第141話 ボーナス屋、長い1日を終える
――ドルドナ遺跡――
軽そうな神様が帰ってから1時間が経った。
その間、俺達は神秘との遭遇の余韻に浸る暇もなく動き続けた。
最初はゴリアス王家一同や、聖国で軟禁の身だった人達を取りあえず休ませる為にイルダーナへと運んだ。
けど、約2名だけはそれを拒んだ。
「年寄り扱いするな!この身はまだまだ現役なり!」
「病み上がりは黙って寝てろ!作業の邪魔だ!」
「何だと!?レオ、貴様こそさっさと帝国に帰れ!!」
「父上も叔父上も揉めるな!!」
気品無き家族喧嘩だな。
イルダーナへの移動を拒否した1人は病み上がりのゴリアス国先々代国王だった。
この爺さん、食事に薬を盛られただけでなく(多分ウイルス性の)病気に罹ってしまい、ほんの数時間前までは吐血したままお城の中で倒れていたらしい。
そこに駆け付けたのがファリアス帝国先代皇帝で、先代皇帝の魔法や聖剣パワーで回復した――同じ病気に罹っていた奥さんもすぐに回復させたらしい――先々代国王はすぐに国賊退治に動き、主犯であるエレイン達がここにいる事を知り、空を移動してやってきたそうだ。
ちなみに、一見仲が悪そうな先代皇帝と先々代国王の2人だが、実は義兄弟の関係にあるそうで、保護された先代国王はあのバカ皇帝の従兄弟であり、現女王ミリアムはロビンくんやバカ皇子達の再従兄妹の関係にあるそうだ。
そんなに親交があるならさっさと同盟結べばいいのにと何度も思うが、その辺は大人の事情だろう。
それはさておき、先々代国王はここに残ると言い出し、それに続いて小さい女王様も残ると言い出した。
「女王として、私はここに残ります!」
「陛下、私もお供いたします!」
団長は不良モードをオフにしていた。
それはそうと、この女王様はさっきから俺の方をチラチラ見てるよな?
なんか、また何かのフラグが立っている気がする。
一応言っておくが、俺に幼女趣味は微塵もない。
可愛いのは好きだけど。
「さてと、事後処理を再開しますか!」
「勇者様!私もお手伝いします!」
「陛下、走っては危ないです!(おい!陛下に手を出すんじゃねえぞ!?)」
「(出さねえよ!)」
俺より自分を睨め!
団長の方こそ出すなよな!
後ろからの怖い視線が気になるが、無視しよう。
――――ピロロ~ン♪
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『エーレ王国に隕石が墜落』
エーレ王国王都エイランに隕石群が墜落し、直撃を受けたエイラン城は全壊、多くの重傷者が出た。
奇跡的に死亡者はゼロだが、王城には大勢の王侯貴族が集まっており、ほぼ全員が重体、何故か回復魔法も魔法薬も効かず、完治までには早い人でも6ヶ月以上かかる模様。
なお、家族に反発していた第二王女は当時下町に抜け出していた為、王族で唯一無事だった。
隕石は王城以外には上級貴族街に複数墜落し、全体の8割の屋敷が全壊または半壊した。
王国軍の施設にも墜落し、使役用に捕獲されたばかりの魔獣が檻から脱走し貴族街や王城跡地で現在も暴れ続けている。
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そんな事があったのか。
この世界にも隕石って落ちるんだな。
けど、回復魔法とかが効かないってどういうことだ?
あ、もしかして呪いの副作用とかだったりして?
まあ、その時は自業自得だよな。
――――ピロロ~ン♪
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『ベネディクト=F=クロフォード元公爵脱走未遂』
フィンジアス王国でクーデター事件を起こした罪で拘束中のベネディクト元公爵が地下牢から脱走する。
だが、すぐに母親のシャーロット前女王に見つかりすぐに殴られて地下牢に連れ戻された。
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ステラちゃんのとこも大変そうだな。
そういえば、速報で届く情報ってどういう基準で設定されてるんだ?
あ、細かい設定とかできるんだ。
フムフム、今は俺と直接関係ありそうな相手や国の情報になってっるっぽいな。
とりあえず、他にも事件とかがあれば即座に届くようにしておこう。
バカ皇子やバカ皇帝関連は除外、と。
おっとそうだ!ステータスを確認しておくか!
さてさて、どうなったかな?
【名前】『ボーナス屋』大羽 士郎
【年齢】16 【種族】人間
【職業】魔法剣士(Lv89) 神器使い(Lv99) 勇者(Lv90) 【クラス】神公認勇者
【属性】無(全属性)
【魔力】4,330,000/4,330,000
【状態】正常
【能力】勇者之魔法(Lv4) 属性術(Lv3) 精霊術(Lv3) 勇者之武術(Lv3) 闘気術(Lv3) 応報之絶対真理 吸収之達人 命無き物の可能性 進化する可能性 摩訶不思議な情報屋 光の魔剣 貫く光 鑑定
【加護・補正】物理耐性(Lv3) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv4) 全属性耐性(Lv4) 魔王殺し(仮) 竜殺し 土神ハニヤスの加護 豊穣神アヌの加護 銀腕神ヌアザの加護 太陽神ルーの加護 万能翻訳 職業補正 職業レベル補正
【BP】349
また凄い事になった!?
