Wings1 翼を求めて
ここへ来る事になったのは、ある神社で聞かされた。
その日私は、翼が欲しいと願っていた。
空を見上げると、たくさんの星たちが瞬いている。
その中に一つ。他の星よりも更に眩しく輝く星があった。
「綺麗…」
思わずうっとりしていた。
「え…?」
そう思ったのも束の間。
その星から一人の女性の影が見えた。
それが一瞬にして私の目の前に。
「……誰?」
目の前に現れたその女性は、長い白銀の髪を持ち、陶器の様に白い肌をしている。
背は高く、下から見上げる私の視界から大きな月は隠された。
彼女の背中には、大きな翼が…。
「こんばんは。私はカイナ。あなたのお名前は?」
「朱美…。ってそういうことじゃなくて!」
「私はあなたを迎えに来たの。あなた翼が欲しいのでしょう?」
「えぇまぁ…」
「私の世界では毎年あなたのような人達をお迎えしているの」
彼女の話によると、一年に一度、何処か別の世界で翼を欲しがる人々を迎えに行くという。
迎えに来られてしまった者は、嫌でも連れて行かれるらしい。
今年は私の番なのだ。
「え…てことは、私も連れて行かれるの!?」
「そういうことになるわね。さ、行くわよ、朱美ちゃん」
「カイナさん待って。私は空を飛びたいと思っただけなの」
「ごめんなさい。私はあなたを連れて行かなければならないの」
カイナは手を肩の位置まで挙げる。
指の腹でパチン、と音を鳴らした。
バサッ……
背後から音がした。振り向くと、白く、大きな翼が背中から生えていた。
背中に意識を集中させる。
すると、自分で羽ばたく事ができた。
「素適な翼…。でも、どうして行かなければならないの?」
「それは私にも分からないの。ずっと昔からして来たことだから」
「そう。私も欲しがったりするからいけなかったのね」
「大丈夫よ。国王様が許して下さればこの世界に戻って来ることが出来るわ」
「本当…?」
彼女は笑みを浮かべながら頷く。
「もう時間が無いわ。そろそろ行きましょう」
私は諦めて付いて行くことにした。
この世界の人々と当分会えないのを分かっていながら…。
私はカイナに手を引かれ、地上から足を離していった。
背中の翼を力一杯羽ばたかせ、彼女を追う。
正直私は、新しい世界での生活に、少しだけ、期待していた……。