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ボーナス屋、勇者になる  作者: 爪牙
2ヶ国奪還編Ⅳ-奪還作戦の章-
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第95話 ボーナス屋、出発する

 余裕が出てきたので、久しぶりに土日連続更新します。

――ファル村 軟禁小屋――


 そして軟禁小屋には誰も居なかった。


 中に入ると人影は無く、あったのは木端微塵に破壊された家財道具やボコボコと穴の開いた床、後他にあるのは――――――。



「あれ、こんなもの置いてたっけ?」


「どうかしましたかぞい?」



 何度もここに出入りしている俺は、ここにはある筈の無い物を幾つか見つけた。


 1つは床に無造作に置かれた“メモ用紙”、2つ目は“黒い短剣”、3つ目は“人形”、4つ目は床の上で気絶している“黄色いネコ(?)”、5つ目は“金属バット”、どれもここには無かった筈の物ばかりだ。



「・・・何でバット?」



 どう見てもこの世界の物とは思えないよな。


 持ってみると普通の金属バットよりも重い。


 というか、何だか嫌な感じがするんだよな?


 鑑定してみよう!



【呪いのJKバット】

【分類】バット

【品質】普通

【詳細】「綾小路章子」が大魔王に呪いをかけられて変貌したバット。

 この呪いは《解呪魔法》で解く事は出来ない。

 意識は存在し、使用者だけ意思の疎通が可能。

 様々な効果が組み込まれているが現在解析不能。

 一定期間内に解呪しなかった場合、一生解呪できなくなる。

 推定解呪可能期間、約359日。



 “JK”って・・・。


 「大魔王」、何時の間にファル村に来たんだ?


 いや待て、それじゃあ他の3人も・・・・!?


 と、思った時だった。



〈――――せんの!!私の声、聞こえていませんの!?〉


「あ、聞こえた!」


「どうしたですぞい?」


「あ、いや・・・。」


〈聞こえた!?私の声が聞こえ―――――〉



 俺はJKバットを一旦床に置き、他に転がっている短剣や人形も調べていった。



【呪いのDKソード】

【分類】短剣

【品質】普通

【詳細】「日比谷諭」が大魔王に呪いをかけられて変貌した短剣。

 この呪いは《解呪魔法》で解く事は出来ない。

 意識は存在し、使用者だけ意思の疎通が可能。

 様々な効果が組み込まれているが現在解析不能。

 一定期間内に解呪しなかった場合、一生解呪できなくなる。

 推定解呪可能期間、約359日。



【呪いのJKドール】

【分類】人形

【品質】普通

【詳細】「藤田ゆかり」が大魔王に呪いをかけられて変貌した人形。

 この呪いは《解呪魔法》で解く事は出来ない。

 意識は存在し、使用者だけ意思の疎通が可能。

 様々な効果が組み込まれているが現在解析不能。

 一定期間内に解呪しなかった場合、一生解呪できなくなる。

 推定解呪可能期間、約359日。



 ・・・じゃあ、そこに転がっているネコは?



【呪いのDKキャット】

【分類】哺乳類型魔獣

【用途】ペット、使役獣

【詳細】「滝嶋豪樹」が大魔王に呪いをかけられて変貌したネコ。

 この呪いは《解呪魔法》で解く事は出来ない。

 意識は存在し、人語を話すことが可能。

 様々な効果が組み込まれているが現在解析不能。

 一定期間内に解呪しなかった場合、一生解呪できなくなる。

 推定解呪期間、約359日。



 4人全員呪われたのかよ。


 しかも「大魔王」って・・・俺の知る限り1人しかいない。


 何でここに来たのか分からないけど。


 取り敢えず、寝ているネコを起こして事情を訊くとするか。


 何だかまた面倒ごとに巻き込まれた気がするな。





-----------------


 ネコを叩き起こして事情を訊いた俺は溜め息を吐いた。


 予想通り、「大魔王」は最近よくファル村に遊びに来るルチオの曽々祖父さんだったみたいだ。


 俺達に事情を話している時のネコは酷く怯えながら泣いていた。


 よっぽど怖かったんだな。

 それはさておき、俺達はネコの話から『創世の蛇』のメンバーであるブラスがこの世界に戻ってきたことを知った。


 奴らがこっちに戻って来る前に帝国と王国を奪還する計画が大きく狂いだす。


 この話を聞いた俺やステラちゃんは真っ先に考えたが、その不安はすぐに解決した。


 解決してくれたのはとあるチビッ子、銀耀だった。



「御祖父様から伝言~!『悪い人(ブラス)帝国と王国には(・・・・・・・)もう手は出さない。現時点でダニールとアイアスはこっちに来ていない。』だって~!」



 神託ってやつなのだろうか?


