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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
その頃のとその後(仮称)編
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第144話 エーレ王国、破滅する 中編

――エイラン城――


「それにしても、悪魔って思ったより簡単に使役できるのですね?」


「全くだな。他国は危険だから禁止しているようだが、おそらくは使役するだけの才を持つ者がいないからなのだろうな。その点、お前達は才能に恵まれすぎているから問題ないというわけだがな。ハッハッハ!」


「当然ですわ。エーレ王家より優れた人間などこの世に存在はしませんわ♪」


「特にレリアは魔法の天才だからな!」


「お兄様ったら♪けど、いくらゴリアスを手に入れる為とはいえ、あんな下賤な姫達を美しい私と同じ姿にするのは苦痛でしたわ。」


「それに耐えたレリアは本当に偉いよ。」


「ありがとうございます。お兄様。」



 ハウエル達は酒の効果もあって調子に乗っていた。


 次は暗殺に使おうとか、冗談ではなく本気で話していた。


 彼らは知らない。


 悪魔を使役するという事がどれだけ恐ろしい事かということを。


 下級悪魔1体だけではなく中級以上の悪魔まで使役した代償がどれだけ大きいのかということを。


 まして、遠く離れた土地の遺跡の最深部で使役していた悪魔が倒された当ことなど想像すらできていなかった。


 そして、ついに破滅が訪れた。



――――ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・



「あら、何の音かしら?」


「外の方からだな?」



 何かが風を切り裂くような音が外から聞こえてくる。


 好奇心につられ、貴族の何人かが外の様子を見るが、直後に悲鳴を上げる。



「「「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」


「「「わああああああああああああああああああああああ!!!!」」」



 それを見た貴族達は慌てて逃げ出す。


 だが、逃げるのは遅すぎた。



――――ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!



 その夜、エイラン城と貴族街を中心に隕石群が降りそそいだ。


 エイラン城は全壊、宴に集められていた大勢の貴族が巻き込まれた。


 隕石は2分も待たずに止まったが、破滅はまだ始まったばかりだった。



『ガオオオオオ!!』


『グオオオオオ!!』


「うわああ!!」


「魔獣が逃げだしたぞ!!」



 軍や騎士団の施設では使役用の魔獣の檻が壊れ、隕石の墜落で混乱した魔獣や、調教前の魔獣達が逃げ出していた。


 しかも、逃げ出した魔獣にはドラゴンも混じっていた。



「りゅ、竜種が逃げ出したぞ!!」


「逃げろ~~~!!」



 そして、王都の中心部は大混乱に陥っていくのだった。


 一方、全壊したエイラン城後では騎士団と軍による救出活動が行われていた。



「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


「ダメです!!《回復魔法》が効きません!!」


「最上級の霊薬もです!!」


「目が!!目がああああああああ!!」


「陛下!暴れないでください!!」



 そこは地獄だった。


 城の中に居た者達は奇跡的に誰も死んでいなかったが、それでも王侯貴族達の怪我は酷かった。


 国王ハウエルは右腕と右目を失い、両足の骨も粉砕していた。



「ひああああがああああああ!!??」


「だ、誰か殿下を押さえて下さい!止血ができません!」



 第一王子ソードは右腕と両足を失い、髪も失っていた。


 そして第一王女レリアは・・・



「血ィィィィ!!早く私だけでも助けなさい!!私は王女なのよぉぉぉぉ!!」



 父と兄の後ろにいたせいか、レリアは2人に比べると軽傷だった。


 それでも左手が無く、全身のあちこちが骨折し、ガラスや瓦礫の破片が刺さっていていたが。



『ギャオオオオオオオオオ!!』



 そこに檻から脱走したドラゴンがやってきた。


 そのドラゴンは『血染めの飛竜(ブラッティ・ワイバーン)』という名の下位種のドラゴンで、血の匂いに敏感で死にかけた生物の肉を好むドラゴンだった。


 食事を制限されていたブラッティ・ワイバーンは血の匂いに釣られてやってきたのだ。



『ギャオオオオオオオオオ!!』


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



 破滅はまだ終わらない。


 実はエイラン城には開かずの間があり、そこには過去のエーレ王家の犠牲になった者達の遺体や幽霊達が閉じ込められており、それらは先日の悪魔召喚や今夜の隕石などの影響で死霊型や不死型の魔獣に変貌していた。



