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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
番外編Ⅲ
119/465

第114話 Legend Of Ron 第二章 後編

 番外編、思ったより不人気な気がするのは作者だけでしょうか?

 とりあえず、第二章は今回で終わりです。

――ダーナ神暦1434年初冬 アルバ山脈頂上――


 上位竜ヴァイスグランツドラゴンに捕まったレオ、そして助けようとドラゴンに飛び付いたロン達はアルバ山脈の頂上に来ていた。


 普段は雲の中に隠れ、地上からは滅多に姿を見る事の無いそこは不思議な事に中腹よりも暖かい場所だった。



「何だ、ここは?」


「うう・・・ゴメン、僕のせいでロン兄達まで・・・。」


「気にするなレオ。」



 ロンはレオを抱きしめながら頭を撫で、当たりの様子を見渡す。


 そこは一言で言えば古代遺跡であり、中央部にはドラゴンが集めた少年少女達が集められていた。


 その上を、禍々しいオーラを纏ったドラゴンが円を描く様に飛んでいる。



『ギャオォォォォォォォ!!』


「ロン兄、空にヒビが!」


「あれは・・・!」



 レオが指差した先には空中に不自然に存在する亀裂が何本もあった。




――――バリッ!バリリッ!




 高い音を立てながら亀裂は数を増やしていく。


 そして亀裂からはドラゴンが纏っているのと同じ黒い靄が漏れだしていた。



『ギャオオオオオオオ!!』


「「キャアアアアアア!!」」


「「うわああああああ!!」」



 子供達が悲鳴を上げ、遺跡の上を周回していたドラゴンが子供達に迫る。



「させるか!」



 ロンは剣と魔法で挑むが傷一つ与えられない。


 シャルル達も加勢するが結果は同じだった。



  バキン!



