第105話 ボーナス屋、ウッカリする
「守ってくれ!クラウ・ソラス!!」
大怪獣の攻撃に対し、俺は防御をイメージしながらクラウ・ソラスを前に突き出す。
クラウ・ソラスは光だし、俺達の目の前に光のバリアーを展開し、大怪獣の攻撃を正面から防いでくれた。
『――――何!?』
「よし!防げてるぞ!」
〈神器使い〉の職業補正のお蔭でクラウ・ソラスの使い方はある程度頭の中に入ってくる。
今のは“光”と“空”の属性を組み合わせた超強力なバリアーだ!
よし、次は攻撃だ!
「降り注げ!《輝く流星群の矢》!!」
魔力を流し込みながらクラウ・ソラスを振り、そこから千を超える光の矢が大怪獣目掛けて襲い掛かる。
光の矢は大怪獣にあたると爆発し、羽の方はハチの巣になっていった。
『『『ギャゴォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』』』
「ああ、また再生していくな~。」
「これじゃあ、何やっても意味ないんじゃないのか?」
折角与えたダメージもすぐに再生されてしまう。
このままじゃ、こっちの魔力が尽きてしまうな。
「シロウさん!」
「どうした、ケビン?」
そこに、ケビンがまた俺に何か言おうとして接近してきた。
「さっきも言おうと思ったんですけど、シロウさんの能力で、あの怪獣の力を使えなくする事ってできないんですか?」
「え?」
「シロウさんの能力って、コッコくん達みたいに人間以外の生物にも使えるみたいだし、もしかしてと思ったんですけど。」
「あ、あああああ!!」
そうか、その手があった!
俺、うっかりしてた!
言われてみればそうだった!
俺の能力は、人間以外の種族にもボーナスを与える事が出来るんだから、他の機能も使用可能であっても不思議じゃない!
前回の戦いで利用した〈強制オールリセット〉だって、あの大怪獣に使ったら、それだけで形勢は一気に大逆転できる!
あ、でも、ダニールも全開でこの機能を身をもって体験しているから何かしらの対策を打っている可能性もあるな。
けど、今はできる事を全て試してみるしかない!
「コッコくん、アイツにもっと接近してくれ!」
『ゴケェ~!!』
コッコくんは全身を輝かせながら大怪獣に向かって飛んでいく。
だけど、敵も黙って見ている訳がない。
『燃え尽きろ!!』
ダニールの声とともに、大怪獣は3つの口から極太破壊光線を撃ってきた。
『――――《紅蓮の破壊光線》!!』
直径20m以上の3本の破壊光線が襲い掛かる。
けど、そこはヒューゴ達の援護でどうにかかわす・・・というか、コッコくんがどんどん加速していくからそもそも掠りそうにもならなかった。
そして、援護してくれるのはヒューゴ達だけではなかった。
「ハハハハハ!!くらえ!《ライトニングブラスト》!!!」
「《トルネード》!!」
「《ブリザードブラスト》!!」
「《アクアキャノン》!!」
・
・
・
地上からはチームバカ皇子の面々が大怪獣に集中攻撃をしてくれている。
装備の効果だろうか、なんだか通常よりも魔法の効果が高い気がする。
けど、お蔭で接近する事が出来た!
「よし、起動!!」
【強制オールリセットモードを起動します。】
【対象者を選んでください。】
俺は迷わず大怪獣をリセットする。
勿論、魔力の消費は覚悟の上だ!