『ウラミィィィィィィィ!!』


『復讐ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』


『肉ゥゥゥゥゥゥ!!』


『出世ェェェェェェェェ!!』


『ケケケケケ!!』


『カタカタカタ・・・!』


「「「うわああああああああああ!!」」」



 阿鼻叫喚。


 地獄は翌朝まで続いたのだった。






--------------------------


――王都エイラン パン屋『ベイカー工房』――


「貴族街が燃えてるぞ!!」


「おい!あれって魔獣じゃないのか!?」


「城がなくなってるわ!!」



 城下町も混乱に陥り始めていた。


 城下町には隕石は落ちなかったが、それでもこの国を統治する者が暮らす貴族街や王城が破壊され、今も魔獣に襲われている光景は王都の住民達には衝撃的だった。



「そんな!城にはまだお父様達が!!」


「いけません姫様!!」


「危険です!!行ってはいけません!!」



 ベイカー工房の前でその光景を見たティファは後先考えずに城へと向かおうとするが、従者達によって止められた。


 すると、仕事着を脱いで武装した店主のカイが特注のバスターソードを持って城へと向かおうとしていた。



「親父!!」


「お前らは家の中にいろ!ヤバくなったら俺を待たずに街の外に逃げろ!」


「叔父様!!」


「安心しろティファ、お前のクソ親父もついでに助けて来てやる!!だが勘違いするなよ?俺は王族や貴族を助けに行くんじゃねえ!この街を守る為に魔獣を狩りに行ってくるんだ!」


「く~~~!!男だぜ親父!!」


「叔父様・・・ありがとうございます!!」



 そしてバスターソードを持ったパン屋のカイは魔獣が暴れる城へと向かっていった。


 途中、若い頃に一緒に冒険者をしていた仲間達と合流しながら。



「来たかパン屋のカイ!」


「おお!お前もか肉屋のチャック!」



 バトルアックスや肉切り包丁などの重装備をした肉屋が加わった。



「ガッハッハ!やはりお前らも行くのか!」


「「おお!鍛冶屋のガス!」」



 不思議な魔力を帯びた大型ハンマーを担いだ鍛冶屋が加わった。



「おやまあ、男どもは幾つになっても暑苦しいねえ!」


「「「おお!宿屋のジリー!」」」



 貴重な魔石が嵌められた槍を持った宿屋が加わった。



「何だ?お前らも魔獣狩りに行くのか?」


「「「おお!!商人のラリー!」」」



 ミスリル製の装備を身に纏った商人が加わった。



「全く、私抜きで危険地帯に向かう気かね?」


「「「おお!偏屈学者のサイモン!」」」



 魔術師のローブを纏い、杖を持った偏屈学者が加わった。



「・・・・・・。」


「「「おおお!義賊のペラム!」」」



 一見暗殺者っぽい義賊が加わった。



「――――テヘ♪」


「「「おお!没落貴族のロザンナ!」



 ちょっと若作りをした没落貴族が加わった。



「ヒヒヒヒヒヒ・・・!」


「「「ゲッ!!薬屋のジゼル!」



 最後に不気味なオーラを放つ薬屋が加わった。

 嘗て、先代エーレ王のコネで知り合った「冒険女王」に扱かれた9人の元冒険者達は故郷を守る為に魔獣退治に向かった。


 その後、一晩かけて脱走魔獣や地下から湧き出るアンデッド魔獣は狩り尽くされ、本当に奇跡的に死者は出ずに済んだのだった。





 尚、重傷者達は薬屋の胡散臭い薬で助かったらしいが、失った腕や足までは元に戻らなかった。


 薬屋曰く、「ヒヒヒ・・・悪魔の呪いじゃな!」だった。



 そして、破滅はまだ続いていた。






 当作品の性格上、そうそう人が死んだりはしません。

 次回でエーレ王国のお話は最後です。


 ご意見、ご感想お待ちしております。

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