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さて、俺は今奴隷にされていた人達が集められている場所に来ている。
ここでは発掘作業をさせられていたが、幸いにも体を壊すまで働かされていた者はいないようだ。
調べたら脱走防止用の魔法や呪いが掛けられていた痕跡があったが、呪いの大元がいなくなったお蔭でもう自由の身のようだ。
あ、念の為に解呪や浄化をやっておいた。
ここにいる大半の人は新大陸から奴隷狩りに遭って連れてこられたらしいから、もしかしたらあの子の
両親もここにいるかもしれない。
早速確認してみる。
「スミマセ~ン!この中に、サフィラスって港町に住んでた人はいますか~?いたら手を上げてくださ~い!」
全員に聞こえるように大きな声で尋ねてみると、10人くらいの人が手を上げた。
結構多い(?)な。
全員、20代半ばから30代半ばくらいだ。
「今手を上げた人の中で、レミ(・・)って女の子に聞き覚えのある人はいますか~?」
「レミッ――!?」
これに反応したのは30前後の男性だった。
あの栗色の髪、どうやらビンゴだな。
俺はその人だけを連れ出して、テントの中で色々と質問をしていった。
「―――じゃあ、レミのお父さんで間違いないんですね?」
「はい!!娘は!!娘は無事なんですか!?」
確認の結果、この人はファル村で保護している、元奴隷の少女レミ(*33話以降参照)のお父さんだった。
レミの両親は新大陸の港町サフィラスに住んでいたが、ある日突然奴隷狩りに遭ってしまったそうだ。
大抵の奴隷狩りだと子供も連れて行かれるそうだが、今回の場合、エレイン達が肉体労働に仕えそうな奴隷ばかりを指定していたので小さかったレミだけは連れて行かれなかったようだ。
俺はレミが無事である事と、両親を追いかけてダーナ大陸まで来たことを話し、それを聞いたレミのお父さんは泣き崩れた。
あれ?そういえば、レミのお母さんはここにはいないのか?
「妻は・・・貴族の使用人にすると言われて連れて行かれました。」
まあ、女性はそっち方面に使われるだろうな。
それにしても貴族か。
何時ものパターンだと、宰相か摂政っぽいな?
調べてみよう。
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『検索:ファル村に住んでいるレミの母親』
ゴリアス国首都ドーウィンにあるブラッド宰相邸で使用人として働かされている。
宰相邸には他にも違法奴隷の使用人が28人おり、時には夜の相手をさせられている。
なお、レミの母親ララはまださせられていない。
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ビンゴ!
やっぱり宰相のトコか!
摂政と一緒で、宰相もかなりの女好きだったのか。
「よし!救出しよう!」
「私も協力します!」
あ、女王様、まだいたんだ。
その後、クラウ・ソラスをスラッシュして宰相邸への道を開いた。
そして女王様筆頭にルーグ騎士団が突入して宰相邸を制圧、奴隷にされていた人達は保護された。
あと、流石に人手が足りなくなってきたので四次元倉庫に入れっぱなしだったゴリアス軍やその他の騎士団の皆さんも出して手伝わせた。
若干トラウマっぽいのが植え付けられていたみたいだけど、女王様や先々代国王の姿を見た途端に気を引き締めて命令に従っていった。
それとすっかり忘れたけど、遺跡に来る時に一緒に連れて来た宰相と摂政――遺跡に着いてからは邪魔なので四次元倉庫に放り込んでいた――の身柄も一緒に渡しておいた。
「あなた!!」
「おまえ!!」
兎にも角にも、夫婦は無事に再会した。
そして今度はファル村に向かってスラッシュ!
寝るのが早い農村だったけど、レミは丁度温泉に入りに行くところだったらしくすぐに見つかった。
そして―――
「パパ!!ママ!!」
「「レミ!!」」
「ウエエエエエエエン!!」
バラバラに引き離されていた一家は再会を果たしたのだった。
その光景に、何事かと集まってきた村人達も感動して涙を流した。
俺が開けた穴越しに見ていた女王様達も涙を流した。
先代皇帝はドーウィンに通じている穴に先々代国王を放り込んだ。
俺を見つけたアンナちゃんが俺に抱きついてきた。
これってラッキー?
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こうして、エーベル皇子救出から始まったゴリアス国での長い1日は死人を誰も出さずに終わった。
エレイン達に関しては罪状が重すぎるし多すぎるのでその日の内にドーウィンに運んで投獄し、騎士団が捜査を進めてから裁判にかける事になるそうだ。
勿論、それまでの間に他の仲間が助けに来るかもしれないので警備は厳重に、俺も定期的に様子を見に行く事になった。
奴隷にされていた人達についても、騎士団が事情聴取をした後、しっかりと賠償を保証して故郷に帰すことになった。
もっとも、故郷に送るのは主に俺の仕事になったんだけどな。
ちゃんと報酬ももらえたから俺はOKだったけど、この元奴隷さん達の大半が新大陸出身だったってことで、新大陸の国家と一悶着が起きたりするんだけど、それはまた後で。
さてと、今日はもう風呂に入って寝るか!
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――――ピロロ~ン♪
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『ムリアス公国現大公保護される』
ムリアス公国現大公であるルイ=A=ムリアスが辺境の村で発見された。
首都リュミエールから南東の外れにあるラック村において、魔獣退治の依頼を受けて滞在中だった冒険者が村の外れの小屋の地下から人の呻き声が聞こえるのに気付き、村長と共に地下を調べるとそこにはリュミエールに居る筈の現大公が監禁されていた。
発見された大公は命に別状はないが監禁用に使用された魔法具の副作用により体力が落ちていた為、現在は村長宅で村の薬師から治療を受けている。
首都への連絡は村長の息子が一番近い町まで馬を走らせている為、まだ数日はかかる模様。
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ゴリアス編完結です。
次回からはしばらくのんびりとした話を書いていきたいです。
他には過去編とかかな?
登場人物とかも整理しないと。