第140話 ボーナス屋、神に会う
神降臨!!
――――野生の太陽神ルーが現れた!
→戦う 跪く 追い払う 逃げる 無視する
って、違う!!
何で神様が俺達の前に降臨してるんだよ!?
しかもなんだか軽い!
「「「ハハァ―――――!!」」」
信仰心の厚い人達が跪いた。
なんか、イスラムの礼拝シーンみたいになってる。
まあ、あれだけ後光みたいなのと一緒に桁違いなプレッシャーを放っていればそうなるか。
俺は何故か平気だけど。
そんな中、先代皇帝と先々代国王だけは軽く片膝をついて姿勢を低くするだけで頭はルーを見上げていた。
「―――畏れながら、貴方様はジーア教の聖典に名を残せし神王ルー様であられますか?」
『まあな~♪普通に話してくれて構わないYO。今日はプライベートで来てるからな。』
プライベートで神降臨かよ。
あ、後光っぽいのが消えた。
そして金髪碧眼のイケメン神様は軽いノリで喋り始めた。
「――――それにしても、この短期間で俺らの宝を目覚めさせるとはな?しかも先代の剣なんか売りに出されているし(笑)」
「何しに来たんだよ?」
「ん~、単に直にお前達の顔を見たかったってのもあるけど、俺らがウッカリ残してしまった遺産のせいで面倒事が起きているようだから賠償をしにかな?」
見た目通りの若者風の口調で話すルーに、俺は特に敬語を使わずに話していった。
ちなみに、試しに《ステータス》を使ってみたらこうなった。
【名前】『光の神王』ルー
【年齢】16299 【種族】神(ダーナ神族)
【職業】太陽神 神王 【クラス】芸達者な神 永遠の美男子
【属性】光
【魔力】????
【状態】正常
【能力】――閲覧不可――
【加護・補正】――閲覧不可――
【BP】????
流石に《ステータス》は神様相手ではあまり効果が無かったみたいだ。
それはそうと、賠償に来た?
「賠償って?」
「ほら、《奇跡の書》!」
「ああ!あれ!」
《奇跡の書》、それは俺がこの世界に来る原因となった異世界人を召喚するアイテムだ。
アンナちゃんが俺を召喚するのに使ったのは、今は俺の四次元倉庫の中にしまってある。
前にとある龍王から常に持っておくようにってアドバイスされていたからだ。
―――――日本に帰る時にはこれが必要になるよ~♪
って感じに。
「あの欠陥品のせいでかなりこの世界が乱されたし、お前達も帰れなくなったからな。だから処分ついでに、お前に掛かったロックを解除しようと来たわけさ!持ってきているだろ?」
「ああ。」
俺は四次元倉庫から《奇跡の書》を出す。
「懐かしいな~。ホイッと!よし、これでお前のロックは解除されたぞ!」
「早いな。」
どうやらこれで俺に掛かっていたロック、この世界から出られなくなる制限が解除されたようだ。
あの捨駒勇者達との戦いの後に聞いた話通りだな。
――――神様に会えたらロックは解除してもらえるよ~ん♪
あいつの言っていた話は本当だったみたいだな。
喋り方のせいで、半信半疑だったけど。
そういえば、こんな事も行ってたな。
――――『四至宝』をコンプしたら会えるよ~♪
コンプしなくても会えたけどな。
「帰る時はよく来ている応龍の孫達にでも頼めばいい。俺としては、ちょくちょくこっちに来てくれると嬉しいんだけどな。まあ、どの道1回は向こうに戻ったほうがいいな。(お前の故郷の神達からクレームが沢山来てるし脅されてるし・・・。)」
「応龍の孫・・・って、銀洸や銀耀のことか?」
「そうだ。あいつらの爺さんは、お前の世界の龍神の1柱、応龍だからな。」
あいつら、龍神の孫だったのか。
そういえば、前にそんな話を聞いた事があったな。
「後は・・・そうだ!ここの『太陽の地下迷宮』の隠し階層を開放しよう!今後も存分に楽しんでいってくれ!」
「お前、絶対ゲームに嵌ってるだろ!!」
あのクエストといい、この世界の神様達は日本のサブカルチャーにドップリ染まっていってる気がする。
「――――さて、俺も長くは現世には居られないし、さっさと用を済ませてくか。」
そう言うと、ルーは拘束されているエレイン達の方を振り向いて近付いていった。
おい、見張りが土下座していて見張りの意味がなくなっているぞ!
