第150話 ボーナス屋、同級生に絡まれる
「ウッソ!マジで大羽だよ~!あいつ、こんな所で買い物するんだな?」
「似合わね~♪」
「なんだ、お前らか。」
俺の事を好き勝手に言ってたのは、俺の高校の同級生達だ。
親しい訳じゃないが、学校ではなにかと絡んでくる面倒くさい連中だ。
初めて見る顔もあるけど、多分他校の生徒だろう。
「俺が買い物をしてちゃ変かよ?」
ちょっとムカついたから言い返してみる。
すると、相手の連中はゲラゲラと笑い出した。
「ハハハハ!親無しの貧乏人がここで買物してたら変に決まってるだろ?お前みたいなのは、精々百均や近所の商店街をうろついてるのがお似合いだからな!」
「というか、税金泥棒がショッピングなんてサイテ~よねえ?」
「え?こいつって孤児なワケ?うわあ~!」
知らない奴らまで汚いものを見る目をしてきやがった。
類は友を呼ぶか。
こいつら、俺が施設育ちってだけで「税金泥棒」とか「貧乏人」とか言ってくるんだよな。
勿論、高校の連中全員がこう言う輩じゃないし、どちらかというとコイツラは少数派だ。
コイツラのリーダー、佐原宗二は親が大手企業のお偉いさんだとかで金をチラつかせて仲間を集めているが、同級生の大半からは嫌われていたりする。
それでも金や同類の匂いに釣られて集まる連中はいるわけだが。
「用がないなら俺は行くぞ?」
「おい待てよ!そんな物を買う金があるなら、俺らにもちょっと奢ってくれよ?」
「そうそう、お前らを養ってやってる俺らにちょっとは還元してくれよ?」
こいつら、何言ってんだ?
別に俺はお前らの金で養われているわけじゃないぞ?
「何で俺がお前らに奢らなきゃいけないんだよ?」
「ああ!?何調子に乗ってんだよ?親無しの癖に!!」
ああ、これ以上は本当に関わりたくないな。
適当にあしらって別の店に行くか。
「じゃあな!」
「おい、待て!!」
「御客様、他の御客様型の御迷惑になられますので―――」
いいタイミングで店員さん達が佐原達に注意をし始めたので、俺はその隙にその場を後にした。
流石のあいつらも、店員さんに怒鳴ったりはしないだろ。多分。
さてと、次はどの店に行くかな?
――――ピロロ~ン♪
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『大魔王一家、宇宙人を襲撃する』
アメリカ合衆国シカゴ上空で現地人を拉致していた某惑星の宇宙人一行が大魔王一家の逆鱗に触れ、宇宙船ごと乗っ取られた。
宇宙人達は全員ちょっと痛い目を見せられた挙句、身ぐるみ剥がされて弱味を握られまくられた。
その後、拉致被害者は全員解放され、大魔王は宇宙船を宇宙の何処かに蹴り飛ばした。
尚、宇宙人の私物はNASAで高く売れる。
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大魔王は世界の裏側で色々やっているようだ。
宇宙戦争になったりしないよな、コレ?
というか、NASAもグル?
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「あ、士郎!」
「士郎さん?」
「・・・士郎だ。」
「唯花!美咲!七海!」
買い物を続けていると、フードコートの近くで唯花達とバッタリ出会った。
唯花の紹介は必要ないから、初登場の2人を紹介しよう!
まずは牧原美咲、中2で数ヶ月前まで難病で入院生活をしていた俺の仲間の1人だ。
次は二村七海、俺と唯花と同じ施設育ちの中3だ。
2人も俺と一緒で、同じ日にチートを手に入れている。
ちなみに美咲は回復系、七海は未来予知系だ。
まあ、詳しい話は長くなるから省く!
「3人も買い物か?」
「そうよ。士郎も買い物?」
「ああ、向こうに持っていくお土産を買ってたんだ。」
「やっぱりまた行くの?」
「ああ、深く関わりすぎたし、個人的にも気に入ってるからな!」
「それに勇者様だし?」
「や、やめろよ唯花!それ、ここではかなり恥ずかしいんだから!」
「え?勇者って何の話?」
詳しい話を知らない美咲は興味津々の顔で俺と唯花を交互に見る。
日本に帰って来てからというものの、段々と異世界で勇者していたって事実が恥ずかしく感じる時が増えたんだよなあ・・・。
だって勇者だぜ?
