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Episode 1 - 高等学校殺人事件

 埼玉県内の県立高校。

 恭子が登校すると、教室は転校生の話で盛り上がっていた。

「おはよう、恭子」

 教室の窓際、後ろから二つ目の席に座る姫花が開口する。

「おはよう」

 恭子は教室を見渡す。

「何かあったの?」

「転校生が来るのよ」

「転校生?」

「うん」

 チャイムが鳴り、教師が入ってくる。

「はーい、ホームルーム始めるよー。と、その前に」

 廊下に向かって教師が手招きをする。

 男の子が教室に入ってきた。

「転校生の如月きさらぎ 春樹はるきだ」

「如月です」

「如月は父親の都合で埼玉にやってきた。わからないことがあったらなんでも教えてやれ」

 如月は席に着く。

 ホームルームが始まった。



 放課後、恭子は習い事のため、下校をしようとしていた。

「うわああああ!」

 悲鳴と共に、男子生徒が恭子の目の前に落下してきた。

 鈍い衝撃音に跳ね飛ぶ血。

 一瞬、時間が止まったような気がした。

「……!?」

 驚く恭子。

「う……」

 息絶える男子生徒。

 恭子はスマホで警察に通報した。

 埼玉県警察の所轄の捜査員が臨場する。

 死亡したのは、曲田まがた あきら。三年生。

 死因は頭部を地面に叩きつけたことによる脳挫傷。

 屋上のフェンスを突き破って落下してきたものと見られ、警察は事故死と断定して立ち去ろうとしていた。

 恭子は屋上のフェンスを確認している。

(特におかしな点は……。ん?)

 恭子はボルトが外れていることに気づく。

「鑑識さん、フェンスの近くでボルトを見てませんか?」

「いんや、そんなものは見てないよ」

(なるほど。これは事故なんかではなさそうだ)

 状況はこうだ。

 ボルトの外れたフェンスに寄りかかった生徒の体を、固定されていないそのフェンスが支えることができず、中空へ放り出された生徒は落下した。

 現場にボルトがなかったことを踏まえると、何者かがボルトを外して持ち去ったのであろう。

(これは無作為に誰かを狙った殺人事件かしら?)

 恭子は曲田のクラスへと向かった。

 放課後ということもあってか、教室に生徒はほとんどいない。

「一年生がこんなところで何してんだ?」

 そう訊ねるのは先輩の芦田あしだ 光一こういち。通称、こうくん。

「こうくん、大変なの」

「何が大変なんだ?」

「曲田先輩、亡くなっちゃった」

「なんだって!?」

 驚く芦田。

「こうくんに聞きたいんだけど、曲田先輩に何か変わったことなかった?」

「うーん……そういや、誰かにつけ回されてるとか言ってたなあ」

「……?」

「あいつ、付き合ってた彼女と別れてさ。それからなんだって」

「この学校の人?」

「二年の牧田まきた かおる。俺はよく知らないからわからない」

「ありがとう」

「会いに行くなら、牧田はB組だぞ」

「うん、ありがとう」

 恭子は二年B組の教室へ移動する。

「お、一年生じゃねえか。何しにきた?」

 訊ねるのは、このクラスの男子生徒の上尾あげお 俊哉としやだ。

「牧田先輩はいますか?」

「牧田? あいつなら下校したぞ」

「そうですか」

 恭子は教室を見渡す。

「牧田先輩の席、どこです?」

「窓際の一番後ろ」

 恭子は牧田の席に向かって歩く。

「おい、何する気だ?」

 牧田の席を調べようとすると、上尾が止めに入る。

「勝手に人の席いじるなよ」

「人が殺されたんです。牧田先輩が関わってるかもしれません」

「なに?」

 恭子は牧田の席を調べる。

 これと言って収穫はない。

(流石に下校してるなら証拠も持ち去ってるか)