 詳しく知らないけど、銀洸と銀耀の祖父さんは神様らしい。


 ネコの話だとその神様も「大魔王」と一緒にいたらしいけど、何でだ?



「それと~、『これは末孫を助けてくれた礼だから情報料は気にしなくていいよ。』だって!」



 どうやら銀耀がルチオと一緒に奴隷になっていたのを助けた礼のつもりらしい。


 あれって、助けたことに入るのか?


 まあいいや!


 とにかく、明日の奪還作戦は予定通り決行になった。




 余談だが、呪われたJK&DKはその日から村人達の玩具にされた。


 ネコと人形はチビッ子達の玩具にされ、短剣は農作業の道具に、バットはバカを懲らしめる時の処刑道具(・・・・)に利用された。




 さらに余談だが、この日の夜から誰かが啜り泣く声が村の各所から聞こえるという噂が流れ始めた。


 噂は次第にお鰭を付けて余所の町にも伝播し、後に帝国の若手作家が書くベストセラー小説のモデルになるのだが、それは別の話だ。






「あ!そういやメモがあったっけ?」



 後になってメモ用紙の事を思い出した俺は急いで軟禁小屋からメモを見つけてきた。


 メモには「大魔王」からのメッセージが日本語で書かれていた。


 その内容は、




『 また来るから酒場作れ! 』




 メッセージはそれだけだった。


 呪いについての説明も名前もなし。


 命令・・・いや、脅迫書かよ!


 だが、この手紙の内容を知った村長を始めとする男衆は意外とノリノリで賛同した。


 どうやら前からあればいいなと思っていたようだ。





--------------------------


――フィンジアス王国 某街道――


 俺達が明日の奪還作戦の準備をしている頃、フィンジアス王国のとある街道を2頭の馬が駆け抜けていた。



「――――――クッ!随分と舐められたものだ!!」



 前を走る馬に乗る婆さんはイラついた声を漏らしながら馬の速度をさらに上げた。


 その後を、気の弱そうな爺さんが同じように馬の速度を上げていった。



「お、おい、待ってくれ・・・!」


「これが待てるか!バカだバカだと思ってはいたが、ここまでバカだとは思ってもいなかったわ!!」


「・・・長男だったから可愛がり過ぎたからなぁ。」



 謎の婆さんは怒りの形相を露にしているのと対照的に、謎の爺さんは悲しい顔で馬が走る先を見つめていた。


 気のせいか、馬の速度が上がるにつれて謎の婆さんの怒りのオーラも増しているみたいだ。



「待っていろバカ者どもが!!!」


「お、落ち着きなさい!」



 そして謎の老夫婦は街道の先へと消えていった。






--------------------------


――ファル村郊外――


 翌朝、まだ寝ている人も多い早朝に集まった俺達はまだ寝ている村人達を起こさないように気を配りながら帝都と王都への出発を開始した。


 帝国側は主にロビンくんが、王国側はステラちゃん直属の騎士や兵士が《空間転移》で目的地へと運ぶ予定だ。


 なお、今回の作戦には先の戦いに参加した騎士や兵達、あとは帝国側にはヴィクトール、王国側にはエドワードと+αが急遽参加する事になった。


 ちなみに、問題起こしそうな連中は村にお留守番だ。



「では、出発します!」


「ロビン殿下、ご武運を。」


「で、ですから私は・・・!」



 魔法を発動させようとするロビンくんに見送りに来た領主のオッサンが激励の言葉を送ると、ロビンくんは慌てて否定しようとする。


 そこへ、首に縄をかけられたバカ皇帝がやってきた。



「そうそう、すっかり忘れてたけどお前達の事は認知してあるから。ホイ、これが認知書!」


「え!?」


「お~い!ロビンは俺の三男だから、その辺よろしく~!」



 おい、何やってるんだバカ皇帝!


 息子が困ってるだろ!


 って、そこの帝国兵達もそんな救いの神を拝むような目をするな!


 気持ちは解るけど!



「で、では、今度こそ出発します!!」


「弟妹達の面倒は見るから心配するなよ~♪」


「《空間転移(ワープ)》!!」



 そして俺達はファル村を出発した。


 いよいよ奪還作戦の開始だ!!






 余談だが、その日のバカ皇帝はチビッ子達に懐かれて笑いながら過ごしたらしい。


 そう、アレら(・・・)が村にやって来るまでは・・・・・・。








 ちなみに、呪われたJK&DKは痛覚はそのまま残っています。


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