落ち着いてようく考えてみれば「俺は異世界で勇者でした!」って、高確率で黒歴史になってしまう。
俺も例外に漏れず、こっちで数日過ごしていくうちに羞恥心に襲われている訳だ。
「へえ、そんな事があったんだ。」
「お願いだから、他のみんなには秘密にして!!」
「・・・もう遅い。」
「え?」
「・・・バカが言い触らしていたから。」
(うわあああああああ!!)
そうだった!
口止めするなら、この3人よりも先に銀洸達にするべきだった!
あいつ等、口が水素ガスより軽いから親戚だけじゃなく初対面の相手にも喋りまくりそうだ!!
うわあああああああああ!!!
「諦める事ね。あと、お昼は奢ってね♪」
「え、何でそう言う話になるの?」
なんか勝手にランチを奢る話になってしまった。
「異世界で稼いだんでしょ?」
「な、何故その話を・・・!?」
「銀洸がその話も言い触らしてたわよ?」
「あいつ・・・!」
銀洸、後で覚えていろよ!
まあ、唯花達には心配をかけた訳だから、一食分くらいは奢ってもいいかな?
「しょうがないな、今日だけだぞ?」
「やったわ!七海も美咲も手当たり次第に注文するわよ!!」
「え、ちょっと!?」
「―――――御意♪」
「え、いいのかな?」
「イイのイイの♪」
どうやら、俺は彼女達の食欲を嘗めていたようだ。
その後、唯花達はフードコート内の各店舗から食べたいだけの物を注文して行き、俺はその量にドン引きしたのだった。
財布には大して響かないとはいえ、とんでもない食欲だな。
「モグモグ・・・それで、士郎は次に何時異世界に行く気なの?」
「ん~、今のところは未定だな。ただ、向こうも『創世の蛇』関係で騒がしいし、早めに戻ろうとは思っているんだけど、学校がな~。」
「影武者は何度も頼めないわよ?」
「そうなんだよな~。」
そう、俺が異世界に2ヶ月近く行ってたのにも拘らず世間で騒がれていなかったのは俺の影武者がいたからだ。
俺の影武者をしてくれていたのは、俺達と同じ日にチートを貰った仲間の1人で、変身&分身のチートを使って俺の身代わりをしてくれたわけだ。
お蔭で高校の出席日数もこのままいけば皆勤賞を取れるようになっている。
けど、流石に今後も異世界に行く度に頼むのは駄目だよなあ。
そうなると・・・
「何か、丁度良いボーナスとかないかな?」
「そんなピンポイントで都合のいいのなんてあるの?」
「あった!」
「あるの!?」
「(・・・ドラ〇もん?)」
進化したせいなのか、ピンポイントで都合のいいボーナスを発見した。
七海は小声で何か呟いていたけど、よく聞こえなかった。
さて、俺が発見したボーナスはこれだ。
〈影武者ダブルくん人形〉 50pt
・所有者に分身になってくれる魔法の人形。
・所有者と意識が繋がる事で、互いに情報をリアルタイムで共有できる。
・人形だが、中に宿るのは所有者の本物の意識の一部なのでまさに分身である。
・使用しない時はストラップ状態になる。
使わない時はコンパクトに収納できる優れもののようだ。
そういえば、最近は能力系のボーナスばっかり交換していたからこういうアイテム系のボーナスを見る機会はあんまりなかったな。
後で色々調べておこう。
「本当に、士郎の能力はチートよね。理不尽よ。」
「そう言うなよ。望んでゲットしたチートじゃないんだからさ?何だったら、今度はみんなで一緒に行くか?」
「あ、それイイですね!私も行ってみたいです!」
「べ、別に私は・・・・!」
「素直じゃないよね。」
「七海!!」
「ハハハハ♪」
食事と同じくらいに会話も進んでいく。
そうだな、今度はみんなを誘ってみるのもいいかもしれないな。
まあ、今は色々キナ臭い話が多いからもう少し落ち着いてからだけど。
俺は今後のことを4人で話し合いながら普段なら箸を進めていく。
すると、同じフードコート内から何やらトラブルの声が聞こえてきた。
「――――てよね!」
「イイじゃねえか、俺達と遊ぼうぜ?」
「放してよ!!」
あ、佐原!
あいつら、また問題起こしてるのか?