第119話 ボーナス屋、話し合いをする
俺の目の前にはゴリアス国最強騎士だというミハエルという男が立っている。
何度見ても騎士と言うよりは不良の類にした見えない。
だが強い!
不良だけどとにかく強い!
「お前らの技だか魔法だか分かんねえ力は見切った。黒眼のガキのは光に当たらなきゃ消えねえ。金髪の方は動いている奴には使えねえ。そうだろ?」
俺達の魔法と必殺技の弱点も見抜かれちまった!
さあ、どうする俺!!
「――――シロウ殿、彼と話し合いをしましょう。」
「え?」
「はあ?何言ってんだお前?」
「先程までの剣戟でこの方が信用できる方と判断しました。洞察力も優れているようですし、何より噂に違わない実力者です。味方になってくださればとても心強いです!」
「・・・・・・。」
騎士の方は訝しげな目でこっちを見ているが攻撃してくる様子はない。
確かにステータスには怪しい点は無かったし、ゴリアス側の味方がいるとかなり心強いよな。
相手は1人だけだし、話すだけ話してみるか?
「そういう訳で、私達の話を聞いていただけませんか。『ルーグ騎士団』シルヴェスター団長殿?」
「先に手を出しておいて何を・・・」
「女王陛下の御命に関わる話です。」
「聞こうか!」
「切り替わり早っ!」
一瞬で不良騎士からイケメン騎士にチェンジしやがった!
誰だよアンタ!?
「本題に入る前に、まずは突然の非礼の数々を謝罪します。私はファリアス帝国より来ました、ロビン=W=ファリアスと云います。」
「――――――!帝国の皇族か!?」
「はい。後日、帝国から正式に発表があると思いますが――――――」
この後は長くなるので省略だ。
ロビンくんは自己紹介をした後、自分達がゴリアスに来た目的とその背景、ダーナ大陸全土で暗躍しているであろう『創世の蛇』の存在などを簡潔に説明していった。
『至宝』についてはまだ話さないようだ。
さっきまで不良っぽかった騎士ことシルヴェスター団長は心当たりがある様な事を呟きながらロビンくんの話を聞きいっていった。
それにしても、この団長、本当に強かったな。
スペックだけだったら俺も負けてないけど、やっぱ経験の差ってヤツなのか?
そんなのと渡り合ったロビンくんも凄いよな。
昨日だけでどれ位強くなっただろうな。確かめてみるか。
【名前】ロビン=W=ハワード
【年齢】17 【種族】人間
【職業】冒険者(Lv75) 魔法騎士(Lv40) 転移術師(Lv50)
【クラス】真・第三皇子
【属性】メイン:空 サブ:風 水
【魔力】2,381,200/2,930,000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv2) 防御魔法(Lv2) 補助魔法(Lv3) 特殊魔法(Lv4) 剣術(Lv2) 槍術(Lv3) 体術(Lv2) 虚空の銀槍
【加護・補正】物理耐性(Lv2) 魔法耐性(Lv2) 精神耐性(Lv3) 空属性耐性(Lv3) 風属性耐性(Lv1) 水属性耐性(Lv1) 英雄神プイスの加護 職業補正 職業レベル補正
【BP】254pt
『真・第三皇子』って何だよ?
それにしても、ロビンくんも大分ポイントが貯まってきたな。
後で交換するかどうか訊いてみようかな?
「チッ!そういう事か!合点がいったぜ!!」
どうやら話が終わったみたいだな。
って、団長は不良モードに戻ってるし。
「帝国、王国、公国、そして今度はこの国ってことか・・・!あのバカクズどもなら嫌なほど有り得るな!」
「やはり、心当たりがあるようですね?」
「おおありだ!!」
やっぱ不良の方が素なんだろうな。
気にしないでおこう。
「あの三流摂政!野心家臭い貴族の癖に、どうやって成り上がりやがったと思ったら、国を滅ぼしかねねえ連中と組んでやがったのか!!」
「摂政というと、現女王陛下の?」
「あのクソ摂政!最近まで先王陛下からも相手にされない小物だったくせに、摂政になった途端に好き勝手しやがって!陛下の名を使って俺らをこき使ってるだけでも腹が立つってのに、陛下の身を得体の知れない連中に売り飛ばしていやがったとはな!只じゃすまさねえぞ・・・!!」
「あのう、とりあえず落ち着いてください。」
「はっ!これは失礼しました!ロビン殿下!」
またイケメンモードになった。
今更取り繕っても遅いけどな。
「今の話からすると、その摂政殿が怪しいとのことですが?」
「はい!殿下もご存知でしょうが、我らは本来、女王陛下の勅命にのみ従い、それ以外では独断での活動もある程度許されているのですが、現女王はまだ幼いという事もあり、大変不服ですが、現状での我らへの指揮権は(クズ)摂政閣下にあるのです。今回の警備も陛下の命ではなく、摂政閣下の命によるものです。」
「その摂政とは何者なんですか?」
