第9話 ボーナス屋、狩りをする
俺は目の前のイノシシに、試しに《鑑定》を使ってみた。
【鋼牙大猪 ♂】
【分類】哺乳類型魔獣
【用途】肉は食用、骨や牙や皮は武器や防具の素材になる。
【詳細】食糧の豊富な山や森に生息する草食系の魔獣だが、時には人や小動物の肉を食べる場合もある。
基本的にオスの個体は単独行動を好み、狙った食糧を採ろうとする相手には容赦なく突撃して襲い掛かる。
骨や牙は強硬度の高く魔力を含んだ金属でできており、昔から名剣などの武器の素材として利用され、皮も耐久度の高い防具の素材として利用されている。
主に果実を好んで食べるため、その肉は極めて美味であり、上流階級に広く好まれている。
稀に、土魔法を使う個体も確認されているので注意。
なるほど、セレブも大好きな肉に、武器や防具の材料にはもってこいの骨や牙、それに皮か。
これは是非狩って試食するしかないな!
『ブオォォォォォォォ!!』
って、さっそく突進してきた!!
まずは防御だ!
「《ロックウォール》!!」
『ブオォォォォォォォ!!』
ドゴ―――――――ン!!
って、簡単に突き破った!
え~~~~と、こういう時は~~~~!?
あ、そうだ!!
「《落とし穴》!!」
『ブオッ!?』
ズド――――――ン!!
鋼牙大猪は地面に開いた大穴に真っ逆さま~~~♪
お~~~危ない危ない!危うくミンチになるとこだったぜ!
『ブルォォォォォォォォ!!!』
「あ、まだ生きてるよ!」
「凄く怒ってるよ・・・・・。」
チビッ子達が、何時の間にか穴を囲んで怒り狂った鋼牙大猪を見下ろしている。
お前ら、ホント行動が早いよな。
さて、とりあえずはこれで一安心だけど、どうやって止めを刺すかな?
10m位落ちた筈なのにまだピンピンしてるな~~~。
「勇者の兄ちゃん、あれどうするの?」
「ん~~~~~~。」
水攻めにして溺死させるか?それとも窒息死?焼死?
どれも肉がダメになりそうだな?
骨が金属っぽいから打撃にも強そうだし・・・・打撃?
「そうだ、この辺に重くて頑丈そうな石が落ちてないか探してくれるか?」
「「ハ~~~~イ!」」
「あったよ!」
「早いな!?」
おっ!思ったより重量感が凄いぞ、この石!?
取り敢えず俺は握った石に魔力を注ぎ込み《投擲》を発動させ、穴の底で暴れ続ける鋼牙大猪の脳天目がけて投げつける。
ゴ―――――――――――――ン!!
うわ!予想以上にいい音が鳴った!
『ブォ・・・・ォ・・・・・・』
鋼牙大猪はしばらく横にふら付き、10秒ほど経つと横倒しになってお陀仏になった。
思った通りだ。
いくら骨や皮が丈夫でも、肉や脳ミソは普通のイノシシと基本的に一緒だから頭部に強い衝撃を加えたら脳の血管がプッツンしてこの世からさよならだ!
《投擲》は投げる物体に込めた魔力が多いほど威力が上がる能力!
隕石程とは言わないけど、かなりの衝撃があったはずだからプッツンも1本や2本じゃないはずだ!
「勝利!!」
「「「わあ~~~~~~!!!」」」
その後、俺は穴を塞ぐついでに地面を隆起させて獲物を地上に押し上げた。
うん、これなら肉も傷んでないし、解体とかは村に戻ってからでいいかな?
「凄いです勇者様!鋼牙大猪は村の猟師さんでも狩らないですぐに逃げる程の魔獣なんですよ!それを簡単に倒すなんて、やっぱり勇者様は凄いんですね!!」
「いや~~~、それほどでも~~~♪」
ヤバ、鼻が長くなりそうだ♪
「お兄ちゃんスゴーイ!!」
「やっぱり勇者だ!!」
「へっへ~~ん!次は従者の俺が倒して見せるぜ!」
おいマイカ、俺の背後で隠れてた奴が何を言ってるんだ?
「さてと、とにかく本来の目的に戻ろうか。とりあえず、この辺りで食べられそうな木の実や植物とかをたくさん集めてきてくれ!ああ、植物の方は根っこや土の中に実が付く奴もあるから、それも一緒に持って来てくれ!」
「分かりました。皆もいいわね?」
「「「は~~~~い!!」」」
「よし!じゃあ、開始だ!」
パンと手を叩くと、チビッ子達はあちこちに散開していった。
さてと、俺も自分で探してみるか!