「「「―――――ッ!!」」」
「お前ら、色々と好き勝手にやってくれたな?」
ルーの口調が急に重みを増した。
さて、天罰でも与えるのか?
「死に損ないのジジイに伝えておけ。これ以上馬鹿な真似を続けるなら、次は俺と俺の息子が全てを潰すぞってな。ああ、またウッカリ矢に当たって死なないように気をつけろっても言っておけ!まあ、お前らがジジイ達の所に戻れたらの話だがな。」
「「「――――――。」」」
エレイン達はルーに一言も話すことが出来なかった。
“ジジイ”って、誰のことを指してるんだ?
「コイツラの処分はお前達に任せる。」
ルーがそういうと、先代皇帝と先々代国王は頭を下げて了承した。
現女王は・・・ポカンとしてるな。
そしてエレイン達と話し終えたルーは、俺達をニッコリと見つめながら再び後光を放ち始めた。
『では、俺はそろそろ失礼する!我が愛しき人間達よ、神に全てを委ねず、各々の意思で生き続けよ!これはささやかな贈り物だ!』
ルーの全身から放たれた光は周囲一帯を照らしていく。
なんだか身も心も温かくなってきたな。
周りを見ると、ロビン君達の所々破損していた装備が新品同然に直っている。
というか、もっと上質になってる!?
『ではサラバなり~~~~!』
こうして、この世界の神の王様はあまり緊張感も残さずに去っていった。
今更だけど、本当に軽いよな。
って、その他大勢は何時まで土下座礼拝やってるんだ!!
--------------------------
――ムリアス公国 首都リュミエール――
「・・・去ったか。」
太陽神ルーが現世から去ったのと同時刻、ムリアス公国に戻っていた『創世の蛇』のブラス=アレハンドロは神の気配が消えたのを遠くから感じ取っていた。
「ブリューナクの所有者選定の為か、それとも自身を祭る聖域を侵した鉄槌を下しに来たのか――――。制約の範囲内の行動ではあろうが、よもや神王が現世に降臨するとはな。」
日が沈み、すっかり夜闇に包まれた首都の大通りを歩きながらブラスは独り言を呟いていた。
既にほとんどの店が閉じており、未だに灯りが灯しながら営業しているのは酒場や冒険者ギルドだけだった。
「・・・エレインは《色欲》から解放されたか。」
太陽神が降臨するより少し前に感じた気配、自分の弟子に憑依していた大罪を司る魔王の残滓が消滅したのはブラスも感じ取っており、彼はその事に安堵していた。
「それでいい、お前のような汚れきっていない若者は闇の中では邪魔でしかない。こちら側とは縁を切り、過去を捨てて生きるといい。」
安堵しつつも、その表情は何処か寂しそうだった。
「・・・・・・。」
嘗て、ブラスが『創世の蛇』に入るよりも前、彼には愛する女性とその女性との間に生まれた娘がいた。
当時から裏仕事をしていた立場上、結婚こそしてはいなかったがそれなりに幸せに暮らしていたが、今は女性も娘もこの世にはいない。
愛した女性はブラスが留守にしていた隙に凶弾に撃たれて亡くなり、まだ幼かった娘は神隠しにあったようにいなく消えた。
それが彼の時間で120年程前のことだった。
その間に彼は『創世の蛇』に入り、幹部補佐官になった。
彼はこの世界に封印されている『四至宝』回収の任を受け侵入した。
「・・・・・・。」
ブラスは頭には、先日であった龍神・応龍の言葉が甦っていた。
――――3年前の冬じゃ、流行り病で死んだそうじゃ。
「・・・くだらない。全て捨てた過去だ。」
頭を横に振り、ブラスは人通りのない裏路地に入ると一瞬で空に向かって跳躍した。
そして宙を蹴り、北に向かって飛んでいった。
「―――最後の『至宝』は今のムリアスには無かった。なら、今ではない嘗てのムリアスを調べるだけだ。」
そしてブラスは北へと飛んでいった。
数百年前、当時のムリアス公国から聖職者達の力で独立し、今では大陸中に信徒を抱える大宗教の総本山。
王でも貴族でもない、神の代弁者達によって治められた神聖なる国家。
――――聖国へ。
ご意見、ご感想お待ちしております。
評価もしてくれると嬉しいです。