第133話 ボーナス屋、堕天使と戦う
《勇者之魔法》及び《勇者之武術》の共通する特徴は、自分以外の魔力やエネルギーを自身の魔法や武術にプラスする事ができるという点だ。
所謂、ミナ〇インや元〇玉みたいに仲間のパワーを集めて大技を放つのに少し似ている(?)かもしれないな。いや、似てないか?
ただ、あれらはあくまで仲間の、つまりは生物が保有する内部魔力を集めて使うが、俺が使う《勇者之魔法》とかは生物以外の魔力、つまりは大気中や地中が持っている自然魔力をも取り込んで力を増大させたり出来る訳だ。
どっちかというとナ〇トの仙術にも近いか?
それは兎も角、俺は自分の魔力だけじゃなく周囲に存在する魔力も使って《閃光剣舞》という新技を使った訳だが、これは予想以上に威力がデカかった。
考えてみれば、俺が今いるのは魔力が外よりも異常に濃いドルドナ遺跡の中だ。
つまり、俺の攻撃は俺の想定以上の威力を発揮してエレインの攻撃だけでなく、エレイン自身や彼女の仲間達もついでに巻き込んでいった。
「あああああああああああああああああ!!!!!」
「エ、エレイン様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐわああああああああああああああああ!!!」
・
・
・
どんだけ凄かったんだろう。
多分、ソニックブーム並の衝撃や速度はあったんじゃないか?
うわあ、敵全員が向こうの壁に叩きつけられているよ・・・。
「シ、シロウ殿!危ないじゃないですか!」
「あ、ゴメン!!」
ロビンくん達もビックリして腰を抜かしかけたようだ。
取り敢えず見方が巻き込まれる被害は無かったけど、次からはもっと慎重に力の分配をした方が良さそうだな。
この遺跡の中だと想定以上に威力が上がってしまう。
「――――――《冷凍光線》!!」
「うおっ!!」
ちょっと余所見をした途端、正面から無数のレーザー攻撃がきた。
だけどクラウ・ソラスの効果なのか、自動的に俺の周りにバリアが発生してレーザーを全部弾いていった。
弾かれたレーザーが壁や床、天井に当たって周囲を一瞬で凍結させていく。
幸い、団長や女王達は団長と一緒にいる精霊に護られているのか全員無事だった。
「・・・結構強めに撃ったんだけど。流石は『至宝』と言ったところかしら?」
エレインは冷ややかな声で喋りながら再び俺の前に立ちはだかった。
着衣の所々は破けたりしているが、それ以外には目立った損傷も無く無傷だった。
こいつ、もしかしてダニール達よりも強い?
これは早々に俺の《善行への特別褒賞》で無力化させた方がよさそうだな。
ちょっとズルいかもしれないけど、これが俺の戦い方だ♪
「させないわよ。」
「うおお!?」
一瞬で間合いを詰めてきやがったぞ!!
俺が《善行への特別褒賞》を起動させようとした直後、エレインは一瞬で間合いを詰めて水の剣で斬りかかってきた。
そこからは剣と剣と戦い。
俺とエレインは常人では視認できない速度で剣戟を繰り広げていく。
《勇者之魔法》で身体能力を無詠唱で底上げし、《勇者之武術》や《闘気術》、そして〈勇者専用戦闘技能知識〉をフルに発揮してクラウ・ソラスを振っていく。
《闘気術》は簡単に言えば漫画やアニメでよくある“気”を操る術のようなもので、魔力の代わりに精神力や生命力を消費して波○拳やカ○ハメ波みたいな技を使うものだ。
ただし、使いすぎると廃人になったり、突然死したりするリスクがあるから初心者は実戦では使わない
方がいいらしい。
「《グラビティスラッシュ》!!」
「――――ッ!やるわね!」
「はああああ!!」
「クッ・・・!!」
剣戟は俺の方が押していた。
クラウ・ソラスの効果もあって身体能力がかなり上昇しているからエレインよりも速く動けるし、手数の方もこっちが上回っている。
けど気のせいか、相手はまだ本気を出していないよう気がする。
「《天地十文字剣》!!」
「クゥッ・・・!!」
勇者っぽい技を決めてやった!
