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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
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90話 シナルVSカケラ

 シナルは魔剣を握る手を強める。

 彼女の目の前には、一人の同級生と一体のドラゴンの形をとっている何かが敵として立っている。

 シナルは魔剣を構えたままジリジリと接近する。


『あの技は、確かどこかで見たことがある………………そうだ! 闘技大会に出ていた三年の先輩方が使っていたものに似ている』


 シナルはその短い間にも思考を巡らせる。

 今にも切れそうな細い勝利の糸を慎重に手繰り寄せるのだ。




 カケラはシナルと真剣に勝負をする気はない。

 シェードドラゴンの実験をしようと考えている。

 彼女のスキルを見れば、回避、防御、攻撃、どれもバランスのいいスキルのため、実戦式の実験に向いていると考えたからだ。

 カケラはソクラテスを経由してシェードドラゴンに命令を出す。

 権能の混ざったその指示でシェードドラゴンが動き出した。

 シナルは、カケラを狙うように魔剣を振るうが、それはドラゴンによって防がれる。

 否、防がれるだけではない。

 魔剣はドラゴンの体に沈み吸収される。

 シナルは魔剣を手放し、ドラゴンから離れる。

 それは本能からの行動に近く、反射的な反応だ。

 ドラゴンが剣を吸収するとその背に剣が出現し始める。

 それらの形は、これまでシナルが握り、ドラゴンに破壊された魔剣の数々。


剣墓標(ソードグレイブモード)影竜(シェードドラゴン)


 それがこの形態の名だ。

 これはカケラの龍神の権能を使ったもので、入力する情報によって形態を変化させる技の応用だ。

 そしてその形態変化でカケラが一番に思い付いた形態が剣墓標(ソードグレイブモード)なのだ。

 その名の通り、吸収した剣を『解析』そして錬金魔法で再現し、背に蓄える。

 そしてシェードドラゴンはその剣の数々を使用できるのだ。


 シェードドラゴンは背から魔剣をとり、口に咥えて持つ。

 再現した魔剣「衝炎」だ。

 しかもサイズをドラゴンに合わせているので大剣並みの大きさになっている。


「変形したかと思えば、剣を取り込み、あまつさえ剣を握るか」


 シナルは苦笑いをする。

 だが、すぐに表情を戻して魔剣を構える。

 魔剣「反魔」。

 狩人側の最終兵器の一つである魔剣だ。

 シナルが事前に知らされている情報では、この魔剣が届いた時点で後はなくなる。

 シナルはその事を踏まえ、剣を振るう。

 「反魔」は「衝炎」と衝突する。

 魔剣「衝炎」の効果は、マッチのように衝撃を受け燃える剣だ。

 だが、この衝突でその効果は発動しない。


『魔剣「反魔」の能力が『解析』できました』


 ソクラテスが報告を開始する。


『魔剣「反魔」の能力は、魔力の妨害です。神聖魔法とは違いますが、魔法への特効性があります』


『それヤバくない?』


『シェードドラゴンは魔法を使って構成されているので、とても不味いです』


 シェードドラゴンは、魔剣を持ち替える。

 魔剣「不可視二式」。

 その魔剣は、振るたびにウィンドカッターを二回発射する。

 ドラゴンはシナルに向けその魔剣を振るう。

 シナルに向かい不可視の斬撃が飛んで行く。

 だが、シナルとてその魔剣の能力を知らないわけではない。

 シナルは感でウィンドカッターを避ける。


 そしてシェードドラゴンは、再度魔剣を交換する。

 だが、剣術を使わないドラゴンが剣を使いこなせるはずがなく。至近距離まで近づいたシナルによって  その影の肉体を斬られる。

 直後こそ形を保っていたが、やがて歪みだし消えていく。

 あとには、何も残っていない。


「さて、これで一対一だな?」


 シナルはそう言い剣をカケラに向ける。


『よし、実験終了』


 剣先を向けられた時点でそう考える。

 今までの戦いは実験。

 シェードドラゴンが勝利すれば、カケラの手間が省けるというだけの話だ。

 ここからは実験結果の実戦である。

 錬金魔法にて魔剣を作成、ソクラテスが設計した新しい魔剣だ。

 ソクラテス作。魔剣「混魔(カオス)」。

 その魔剣は、その名を現すように様々なデザインが混在している。

 カケラはその魔剣を握る。

 シナルは「反魔」を持ち、カケラに攻める。

 カケラは、その剣の能力を発動する。


背影龍牙(シェード)


 そう宣言するとシナルの背後から攻撃が飛び出す。

 シナルは魔剣で攻撃を受けるが、その攻撃で飛び出した影の形に覚えを感じる。

 その影の見た目は、魔剣「衝炎」とよく似ていた。

 そして奇妙なことにその影は互いに接触するように伸びている。

 影が赤い光を発し、火を吹く。

 シナルは驚くが、軽く後ずさるのみである。

 次にカケラは、剣を振るう。

 すると黒い影が斬撃のようにシナルに向かって行く。

 『影刃(シャドーカッター)』というその攻撃は、シナルへ向かう。

 シナルは幾つかを魔剣で防ぐが、内数発がシナルに直撃する。

 その斬撃は『籠手』を貫通し、シナルに血を流させる。

 シナルはそれでも勝利を諦めない。

 カケラは、剣を振るう。

 同時に何十発もの火球やウィンドカッター、シャドーカッターなどの基礎魔法がシナルに放たれる。

 シナルは負傷してもまだ降参をしない。

 『影牢』

 カケラが魔剣を通して使うその魔法は、魔剣「籠の牢」の能力をソクラテスが改変したものだ。

 シナルは、すぐに剣を突き立てようとする。

 だが、内部の全ての空間が影であるその結界内では、遅すぎる。

 『影牢――串刺し』

 シナルの体を影の棘が貫く。

 カケラは魔剣を収納する。

 それを合図として結界が解除される。

 目の前には無傷で気絶するシナルが横たわっている。


『上手くいったのか?』


『はい、無事無力化しました』


 棘が貫く瞬間、影の形を変え体内で再び実態化、そのまま気絶させた。


『さて、ハウサは順調かな?』


 そんなことを考え、ハウサの向かった敵の本拠地へ向かった。

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