断罪イベント365ー第24回 しゃべる断罪帳
断罪イベントで365編の短編が書けるか、実験中。
婚約破棄・ざまぁの王道テンプレから始まり、
断罪の先にどこまで広げられるか挑戦しています。
王都大広間。
今日はまたしても断罪イベントが開かれていた。
壇上には王子と黒幕令嬢、そして罪に問われる悪役令嬢。
観衆は息をのんで見守り、
経理部長は「今日こそ予算に見合った断罪を……」とため息をついている。
王子は胸を張り、うやうやしく断罪帳を持ち上げた。
これこそ、これまで数々の罪を記した「正義の記録」である。
……はずだった。
「今日こそ余は威厳を示す! 断──」
その瞬間、断罪帳がブルッと震えた。
ページがひとりでに開き、重々しい声が広間に響いた。
「……可哀そうに。追放された身にもなってみ。」
観衆「えっ!?」
王子「だ、誰だ! 余の断罪を邪魔するのは!」
黒幕令嬢「こ、これは……そう!
演出ですわ! わたくしが魔道具師に頼んで……」
必死に誤魔化そうとするが、断罪帳は聞き入れない。
「罪なき者を追放して民を酔わせる……それ、ほんまに正義か?」
広間は水を打ったように静まり返った。
悪役令嬢でさえ、思わず瞳を見開き、断罪帳に釘付けになる。
断罪帳の声はさらに低くなった。
「そこの王子よ。お前昨日の晩、このページの
余白に書き込んだ言葉……『バラより赤き我が愛の心』。
あれは何のつもりや? 断罪の書に恋のポエムて、聞いたことないわ」
もう、観衆も唖然・・である。
王子は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ち、違う! あれは余の文学的素養を示すためで……」
だが断罪帳は容赦がない。
「黒幕令嬢。お前の計画も、ここにしっかりあるで。
証拠のすり替え、証人の買収……すべてページの隅に!」
黒幕令嬢「ひ、卑怯ですわ! 帳面が告げ口など……!」
むしろ一番公平じゃないのか? と観衆が騒ぎ出す。
悪役令嬢は涼しい顔で前へ出た。
「断罪帳の方がよほど正義に忠実ですわね。
これからは“断罪帳裁判”と呼んだらいかが?」
観衆は爆笑し、王子は半泣き、
黒幕令嬢は机を叩いて「こんなはずでは!」と喚く。
断罪帳はパラパラとページをめくり、さらに追い打ちをかけた。
「そして、最後に言うとくわ。
お前らが今日この場で書き残した言葉、未来永劫この帳に刻まれるで。
愚かな断罪を続ける限り、わしは語り続ける覚悟や!」
静まり返る広間。
やがて一人の観衆がポツリと呟いた。
「もう……王子いらなくない?」
断罪イベントは完全に断罪帳の独壇場となった。
その日以来、この断罪帳は「しゃべる裁判官」として恐れられるようになり、
王子の威厳はちょっとだけ地に落ちた。
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【調査まとめ】
・断罪帳が人格を持ち、勝手に語り始める。
・断罪帳の第一声が会場を凍りつかせ、王子のポエムや黒幕令嬢の計略を暴露 することとなった。
断罪帳だって言いたいことがある!
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m