第130話 ボーナス屋、ドルドナ遺跡を攻略する5
――ドルドナ遺跡 地下100階(最下層)――
エレイン達は遺跡の最下層に到達し、『至宝』が封印されている最深部を目指していた。
「大分距離を詰められてきたわね。階段の封鎖はどう?」
「95階以降の階段全てに施しましたが、大した時間稼ぎにはならないかもしれません。敵はフィンジアスの『至宝』を使っているでしょうから。」
「そうね。『四至宝』の中でブリューナクと同じ武器の『至宝』、完全な状態ではなくてもその力は未知数、彼らが最下層に着く前に儀式を始めるわ!」
「「「ハッ!!」」」
そして彼女達は最下層の最奥へと進んでいった。
途中、ミスリルゴーレムや上位竜等、高位の魔獣に襲われもしたが、それも彼女達を倒すには力不足なものばかりだった。
エレインを含めた5人は『創世の蛇』の正規メンバーであり、同時にこの世界の出身者でもある。
この世界で異世界人が動けば神を含めた様々な勢力に気付かれ干渉されてしまうが、この世界の人間なら、問題行動を起こしてもその世界の問題でしかなく、神も無闇に直接干渉することは出来なくなるのだ。
あくまで、直接にはだが。
「――――この扉の向こうが最深部ね。」
早足で5分ほどでその場所へと辿り着いた。
何かの紋章が刻まれた、巨人が通るかのような巨大な扉がそこに会った。
「女王を。」
「ハッ!」
女王ミリアムを抱えた女性が扉の前へと寄る。
エレインは気絶したままのミリアムの右手に触れ、一本の指先を爪で軽く切った。
そして血が滲み出始めたミリアムの手を扉に触れさせた。
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・
「開いたわ。」
ミリアムの手が触れた直後、重厚な扉はやはり重音を上げながら開き始めた。
『ゴリアス王家の血』、それが最深部の扉を開くために必要な鍵の1つだった。
「行きましょう。」
扉が完全に開き終えるのを待たずに彼女達は最深部へと足を踏み入れていった。
「―――――これは凄いですね!」
「なんて高密度の魔力なんだ!」
中へと入ると、そこは床も壁も天井も、部屋の全てが純白で彩られた部屋だった。
そして今までにないほど魔力の濃い空気、それはダーナ大陸で生まれ育った者にとっては異常としか思えないほどの濃度だった。
「・・・あれが『四至宝』の1つ、『貫く光』。」
エレインは部屋の中央の台座に視線を集中させた。
部屋と同様に純白のその台座の上には、まるで台座と一体化した彫刻のように1本の槍が刺さっていた。
人の丈ほどあるであろうその槍は全体が純白で、台座に突き刺さっている刃の部分は五つ又に別れていた。
「すぐに儀式を始めるわ!保険も含め、“鍵”を台座の前へ!」
「「「ハッ!!」」」
台座を囲む様に気絶した3人の少女が並べられ、エレインは右手で何かの印を結ぶかのように動かしながら詠唱を始めた。
だが、その詠唱は5秒と続く事は無かった。
「「「―――――――ッ!!」」」
彼女達の間に一陣の風が走った瞬間だった。
「貴様らああああああああ!!!陛下から離れろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
真上から大量の炎を纏った男が現れ、その手に握った剣から大小千を超える数のの火の鳥を放った。
「《耐炎防御盾》!!」
エレインの部下の1人が咄嗟に魔法を発動させて火の鳥の群を受け止めていった。
火の鳥達は相手の防壁に激突すると、自身を個性するエネルギーを爆発させて防壁ごと相手を破壊しようとする。
火の鳥1羽1羽の(自爆の)威力は、相手にとってはそれほど高くは無かったが、1000羽を超える数での猛攻に次第に押され始めていった。
「――――お前は『竜殺騎』!!」
「バカな、お前達はまだ・・・・」
「―――《物体転送》!!」
「「「!?」」」
別の方向からの詠唱の声に驚き、同時に何の魔法かを理解した4人はすぐに台座の方へと視線を向けたが、台座の周りには誰の姿も無かった。
真上から攻撃してきたルーグ騎士団団長に気を取られた隙を突かれ、彼らは重要な“鍵”を奪われてしまったのだ。
「――――――来たわね。」
そんな中、1人冷静なままのエレインは、先程自分達が通ってきた扉の方を見つめ、そこに立つ1人の少年の姿を凝視した。
その少年は光り輝く剣を持ち、彼女に向かって大きく振り下ろした。
「――――クラウ・ソラス!!」
剣の刀身から数十本の光線が放たれ、それはエレイン達に向かって一斉に襲い掛かった。
士郎達は、ギリギリのタイミングでエレイン達に追いついたのだ。
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間に合った!!