「本当に牧田が曲田先輩殺したのか?」

「……? いや、それはまだ」

「ふーん」

 と、上尾は去っていく。

「ちょっと待って。牧田先輩の家を知ってたら教えてください」

「ああ、牧田の家か。俺も今日、行こうと思ってたんだ」

「じゃあ一緒に行っていいですか?」

「いいよ」

 恭子は上尾と共に学校を出る。

 ……。

 …………。

 ………………。

 牧田の家に着く。

 上尾はチャイムを鳴らした。

 牧田らしき私服の女性が出てくる。

「俊哉か。ん? そっちの子は?」

「一年の坂上です。牧田先輩ですよね?」

「そうだけど。一年が何の用?」

「曲田先輩と付き合ってましたよね?」

「あ……彰の話か。彰がどうかしたの?」

「実は先ほど、屋上から転落して亡くなったんです」

「……! それ本当?」

「はい」

「私のせいだ。私が振ったから……」

「自殺とお考えになったんですか?」

「ええ」

「曲田先輩、誰かにつけ回されてる気がするって言ってたんですが、心当たりありますか?」

 牧田は少し考える素振りをして答えた。

「わからないわ」

「牧田先輩、あなたはなぜ曲田先輩を振ったんですか?」

「……彰、浮気男だったのよ」

「え?」

「ちょっと待ってて」

 牧田は家に引っ込み、数枚の写真を手に戻ってきた。

「これ」

 恭子は写真を見る。

 そこには、一年生の女子生徒と仲良く手を繋いで歩いている曲田が写っていた。

 北上きたがみ 愛佳あいか。恭子の隣のクラスである。

「この写真、預かってもいいですか?」

「好きにしな」

 牧田はそう言って家に引っ込んでしまった。

「上尾先輩、もしよかったら付き合ってもらえますか?」

「え?」

 上尾は驚いて頬を赤らめた。

「別き恋愛的な意味じゃないから勘違いしないでくださいね」

「あ……そうなの?」

 上尾は肩を落とした。

 恭子は上尾と共に埼玉県警察の本部に足を運んだ。

 埼玉県警察本部は浦和の埼玉県庁庁舎裏手にある。

 受付を済ませ、ゲストカードで改札を抜けて捜査一課の朝霧の元へ。

「坂上くん、どうしたんだい?」

「この写真の子の情報を取りたいんです。うちの高校であった殺人事件の関係で。北上 愛佳さんだそうです」

「曲田 彰の事件だね?」

「はい」

「ちょっと待ってね」

 朝霧がデータベース検索で北上 愛佳を調べると、現住所が出てきた。

「ここが現住所か……」

 朝霧は受話器を取ると、役所に電話をかけ、北上の戸籍情報をデータで取り寄せる。

 恭子は開示されたデータを確認する。

 北上 愛佳には兄がいた。その名は俊哉だ。

 俊哉は姓が上尾に変わっている。

(なるほど)

 恭子は上尾に向き直る。

「上尾先輩、さっきの質問だけど、犯人がわかりましたよ」

「本当か?」

「ええ。犯人は曲田先輩があの時間、屋上でフェンスに寄りかかるのを知っていた人物。犯人は予めボルトを外しておくことで、現場にいなくても自動で曲田先輩を殺害する方法を取ったんです」

「……………………」

「犯人は私が牧田先輩の席を調べようとした時、止めに入ってきました。そして、こう言っています。『曲田が殺されたのか』と。あの段階では、私は『人が殺された』とは言いましたが、曲田先輩の名前は出していませんでした。上尾先輩、曲田先輩を殺害したのは、あなたですね?」

「じょ、冗談だろ! なんで俺が?」

「それは、曲田先輩の浮気相手が妹の愛佳さんだったからではないですか?」

「……!」

「牧田先輩が貸してくれたこの写真——」

 恭子が愛佳と曲田の写った写真を示す。

「——隠し撮りして牧田先輩に浮気の証拠として突きつけたのも、恐らく上尾先輩、あなたです」

「……………………」

「今日、牧田先輩の家へ伺ったのは、証拠品を彼女の部屋に隠すつもりだったからです。しかし、タイミングがなく、隠せなかった。その証拠品であるフェンスを固定するボルト、まだお持ちなんじゃないですか?」

 恭子は上尾がポケットへ入れている右手に着目する。

「上尾先輩、そのポケットに入っているものを見せてください」

「……ふう」

 と、上尾はポケットの中から、フェンスの外されたボルトを取り出す。

「全部君の推理通りさ。曲田は俺が殺した」

「理由はどうであれ、人を殺すのは許されないこと。そのことをしっかり肝に銘じて償ってください」

 話を聞いていた捜査一課の刑事が、上尾の事情聴取をするため、彼を別室に連行する。

 供述によると、牧田に告白したがフラれ、更に牧田と付き合った曲田の浮気が理由で怒りが爆発し、計画的に考えた殺人だった。


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