【対象者を選択しました。】
【残量魔力の51.6%を消費しますが実行しますか?】
約半分を消費する必要があるが、俺は迷わず実行を選択した。
「――――イケ!!」
直後、俺の中から大量の魔力が無くなっていった。
同時に、大怪獣の体は不思議な光に包まれていった。
『『『ギャ・・・ゴォォォォォォ・・・!!??』』』
『こ、この光はまさか・・・!!』
良かった。
どうやら、ダニールは俺の能力に対して何も対策は打っていなかったようだ。
陰謀張り巡らせていた割には間抜けだが、今は良しとしよう。
『『『ギャゴッ!!ギャゴォ!?』』』
大怪獣は破壊光線を出そうとするが出せないみたいだ。
よく見ると、大怪獣の全身を覆っていたオーラも消えて無くなっていた。
成程、今度からは強敵にはこの手で戦えば確実に勝てるな。
まあ、相手が対策を打ってなければだけど。
「今だ!全員で総攻撃だ!!」
「「「おお~~~~!!」」」
『クソッ!!舐めるな、ガキ共が!!!』
『『『ギャゴォォォォォォォォォ!!!』』』
大怪獣は突進してきた。
能力は失っても魔力やデカい図体は健在だから突進でもかなりの脅威だ。
それに、中にいる人はまだ魔法が使えるからか、まだ降参する気はないようだ。
「《グラビティブラスト》!!」
突進してくる大怪獣の胴体に重力砲を放ち、そのまま逆方向に吹っ飛ばす。
お~、胴体が一気に崩れていってるな!
オールリセットのお蔭で防御力も下がったみたいだ。
「――――って、まだ再生するのかよ!?」
喜んでいたら、崩れた部分が再生を始めた。
『ハッハッハ!!残念だったな!自己再生は能力ではなくシステムだ!生物の能力を封じる事は出来ても、機械の機能はどうにもできないみたいだな?』
あ、崩れた胴体の奥にダニール発見!
まだ余裕を崩してない。
『そして、能力じゃない攻撃も封じられないだろ?』
「何だと!?」
『『『ギャゴォォォォォォォ!!』』』
「うおおおお!?」
うわっ!火を吹いてきた!?
『知っているか?上位以上の竜の呼吸は、それ自体が武器になるんだよ!やれ、カクスドラゴン!!』
『『『ギャゴォォォォォォォ!!』』』
大怪獣が再び火を吹いて襲ってくる。
威力は数段落ちているみたいだけど、それでも十分脅威だ!
「コッコくん、避けるんだ!」
『ゴケッ!!』
『ハッハッハ!!そのまま焼き鳥になるがいい!!』
バカを言うな!
焼き鳥にはタレやネギが要るんだよ!
なんて言っている場合じゃない。
何か良い手は・・・・・・お?クラウ・ソラスから新しい魔法の知識が流れ込んできた!
なんてご都合主義なんだ!
けど、発動する為には5秒以上の時間が必要だ。
「――――《ウォーターウォール》!!」
『何!?』
「え!?」
その時、大怪獣を囲む様に水の壁が出現し、俺に向かってきた炎は壁にぶつかって消えた。
後ろを向くと、ケビンが全身に凄い量の魔力を纏っている。
あの体勢はまさか、上級魔法を使うのか!?
『邪魔な――――――』
「《グラビティプレス》!!」
ダニールはケビンを攻撃しようとするが、そこにケビンの《重力魔法》が襲い掛かって妨げる。
「シロウさん、大きな魔法を使うから離れてください!}
「わ、分かった!コッコくん!」
『ゴケッ!』
俺を乗せたコッコくんは大怪獣から離れる。
程なくして、大怪獣は力ずくで重力の拘束から抜け出そうとしていた。
だけどその時にはもう遅かった。
ケビンによる、上級魔法2連発が待っていたんだ。
「《深き紺碧の海の牢獄》!!」
一瞬だった。
大怪獣は一瞬で巨大な水の球体の中に閉じ込められ、身動きが出来なくなってしまった。
それは何所までも深い青、見ている俺も飲み込まれそうになるほど深い色をした水の牢獄だった。
スゲエ、あんな魔法、俺は知らないぞ?
『『『ガボボボ・・・・・・・!!??』』』
大怪獣は凄く苦しんでいる。
火の魔獣だからなのか、効果は超抜群だった。
そして、ケビンの次なる上級魔法が炸裂する!
「《天より降る裁きの雷霆》!!」
身動きできない大怪獣に、空から数百本の雷が襲いかかった。
「「「耳があああああああああ!!!」」」
大勢の人が同時に悲鳴を上げた。
勿論、俺達もだ。
果たしてケビンのステータスはどうなっているのか?
次回は士郎の新技炸裂か!?