本当にギリギリのところで間に合うことが出来た!
一か八かの賭けだったけど、どうにか成功したな。
「――――どうやって追い着いたの?」
「―――――!」
俺と同年代の女の子が俺をジッと見ながら問いかけてきた。
あの子が今回の黒幕か・・・。
名前は確かエレインだったな。
見た目は俺と同年代のようだけど、実年齢はどうなんだろうな?
「さあな。勝手に想像してくれよな。」
「そう。ならいいわ。」
あっさりと興味をなくしたみたいだ。
というか、クラウ・ソラスのビームが直撃したのに平然としてるな。
もっと威力を上げておけばよかったか?
「大方、特殊な転移系能力を使ったところでしょう。それよりも、その子達を返してくれない?」
エレインは俺の後ろでロビン君達に抱えられた女の子達を指差した。
「断る!!」
俺は即拒否した!!
誰がお前たちに渡すか!
というか、当たり前に自分の所有物みたいに言うんじゃない!
「なら、力ずくで返してもらうわ。」
「――――っ!?」
一瞬だった。
俺とエレインの距離は一瞬でゼロになり、彼女は俺の横を素通りして少女達に触れようとした。
「――――陛下に触れさせん!」
「!!」
「団長!!」
寸でのところで団長がエレインの前に現れた。
突然現れたからエレインもビックリしている。
フッフッフ、これぞ俺達が一気に最下層に辿り着く事が出来た団長の新能力だ!
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時は少し戻って、それは地下93階層に到達した直後のことだった。
「ああ!奴らが最下層の奥に着いてしまった!!」
「クソッ!」
地下90階以下の階層の広さに苦戦している間に、敵が最深部の手前に到達したと報せが届いた。
折角ここまで来たのに、このままだと捕まっている女王達の身が危ない!
「一気に転移できればいいのですが・・・。私の転移は行った事のある場所か、知っている人が居る場所にしか転移できませんから・・・。」
「逆に言えば、最下層に殿下と面識のある御方が居れば瞬時に移動できるという事ですか。」
「けど、ロビンくんはこの国の女王には会った事がないんだろ?」
「はい。」
「クッ!俺にもそんな魔法が使えれば・・・!!」
団長は苦渋の色を浮かばせていた。
この中で、向こうに知り合いがいるのは団長達ルーグ騎士団と、幼馴染が捕まっているエーレ兵のサイだけだからな。
俺の能力で転移系魔法を与える事は出来るけど、あれはすぐに使いこなせる訳じゃないからな。
他にこの状況を使いこなせる好都合な能力があれば・・・・・・あ!
「そうだ!!」
思わず声が出てしまった。
そうだ、無いなら創ってしまえばいいんだ!
「突然声を上げてどうしたんだ?」
「団長、名案があるんだけど――――――」
そして俺は団長に俺の能力を簡潔に説明した上で、俺の《善行への特別褒賞》の〈固有能力創作〉を使って団長に新たな能力を与えた。
最初は「知っている人の場所に瞬間移動する」で捜索したが既に重複していたので、騎士らしく「何時でも何所でも主君の下へ障害無視で瞬間移動し、主君の身に危険が迫っている時は自動で瞬間移動する能力」を創作した。
その結果、団長は新たに《騎士道術-空-》を110ポイント消費して手に入れた。
念の為、〈空属性適正〉も与えておいた。
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そして現在に至る。
団長が真っ先に最深部へと瞬間移動し、その直後に今度はロビンくんが団長を目印に俺達全員を転移させたのだった。
「貴様が賊の頭だな!先王陛下の件も含め、洗い浚い聞かせてもらう!!」
「・・・できるのかしら?」
「燃え散らせ――――《天翼の焔剣》!!」
団長の声とともに爆発が起きた。
だけどその直前にエレインは避ける。
周りを見ると、騎士達が他の敵を囲み始めている。
さあ、ボス戦の開始だ!
――――ピロリン♪
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From:現役のルー
Sub:(緊急)女王ミリアムを救え! Part4
「(緊急)女王ミリアムを救え! Part3」達成おめでとう!
報酬は現時点をもって支払われた。
『四至宝』を狙う黒幕達を倒せ!
報酬;クリアメンバー全員にBP+100、若干名に《太陽神ルーの加護》
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・・・ルー様、ノリでクエスト出さなくていいから。
ボス戦開始です!
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