「ゲイリー=E=マクダウェル、由緒あるマクダウェル侯爵家の現当主なのですが、先代までとは違ってあからさまに野心が強くて一族の顔に泥を塗りまくっていると陰で噂されている男です!先王陛下もその目の濁りを見抜き中枢から引き離していたのですが、その先王陛下が3ヶ月程前の地方視察の際に同行していた王妃様共々行方不明になったのを機に再び中枢へ戻り、現女王陛下の摂政となったのです!」
「先王陛下夫妻が行方不明!?」
ロビンくんは目を仰天させた。
考えてみれば、王位継承が行われたんだから先代の王様に身に何かがあったってことだよな。
けど、第二王子の情報にはその事は無かった筈だ。
誰かが巧妙に隠蔽したってことか。
ステラちゃんのお父さんも原因不明の病に罹っていたっていうし、絶対ダニール達が裏で仕組んでるんだろうな。
まあ、ダニールとアイアスは全能力を失って今は牢獄の中だけど。
「では!今回の戦争でゴリアス側が持ちかけてきた同盟の話は!!」
「それは先王陛下が健在だった頃からあった話です。元々、ゴリアス王家とファリアス皇家は縁戚関係にあったので疾うに結ばれていてもおかしくないのですが、そこはまあ、色々複雑な事情があったようなので今回ようやく正式に結ばれる事となったのです。」
「それを摂政殿が悪用したという訳ですか。」
「ええ、あの(クソッたれ)摂政が好い様に利用したんです!今日中に剣の錆にして・・・いえ、なんでもありません。」
今の、絶対摂政殺害宣言だったよな?
忠誠心が強いからなんだろうけど。
それにしても、帝国は貴族、王国は王弟と貴族、公国では大公の息子、そしてゴリアス国は摂政か。
奴ら、どの国でも有力者を利用しているんだな。
詳細はまだハッキリとしてないけど、どの国でも有力者を美味い餌で信用を得て国家の中枢部に近づいていったらしいな。
昨日の大怪獣の素体となった巨大ゴーレムも、ダニールが渡した技術書を元に製造されたようだし、ゴリアスでも似たような事が起きているんだろうな。
「――――それで、女王陛下はどうしておられるのですか?」
「・・・陛下はイルダーナに到着して以来、誰の前にも姿を見せておりません。私も何度も謁見を要求したんですが、(あの変態)摂政と(強欲)宰相に門前払いにされているのです。」
「それは・・・かなり不味いかもしれません・・・。」
おいおい、それって女王が消息不明ってことか?
奴らの狙っている『四至宝』の封印を解くには各国の王族の“血”が必要だ。
俺が持っている『光の魔剣』はステラちゃんのお祖母さんが封印を解いてステラちゃんの血で大分覚醒している。
ファル村で発掘された『戴冠石』はヒューゴが封印を解いた。
なら、ゴリアス国に眠っている『貫く光』の封印を解くにはゴリアス王家、つまり女王の血が必要となる訳だ。
そしてその女王が行方不明ってことは・・・。
「――――もう、『至宝』の封印が解かれてるんじゃ・・・?」
「少なくとも、封印場所が見つかった可能性は高いでしょう。」
「おい、何の話だ?」
そうだった。
団長には『至宝』の話はまだ話してないんだった。
教えるべきかな?
ロビンくんを見ると、肯いて返事をしてきた。
「実は―――――」
俺達は『至宝』について説明した。
実際に俺が持っているクラウ・ソラスを見せながら説明したからすぐに信じて貰えた。
まあ、大勢の人をさくさく消しちゃうんだから信じるよな。
「あのドクズ野郎おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ブチギレちゃったけど。
「あ、あのう、シルヴェスター殿?」
「今すぐ斬り捨ててやる!!!!!」
団長はブチギレたまま門の方へ猛ダッシュで走り始めた。
このまま一直線に摂政を斬り捨てに行くのか!?
あ、跳んだ!
「私達も追いかけましょう!」
「あ、ああ!!」
勝手に暴走されると不味いからとにかく止めないとな!
ついでにイルダーナの道案内を頼まないと!
ん、こんな時に神様からメールが届いてる。
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From:現役のルー
Sub:(緊急)女王ミリアムを救え! Part1
謎の組織に拉致されたゴリアス国の女王ミリアムを救え!
女王ミリアムはイルダーナ中央地区にある領主の館に居たようだ。
領主の館には領主一家が拘束され、悪の摂政と宰相一味が我が物顔で居座っている。
敵を一掃し、領主一家を救出した後に女王の手がかりを見つけよう!
報酬:クリアメンバー全員にBP+50、黄の魔石(中)
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ゲームかよ!!
というか、ヌアザに続いて別の神様までメール送ってきた!!
この神様、絶対日本製のRPGにハマってるよ!
しかも“Part1”って・・・続きがあるのか!?
・感想をお待ちしています。評価もしてくれると嬉しいです。