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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
2ヶ国奪還編Ⅳ-奪還作戦の章-
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第97話 ボーナス屋、出番がない

 ユニーク40万突破しました。


――帝都タラ 地下隠し通路――


 時間は少し遡りバカ皇子が帝都の街を爆走を開始する10分前に戻る。


 ロビンはバカ皇帝(実父)から聞き出した隠し通路の出入口前に仲間とともに転移し、周囲に気を配りながら地下へと潜っていった。



「陛下、本当にこんなものを造ってたんですか・・・。」



 初老の騎士は呆然としながら呟いた。


 今いる地下通路は、バカ皇帝が脱走用にと勝手に帝都の地下に造ったものだ。


 魔法で造られた通路は明かりこそないが、無駄に頑丈に造られ雨漏りした形跡も無かった。



「言いたいことはは多々あるでしょうが急ぎましょう!真っ直ぐ進めば宮殿の地下に出られます!」


「ええ、急ぎましょう!」


「間もなく地上での作戦が開始されますから、我々も救出を急ぎましょう。」



 そして一同は地下通路を進んでいく。


 魔法で明かりを灯し、肉体も強化した彼らの移動は風のようだった。



「出口です!」



 5分もかからず出口に到達したロビン達は出口の向こうの様子を探りながら出口を開けていった。


 丁度その頃、帝都にバカ皇子の笑い声が響いていた。




--------------------------


――帝都タラ ファリアス宮殿地下――


 地下牢獄に囚われて4日目の朝を迎えた第二皇子ブリッツが聞いたのは見張りの兵が声も出さずに倒れる音だった。



「・・・何だ?」



 すっかり意気消沈のブリッツは魔法封じが施された鉄格子の隙間から外の様子を見る。



「皆様、ご無事ですか!」


「救出に参りました!」



 見張りの兵を全て気絶させたロビン達は奪った鍵で次々に牢屋を開けていく。


 牢に囚われていた皇族や宰相、親衛隊達を次々に解放していった。



「ブリッツ殿下、御怪我はありませんか?」


「君は確か、そう、兄上の側近でハワード家の!」


「ハイ、私はロビン――――――」


「ロビン殿下、囚われていた者全員を解放しました!」


「・・・殿下?」



 ロビンが名乗るよりも前に、初老の騎士はロビンに敬意を込めた態度で状況報告をした。


 それを聞いたブリッツは一瞬怪訝に思うが、持ち前の頭脳でその意味をすぐに察した。



「まさか―――――!」



 そしてブリッツの考えを、初老の騎士はロビンに代わって肯定する。



「ブリッツ殿下、この方は殿下の異母弟でありますロビン=W=ファリアス(・・・・・)殿下であります。この度、皇帝陛下より正式に第三皇子(・・・・)として認知されました。」


