき力により、敷地面積は倍増、土が露出した庭は芝生になり、裏庭にある菜園には温室が出現した。
鶏を飼っていた小屋も一新し、気のせいじゃなく鶏の数も増えていた。
施設本体も2階建てから地上4階建てになり、地下室もあった。
図書室や大浴場が設置され、他にも子供が喜びそうな仕掛けがあちこちにあった。
大魔王、やり過ぎだろ。
“借り”って、ヴァールで奴隷商のトコにいた件のことか?
でもあれって・・・
「あの人、家族には甘いからね~。後はノリで改造したんじゃない?」
「ノリのレベルかよ・・・?」
「ちなみに~、ここの新しい名前は『勇者の家(仮称)』だって~♪」
「それはやめて!!」
大魔王、絶対遊び半分でやってる!!
名前については仮称らしいから、後でみんなで相談だ!
ちなみに、施設の表向きの所有者は園長先生になっていて、今年で還暦の園長先生はほぼ生涯現役が確定したのだった。
「あれ?」
「どうした、唯花?」
「テレビに映ってるのって・・・」
唯花はテレビに映っている朝のニュースを指差した。
そこには、某大手企業の重役達が国税局やら検察庁やらにお世話になっている映像があった。
「あれ?あの人って、確か佐原の父さん・・・?」
映像の中には某同級生の父親も入っていた。
さらに続いて、その某大手企業の新しい最高責任者に誰かに似た30歳前後の外国人男性が移っていた。
「あ~、あの人、ルチオのお父さんだよ~ん!」
どうやら、日本の政財界は大魔王一派に乗っ取られ始めているようだ。
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――名古屋市 某公立高校――
俺が通う高校はごく普通の公立高校だ。
普通と言っても市内の公立校の中ではそれなりに偏差値が高く、卒業生の中には現役の政治家も数多くいるらしい。
大魔王の下僕になってしまった自業自得な人達の中にもだ。
そんな高校に通っている俺だが、今朝は何やら教室の中が騒がしかった。
「おっはよ~!何かあったのか?」
「おはよう大羽!今朝のニュース見たか?B組の佐原の親父、捕まったらしいぜ?」
「あ、ああ・・・そうみたいだな。」
大魔王一家にも捕まってたけどな。
「―――でさ、佐原のグループが瓦解し始めてるんだよ。ほら、佐原の金に釣られて集まってる連中!」
「あ、ああ、あいつ等か。」
佐原の奴、今までは親の金でやりたい放題だったけど、その金の供給元がなくなったから取巻き達に捨てられ始めたようだな。
金の切れ目が縁の切れ目だな。
「しかもあいつ等、なんか昨日から不幸続きみたいだぜ?」
どうやらペナルティが効いているみたいだ。
あれ?
もしかして、佐原の父さんが捕まったのって、ペナルティのせい?
すると、周りからヒソヒソとチーム佐原に関する噂話が聞こえてきた。
「――――補導されたらしいぜ?」
「全員財布をすられたって聞いたぞ?」
「両刀とか・・・」
「全身にカラスの糞を・・・」
「・・・原付盗まれたとか・・・」
「―――性病?」
「隣町のチームのバイクを壊したとか・・・」
「家に強盗が入ったとか・・・」
「え、一気に借金地獄!?」
「―――薬に・・・・」
「―――――とやっちまったんだってよ!」
「不倫の子だって・・・・」
「親が離婚するんだって。」
・
・
・
どうやら、あの後凄い不幸の連鎖があったようだ。
両刀に性病って・・・。
「お~い!ホームルームを始めるぞ~?」
ここで担任の先生が来て立ち話は終了になった。
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さて、ここでクイズです。
俺が通っている高校では芸術系科目――書道、美術、音楽――は選択制になっていて、俺が選択しているのは音楽だ。
そして音楽の教師はこの高校でも指折りの美人女性教師なのだが、年齢を含めプライバシーの全てが謎に包まれていて、男子生徒の間では狙っている者も少なくないのだ。
そんな事もあったから、俺はつい好奇心に動かされて先生の情報を得ようと動いてしまった。
さあ、ここからが問題です。
先生に《ステータス》を使った結果、次のような情報が出てきた訳だが、これはどういう意味なのでしょうか?
【名前】『最上の女神』弁財天
【年齢】―絶対秘密― 【種族】神
【職業】七福神 教師 演奏家 【クラス】高校の女神 アジア最古のストーカー被害者
【属性】水 土
【魔力】9,090,000/9,090,000
【状態】正常
【能力】神術(Lv4) 女神之水術(Lv5) 女神之土術(Lv5) 女神之占術(Lv4) 女神之武術(Lv3) 女神之演奏術(Lv5) 奇跡の賛歌 真言 祝福の神手 眷属召喚 女神の弦楽器 神の聖典 女神の数珠 女神の小太鼓
【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv5) 精神耐性(Lv4) 水属性無効化 土属性無効化 全状態異常無効化 古き女神 聖なる川の化身 聖なる瞳 永久の美貌 母なる女神 豊穣神 芸術神 文学神 学問神 言語神 財福神 七福神
【BP】9999
士郎が暮らす施設の名前大募集!!
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