「とりあえず、この辺の果物から調べていくか。」
俺は周囲に実っている果物に《鑑定》を使ってみた。
【ファリアスオレンジ】
【分類】果物
【用途】生食用、香料の原料
【詳細】元は別大陸に自生していた原種のオレンジだったが、渡り鳥などが運んだ種がこの地で育ち、別品種へと変化したオレンジ。
香りが良く、少し酸味が強いが糖度も高いため人間だけでなく野生動物や魔獣の食糧にもなる。
【ファルグレープ】
【分類】果物
【用途】生食用、酒の原料
【詳細】ファルの森に自生する葡萄の一種。
生食用としても美味しいが、果汁を発酵させると上質な酒になる。
【ファルピーチ】
【分類】果物
【用途】生食用、薬用
【詳細】ファルの森に自生する野生の桃の一種。
糖度が高く、そのまま生食用として好まれている。
また、解毒効果や各種病に対する予防効果もある。
【ファリアスペア】
【分類】果物
【用途】生食用
【詳細】ファリアス帝国を中心に広く自生する野生の梨の一種。
果肉は甘く、果汁も多いが皮が硬くて厚いという難点がある。
皮の硬さが富裕層では不評であるため、食用とするのは平民層が多い。
へえ、結構いろんな果物があるんだな。
梨の方は皮に問題があるようだけど食べられるみたいだ。
他にも何種類かあるけど、そっちは酸味が強かったり味自体ないやつばかりだな。
ま、自生種なんだからそれは仕方ないか。
「勇者の兄ちゃ~~~ん!」
「お!ニールはもう何か見つけたか?」
「うん、大きな根っこの草があったよ!」
ニールが持ってきたのは根っこが見覚えのあるオレンジ色の植物・・・
あ、これってもしかして!
【ファルキャロット】
【分類】野菜
【用途】食用、薬用
【詳細】ファルの森に自生する野生の人参の一種。
香りが強いため生食には向かない。
昔は乾燥させて薬の材料にも使われていた。
おお!野生の人参か!
香りが強いってアレだな、子供に嫌われる要素の1つってやつだ!
ま、俺も生で食う気はないから問題ないか。
「よし!これは食べれるな!」
「えへへ♪」
「お兄ちゃん見つけた~!」
「わ、私も・・見つけた・・・!」
「お!ドンドン来たな?」
今度は何かの実に、葉っぱか?
とにかく鑑定だな。
【森胡椒】
【分類】野草
【用途】調味料、保存料
【詳細】主に森林地帯で自生する胡椒の一種。
辛味や香りが強く調味料として重宝されており、また、肉類を始めとする食品の長期保存のための保存料としても使われている。
群生地が限られている事から高値で取引されており、専ら富裕層でのみ使用される事が多い。
【ファルリーフ】
【分類】野草
【用途】食用
【詳細】ファルの森に自生する食用の野草。
生では食べづらいが、茹でると軟らかくなり甘味も増して食べやすい。
「ワオ!コショウじゃないか!凄いぞ!!」
「凄いの?」
「ああ、大手柄だ!」
コショウと言えば、地球でも昔は金と同じ価値があると言われている高級品だ!
こっちでも高級品のようだし、栽培に成功すれば村の復興にかなり役立つんじゃないのか?
もう1つの葉っぱの方も食用になるし、中々の収穫だな。
「勇者様、これは食べられますか?」
「お!アンナちゃんも大量だな~~~!」
「はい、とりあえず近くにあった植物の根っこを掘り出したんですけど、どうですか?」
あれ?確かアンナちゃんも《鑑定》仕えた筈だよね?
あ、使い方教えてなかったかも?
とりあえず、今回は俺が鑑定してみるか!
【ファルポテト】
【分類】野菜
【用途】食用、観賞用
【詳細】ファルの森に自生するイモ類の一種。
生産性が高いが、芽に毒性がある為、食べられること自体知られていない。
連作障害を起こしやすく、同じ場所では多く育たない。
【ファリアスラディッシュ】
【分類】野菜
【用途】食用、飼料用、観賞用
【詳細】ファリアス帝国全土に自生する大根の一種。
一部地域では冬季になると馬や豚の飼料用として利用される。
少し辛味があり、食用としては生でも食べられる。
【ファリアスターニップ】
【分類】野菜
【用途】食用、飼料用
【詳細】ファリアス帝国全土に自生するカブの一種。
一部地域では冬季になると馬や豚の飼料用として利用される。
お~~~!
凄いなこの森!食糧の宝庫じゃん♪
ジャガイモに大根、それにカブまであるのかよ!
この世界って、普及していないだけで食べられる物がまだたくさんあるのか?
「凄いぜアンナちゃん、これ全部食べられるぜ?」
「ホントですか!?勇者様のお役に立てて良かったです!」
おいおい、泣かなくてもいいんだぜアンナちゃん?
さて、後はマイカだけか。
この調子だとまた良い物を採ってきそうだな!
「お~~~い!採って来たぜ~!」
お!噂をすればやって来たか!!
「じゃ~ん!いっぱい採って来たぜ!」
「お~う、どれどれ?」
【イチコロベリー】
【分類】果物
【用途】毒薬
【詳細】毒性のある野イチゴの一種。
一粒食べると中毒症状を起こし、三粒以上食べると意識を失い最悪命を失う。
【シュンサツトリカブト】
【分類】野草
【用途】毒薬、薬の材料
【詳細】致死性の高い毒草。
主に暗殺者が好んで利用している。
根の一部は特定の加工をする事により薬としても利用される。
「毒ばっかじゃん!?」
「え!?」
うん、森の中には猛毒のある植物があるからみんな気を付けよう!!