「ちょっ!待ってください!私はまだ・・・!!」



 ロビンは慌てて訂正しようとするが、既に遅かった。


 初老の騎士の言葉は牢から解放された全員(・・)の耳に届いていた。



「「「ヘエ・・・・・・?」」」


「「「ヒィィィィィィィィィ!!!」」」



 一瞬にして牢獄の空気は氷点下まで下がった・・・気がした。


 話を聞いていたバカ皇帝の正妃や妾妃達は一瞬で竜も殺しそうなオーラを放ったのだった。



「そう、あの人は他にも・・・・・・。」


「ホホ♪これは久しぶりにお仕置きが必要ですわね?」


「嫁入りの際に頂いた“魔剣”を開放する時がきたようですわ♪」



 恐怖しか感じられない女の笑い声が牢獄に響き渡った。


 その後、怯えながらも一同は牢獄から脱出した。


 念の為、騒ぎを起こされないように捕縛した見張りも連れ、ロビンは安全な場所へと転移した。





--------------------------


――ファル村――


「ハハハハ!どうだルドルフ、気持ち良いだろ~?」


「あい!」



 バカ皇帝はルドルフを肩車させて村の中を走っていた。



「父ちゃん待て~!」


「パパを捕まえろ~!」


バカ(・・)を捕まえろ~~!」


「皇帝待て~~~!」



 その後を追いかけるチビッ子達、その中にはバカ皇帝の子供も沢山混じっていた。


 彼らはバカ皇帝を追いかける鬼ごっこを楽しんでいた。


 だがそこへ、ある意味本当の鬼が現れる。



「――――――到着です、では、私は帝都に戻ります。」


「分かりました。殿下、ご武運を!」


「ハイ!」



 牢獄に囚われていた人達をファル村に運び終えたロビンはすぐに帝都へと転移した。


 救出されたブリッツ達は、一瞬で地下から知らない村に移動した事に半ば呆然としていた。


 だが、そこに子供達から逃げるバカ皇帝が現れた事ですぐに空気は一変した。



「ハハハハ!掴まえられるものなら掴まえて・・・・・あ!」


「「「あ!!」」」



 バカ皇帝と妃達の視線が重なった。


 そして、バカ皇帝は方向転換して妃達から逃亡を開始した。



「ハ、ハハハ・・・ルドルフ、あっちにも行ってみようか~?」


「あい♪」


「「「逃げるなあああああ!!!!!」」」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



 妃達は鬼の形相になってバカ皇帝を追撃した。


 バカでも皇帝であるランドルフは妃達が自分を追いかけてくる理由を十分に承知していた。


 だからこそ、ランドルフは文字通り全力で逃亡を開始した。


 だが、妃達もそう簡単に亭主を逃す訳もなかった。



「わあああああ!!は、速い!?何でそんなに速いんだお前達ィィィィィ!!??毎日宮殿でのんびり飲み食いしてばっかりなのに何所にそんな体力がぁぁぁぁぁ!!??」


「オホホホホホ!!我が家に伝わる秘伝の《強化魔法》ですわよぉぉぉぉぉ!!」


「妃がみんなだらけてるなんて幻想ですわよぉぉぉぉ!!逃げんなコラァァァァァァァァ!!!」


「陛下ァァァァ!!洗いざらい、隠している事を吐かせていただきますわァァァァァァァ!!」


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「キャッキャ♪」



 無邪気なルドルフだけはこの状況を理解せずに純粋にはしゃいでいた。


 それを見ていた救出部隊やブリッツを始めとする救出された人達は、その光景はただ見ているしかなかった。


 その後、チーム愛人+異母妹を巻き込んだ鬼ごっこはルドルフがお腹を空かせて泣くまで続いたのだった。




--------------------------


――帝都タラ ハワード邸――


 ブリッツ達をファル村に届けた後、ロビンは帝都の自宅(・・)に来ていた。


 上級貴族街に建つ豪邸の入口に立ったロビンは、意を決して屋敷の中に入っていった。



「ロ、ロビン様・・・!?」


「そんな、若様は戦死したと!?」


「父上は部屋に居ますね?」


「ハ、ハイ!!」



 中に入ると使用人達が幽霊を見るかのような目でロビンを見ていた。


 ロビンは階段を上り、この屋敷の主が居る部屋の扉を開けた。



「ム?誰・・・・・ロビン!?」


「お久しぶりです、義父(・・)上。色々お話したい事もありますが、今は大人しく投降してください。」



 丁度出かけようとしていたハワード家当主、ゴットフリート=A=ハワード侯爵は死んだと思っていた

(義理の)息子の姿を見て目を丸くする。



「投降しろ?そうか、この騒ぎはお前達の仕業か!育ててやった恩も忘れて親に歯向かう等、仮にもファリアスの貴族としての誇りはないのか!!」


「なら、義父上達がしている事は帝国貴族として誇らしい事なのですか?私欲の為に代々仕えてきた皇族に刃を向け、帝国を乗っ取る事が!」


「フン!昔は知らんが今の皇帝は私が仕えるに相応しくない。世界に圧倒的な力を示し、覇を唱える我らこそが大陸最古の歴史を持つファリアス帝国を支配するに相応しいのだ!お前のように、戦を嫌う様な臆病者どもには理解できないだろうがな!」


「それは、帝国がダーナ大陸を征服するという事ですか?」


「そうだ!先の大戦から50年、嘗ての傷を癒し力を蓄えた今こそ我らがダーナ大陸全土を支配する時なのだ!」


「・・・・・・ハア。」



 ロビンを見下したような目で見ながら持論を語るハワード侯爵。


 それを見ていたロビンは呆れたかのように溜息をついた。


 そして、やはり呆れた様な顔でロビンは侯爵に話しかける。



「義父上、それは・・・・その世界征服というのはダニールという男(・・・・・・・・)に言われて思いついた、ではないですよね?」


「何!?何故お前が奴の名を知っている!?」



 「ダニール」の名前がロビンの口から出た途端、先程まで強気だった侯爵の表情が歪む。


 一方、ロビンは心底呆れたようにまた溜息を吐いた。



「ハア・・・。やはり予想通りですか。ムリアス公国とフィンジアス王国にファリアス帝国、この分ではゴリアス国でも同じ事が起きているのは間違いないでしょうね。しかし、こうも簡単に乗せられているとは思ってもいませんでした。考えが単純すぎます。」


「何を言っている?」


「義父上、知らないようなので教えますが、ダニール達(・・・・・)は帝国以外の国の貴族達にも同じ事を言ってクーデター等を起こさせているんですよ?」


「なっ!バ、バカな事を言うな!!」


「本当です。現にムリアスのアレクセイ殿下はダニールの仲間の1人に利用され、国境近くの戦場に介入をして多大な被害を齎していますし、フィンジアス王国でもクーデターが起きています。そしておそらくはゴリアス国でも・・・。義父上達はいい様に利用されているんですよ。」



 その後もロビンは侯爵に話をしていく。


 ダニール達の真の目的――『至宝』に関しては誤魔化した――や悪事の数々、それを聞いた侯爵は驚愕を隠せない様子だったが、それでもロビンの言葉を素直に受け入れる気は無さそうだった。



「く、くだらん戯言を!!お前が何を言おうと我ら上級貴族が帝国を支配する事に変わりはない!お前は帝国に反旗を翻した反逆者として投獄させ、皇族達と一緒に公開処刑にする!元よりハワード家の血を引かぬ、父親が誰かも(・・・・・・)分からない不貞の子(・・・・・・・・・)、他の邪魔ものどもと一緒に片付けてくれる!」


(・・・あれ?もしかして、私の実父が誰なのか知らない?)



 ロビンは僅かに首を傾げた。


 義父、侯爵は帝国の裏事情にはそれなりに精通している筈、それなら自分の妻の不貞の相手がバカ皇帝である事くらいは知っていてもおかしくないと思っていたが何故か違っていたようだ。


 一方、ロビンが首を傾げている事に気付かない侯爵は壁に掛けてあった剣を取ると、屋敷中に聞こえる声を上げた。



「―――――者ども集まれ!賊だ!帝国に逆らう賊が侵入したぞ!!」



 大きな足音を立てて1階から大勢の兵が近づいてくるのが聞こえた。



「ロビン、もうお前はハワード家の人間ではない!!誇り高き帝国に反逆する賊だ!!」


「・・・仕方ありません。こうなれば、私も力ずくで行かせてもらいます!」



 そして、ロビンのハワード家への決別の戦いが始まった。






 主人公、出番なしの回でした。


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