「剣が!?」



 ロン達の剣はドラゴンの鱗に耐えきれずに折れてしまった。


 万事休すと思われた時、レオが前に出る。



「うわあああ!!兄さんに手を出すなああああ!!」


「レオ!!やめろぉぉぉ!!」



 ロンを護ろうと魔法で攻撃するレオ。


 ドラゴンの牙がレオに迫った瞬間、ロンはレオの体を突き飛ばして素手でドラゴンに立ち向かった。



「うおおおおおおお!!」


「ロン!!」


「に、逃げてください!!」



 そして、ロンの命が散るかと思われた刹那の出来事だった。



『――――面白そうな連中だな?』



 その声とともに、突然、空から火柱が落ちてきてドラゴンに襲いかかった。



『ギャオオオ!?』


「熱っ!」



 直撃こそしなかったが、ドラゴンは火傷を負って悲鳴を上げた。


 そして、何が起きたのか分からないロン達の前に彼は現れた。



『赤の伯父貴に言われて様子を見に来てみれば、随分面白そうな人間達がいるな?そこのガキ、その赤髪はヴァハの子孫か?』



 そこに現れたのは赤いドラゴン、それも竜種のような魔獣とは格が違う龍族だった。



「喋った?」


『俺の名はイグニス!焔の神龍にして、剣の番人!お前達の熱き心に惚れ込み、ひとつ賭けをさせてもらう!下を見ろ!』


「あれは・・・!?」



 神龍イグニスの視線を追ったロンは、火柱に破壊されてできた穴の中に奇妙な物を見つけた。


 それは錆びた2本の剣だった。



『そこの兄弟(・・)!その剣を抜き、あの竜を倒してみろ!』



 武器を失っていたロンとレオは迷うことなく錆びた剣を掴んで抜いた。


 すると、錆びた2本の剣は光を放ちながら一瞬で姿を変えた。



『賭けは成功か。その剣は『雷光の聖剣(カラドボルグ)』と『王位の聖剣(コールブラント)』だ。さあ、その力を俺に見せてみろ!』



 そしてロンとレオはそれぞれの聖剣でヴァイスグランツドラゴンに挑んだ。


 カラドボルグの雷とコールブラントの光、まだ使いこなせない力だったが2人は勝利した。


 直後、ドラゴンの死体から黒い靄が飛び出し、空中で浄化されるように消滅した。



「これは・・・!?」


『お前達が知るにはまだ早いことだ。それより、ここは人間が立ち入ってはいけない場所だ。さっさと他のガキどもと一緒にここから去れ!』


「待って!私には何がな・・・」


「おい!何、勝手に終わらせようとしてるんだ?」


『ゲッ!』



 そこに不機嫌なオーラを全開にした謎の男が現れる。


 男は片手に薬草を詰め込んだバスケットを持ち、空いた手には巨大な魔力の玉を浮かばせていた。



「――――死ね(・・)!」



 その後は生々しく、色んな意味での地獄絵図が広がった。


 こうして、ドラゴンに攫われた子供達には別のトラウマが植え付けられたのだった。



「――――ったく!俺がバカ神(下僕)どもからボッタくった聖剣(オモチャ)を勝手にガキ共にやるとはな!あ゛あ゛?何見てんだ?」


「「「ヒィィィィィィィィ!!」」」



 イグニスをボロ雑巾にした謎の男(・・・)はロン達を睨む。


 一瞬、全員が殺されると本気で思ったが、謎の男は泣きながら怯える子供達を見ると「チッ!」と舌打ちをし、今度はパチンと指を鳴らし、子供達の掌の上にお菓子を出した。


 呆然とする一同を気にも留めない謎の男は再度指を鳴らし、ロン達は一瞬でゴリアス国の首都であるドーウィンに移動した。



「ガキはさっさと家に帰るんだな。」



 その言葉を最後に、謎の男はロン達の前から姿を消した。


 その後、ロン達はゴリアス国中から攫われた100人以上の子供を救った(非公式の)英雄として国王と(非公式に)謁見する事になった。


 正体がバレるとマズイ人物がいるので、可能な限り変装して誤魔化した。


 尚、この事件の一切の情報はゴリアス国の面子が潰れるなどの諸々な事情で秘匿扱いされた。


 余談だが、ロン達がドーウィンに帰ってきたその日、ゴリアス国中の腐敗貴族達が誰か(・・)の憂さ晴らしの標的にされ、全財産を奪われた挙句、一族のほとんども道連れに100回近く死にかけた上に無傷のまま(・・・・・)全裸で縛られて国王の謁見の間に放置されていたらしい。





--------------------------


――ダーナ神暦1434年末 ゴリアス国 首都『ドーウィン』――


 それは年末で忙しい時の出来事だった。



「おい!聖剣を俺に渡せ!」


「帰れバカ!」



 ギルドに依頼の達成報告を終えたロン達の前にゴリアスの王子が現れて聖剣を要求してきた。


 だが、レオに言葉で一蹴された王子は顔を真っ赤にして剣を抜いて来た。


 ちなみに、この王子もドラゴンに攫われた子供の1人でレオと同い年である。



「聖剣はゴリアスの物だから、当然俺の物だ!」


「お前、王子の癖にバカだな!」


「何だと!?許さん!!」


「「ケンカは外でやれ(やりなさい)!!」」


「「痛い!!」」



 余りに五月蠅いのでロンとシャルルに殴られ、2人は猫のように持ち上げられながら外に放り出された。


 王子の護衛達はその光景に呆気にとられていた。


 その後、ケンカはレオの一方的な勝利で終わり、王子は泣きながら護衛と一緒に帰って行った。


 だがその翌日――――



「――――決闘だ!!」


「来るなよバカ!!」


「あのう、その節はありがとうございました・・・♡」


「誰?」



 懲りない王子はまたやってきた。


 ちなみに今度は、王子の双子の妹で兄と一緒にドラゴンに攫われていた王女も一緒にいた。


 王女はドラゴンを倒すレオの姿に一目惚れしていた。



「覚悟!」


「トゥ!」


「うわああああ!?」


「キャア~~~~!!レオ様~~~♡」



 ボロ雑巾になる王子と、黄色い声を上げる王女、その光景をロン達はお茶を飲みながら見守っていた。



「良い友達になれそうね?」


「そういえば、レオは同い年の友達がいなかったな?」


「王族は基本そうですからね。」



 ちなみに、この光景を木陰から王族秘伝の魔法で隠れながらゴリアス王(・・・・・)が見守っていた事に彼らが気付くのはもうしばらく後のことであった。


 こうして彼らはゴリアスの王子アラン、王女フィオーレと出会ったのだった。


 後に、フィオーレがファリアス帝国の皇妃、つまりレオの妻の1人(・・・・)になるのだが別の話である。









 余談だが、ロンとレオの持つ聖剣を狙う者は結構たくさんいた。


 その多くが「人攫いドラゴン事件」に関わった貴族関係者だったが、彼らは揃って痛い目を見た。



「クフフフ・・・これさえあれば・・・・・・ギャアアアア!!??」


「グギャアアアアアアアア!!??」



 聖剣には資格の無い者、特に悪意のある下衆が触れると天罰が落ちる機能が付いていた。


 ロン達がドーウィンに滞在する数ヶ月の間、聖剣を狙った者達は悉く痛い目を見てしまい、ゴリアスの政治機能に少々支障を来したのだった。


 勿論、聖剣を狙った連中は処罰された。





 今回はここまでです。

 ロンがイグニスと契約するのはもう少し後の話です。

 なお、「謎の男」が誰なのかは秘密です。あの人かもしれないし、あの人の息子かも知れません♪



 次回から新章スタートします!


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