エレインはまた奥の壁に激突、俺はさらにそこへクラウ・ソラスで集中砲火をしていった。
「《フレイムブラスト》!!《エアロブラスト》!!《ホーリーブラスト》!!《グラビティブラスト》!!」
只でさえチートな威力の魔法をクラウ・ソラスの力で更に強化して連発する。
今度はちゃんと周りも見ながら撃っているからロビンくん達も巻き込んではいない。
というか、ロビンくん達の方はかなり優勢になっているな。
きっと、俺のさっきの《閃光剣舞》の巻きぞいで他の敵が大ダメージを受けたせいだろう。
向こうはロビンくん達に任せても大丈夫だろう。
元チームバカ皇子も頼りになるレベルだし、ルーグ騎士団も(勝手に)パワーアップしているし、何よりこの国の精鋭達だ。
俺はエレインに集中すればいい。
取り敢えず、更に大技をぶつける。
「《フォースエレメントバースト》!!」
クラウ・ソラスから虹色っぽい光線を放ち、エレインに命中すると同時に轟音を上げて爆発した。
“火”、“土”、“風”、“水”の4属性を同時に放つ攻撃だ。
その威力はブラスト系よりもずっと上、上級魔法で勇者だからこそ使える魔法だ。
もし、この遺跡最深部の部屋が十分に広くなければ敵味方関係なく全員吹っ飛んでいたのは間違いない。
それほどの爆発が今、俺の目の前で起きている。
「ハァハァ・・・これでどうだ?いや、今の内に能力をリセットしておくか。」
俺は今度こそ《善行への特別褒賞》を起動させてエレインの無力化を始める。
何故かは知らないけど、エレインのBPはマイナスじゃないからマイナスリセットは使えない。
仕方ないのでオールリセットだけをやっておく。
「よし、成功・・・・・・」
これで敵のボスは倒した。
そう思おうとした瞬間だった。
「『あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』」
突然、頭の奥にまで響く程の絶叫が聞こえ始めた。
それだけじゃない、エレインがめり込んでいる奥の壁から今まで見た事ないほどの禍々しいオーラが溢れ始めた。
「おい!!何が起きている!?」
「いや、俺に訊かれても・・・。」
団長が俺の横に飛んできた。
そういえば、団長は何時の間にか普通に宙を飛んでいるけどどうやったんだ?
『これは・・・・少々厄介なことになったのう。』
精霊が険しい表情で黒いオーラを見つめながら呟いた。
厄介そうなのは見れば分かるけど、あれって・・・?
「ああああああああ・・・・!!駄目、抑えきれなぁ・・・!!」
エレインの様子は明らかに変だ!
いや、これって昨日のゴーレムが巨大怪獣になった時に似ている・・・?
よく見ると、ロビンくん達と戦っているエレインの仲間達も慌てている。
「『あああああああ!!!』」
どこかダブったような呻き声とともに黒いオーラは収束していく。
そして現れたのは、背中から6枚の黒い翼を生やしたエレインだった。
おいおい、ボス戦でお約束の第2形態か?
とにかくステータスを確認だ!
【名前】エレイン=チャーチル
【年齢】24 【種族】ハーフ(人間+堕天使)
【職業】魔法戦士 工作員 指揮官 【クラス】堕ちた女戦士
【属性】メイン:闇 水 氷 サブ:風 土 火 雷 空
【魔力】5,800,000/5,800,000
【状態】堕天使(悪魔)化 半魔の呪い(大) 憑依
【能力】?????(Lv4)
【加護・補正】物理耐性(Lv1) 魔法耐性(Lv4) 精神耐性(Lv1) 闇属性無効化 水属性耐性(Lv4) 氷属性耐性(Lv4) 風属性耐性(Lv3) 土属性耐性(Lv3) 火属性耐性(Lv3) 雷属性耐性(Lv3) 空属性耐性(Lv3) 全状態異常無効化 堕天使の血 混血児 竜殺し 色欲の呪縛 魔王????の加護(?)
【BP】250
「あれ?」
さっきリセットした筈なのに補正が一部復活しているし、能力もよく分からないのがあるな?
けど、代わりに見えるようになった部分もある。
どうやらエレインは人間と堕天使のハーフらしい。
呪いの抑制がなくなって悪化しているし、何かに憑依されているようだけど何にだ?
というか、魔力が全回復している上に増えてないか?
『ハァハァ・・・・ギリギリだったわね。まさか、このような事になるなんて・・・私の認識が甘かったって事かしら?』
「お前・・・・!」
『・・・見ての通り、私は半魔、堕天使・・・いえ、悪魔と人間の両方の血を引く者。それ故に様々な問題を抱えていたのだけど、貴方の固有能力の影響で封が解けてしまったみたいね。』
俺のせいかよ?
あ、もしかしなくてもエレインは呪いを自身の魔法か何かで抑制していたけど、それも全部リセットされちゃったから呪いが暴走した・・・ってことか?
『――――けど、今はある意味好都合・・・といっても、ここで戦うのは流石に不利になりそうね。場所を変えましょうか?』
「――――――ッ!」
俺は警戒してクラウ・ソラスを構えた。
だけどエレインは俺の方は見向きもせず、部屋の天井を見上げると右手を上に掲げた。
『――――《堕天使の光槍》!!』
――――ズドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・・・!!!!
エレインが掲げた右手から発射されたそれは、俺達でも破壊できなかった遺跡の天井を易々と貫通させていった。
おい、まさか地上まで貫いたのか!?
『さあ、地上に行きましょうか?』
「断る!!《ホーリーブラスト》×20!!」
『!?』
態々敵に有利な場所へ移動するほど馬鹿じゃない。
俺はエレインに光属性をたっぷりお見舞いしてやった。
どうやら悪魔に近いッポイし、効果は抜群だろう。
『――――――甘いわよ。』
直後、俺の周囲が闇に飲み込まれていった。
『《堕天の領域》。』
感想、御意見をお待ちしております。
評価もしてくれると嬉しいです。