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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
93/99

89話 影の竜

 シナルが魔剣を構える。

 背後には仲間がおり、目の前には黒い影のドラゴン――――影竜(シェードドラゴン)が構えている。

 シェードドラゴンは斬られた爪を元に戻す。


「このドラゴンについて何か知っているか?」


 シナルは背後の三人に尋ねる。


「ほとんど何も解らない。作戦通りカケラの足止めをしていたら後ろにいた」


 イロハが答える。


「なるほど、おそらくカケラの攻撃だろう」


 おそらく、トレイのような魔物を操るスキルなどだろうと、結論を出す。


「でも、妖怪は憑かなかった」


「そうなんです! それなのに私の【撮影】の影響は受けるんですよ。おかしくないですか?」


 その言葉を聞いて、シナルの頭に一つの仮説が浮かびあがる。

 それは目の前のこれが生物ではない可能性。


『妖怪が憑かないということは、不死族(アンデット)? 不死のドラゴンなんて聞いたことがないが…………』


 シナルは違和感を持ちながら斬りかかる。

 ドラゴンは避ける素振りもせず、その直撃を受ける。

 魔剣はドラゴンの体を二手に割き、動きを鈍らせる。

 さらにそこへ魔剣での斬撃を加え続ける。

 もはや原型など留めていない。


『これぐらい刻めば、いくら不死といえども死ぬだろう』


 そう考え、攻撃の手を止める。


「これで大丈夫だ。だが、このスキルについてメディカに伝えなければ………………」


 シナルは、そう言うが、三人はシナルの背後を指差す。

 シナルが振り返ると反射的に魔剣を構える。

 黒い影が集合し、ドラゴンの形を再生する。

 形の戻ったそれは、爪で魔剣を攻撃する。

 シナルはその攻撃を魔剣で受けるが、突如魔剣が破壊される。


「は?」


 シナルは信じられないものを見る。

 魔剣はかなり丈夫だ。

 それを破壊した。


「これは不味い」


 シナルは壊れた魔剣をシェードドラゴンへ投げつけ後退する。

 そこへ丁度、次の魔剣が送られてくる。

 空間から出現したように見えるその現象は、ユニークスキルの効果だ。

 本拠地にいる者が送ってくれたのだろう。

 シナルはその魔剣を握る。

 魔剣「貫き回し」

 それはドリルのような見た目をした魔剣。

 斬るというより、刺す方が近い。

 シナルは、それでシェードドラゴンを刺し貫き、回転によりミンチに変える。

 それでもそのドラゴンは、再生する。


『一体、何回殺せばいいんだ?』


 シナルはそれが生物ですらないことに気が付かず、殺し続ける。




『ソクラテス、まだ?』


 カケラが以前としてうつ伏せの状態で聞く。


『あともう少し待ってください』


 ソクラテスはそう答える。

 かれこれ十回以上このやり取りが繰り返されている。

 この体勢で体を重くされては、立ち上がることができず、やることもなく、簡単に言えば暇なのだ。

 三人はシェードドラゴンから逃げていき、こっちに向かっていたもう一人もそっちに行ってしまった。

 あとは、ソクラテスの『解呪』を待つか、ハウサの到着を待つくらいしか残っていない。


『暇だ』


 何度目かも覚えていないそのことを思い浮かべているとソクラテスが報告する。


『『解呪』の解析が終了。使用可能です』


『すぐに使用して!』


 カケラは、すぐさま念じると体が軽くなる。

 妖怪たちの見えなくなり、『解呪』を実感する。

 そこへ丁度、ハウサが合流する。


「よ! 元気か? まさか負けてないよな?」


 ハウサがカケラに聞く。


「まだ負けてないよ。今は影に任せてるだけで………………」


「影って授業とかで使ってたあの手か?」


「その手に少しアレンジを加えたドラゴン」


 カケラはそう伝え、その影が存在する方向へ向う。

 シェードドラゴンの様子は、スキルなどで把握ができているが、何度も影を破壊されているのでとてもよろしくない。


『ソクラテス、シェードドラゴンのあれは、使える?』


『可能です』


 カケラは、そう聞くとすぐさま実行を命令する。

 カケラとソクラテスの思い付く限りの技の数々を。




 シナルは壊れた魔剣を捨て、次の魔剣を握る。


『こいつは異常だ。異常すぎる』


 シナルはそう考え、新たな魔剣「雹降り」の効果を発動させ、氷の粒を叩きつける。

 それでもそのドラゴンは全く動じず、攻撃の手を止めない。

 これまで数本の魔剣が破壊されている。

 魔剣「行き走り」から始まり、魔剣「貫き回し」、魔剣「衝炎」、魔剣「不可視二式」、魔剣「籠の牢」、魔剣「カーニバル」。

 それら全てでこのドラゴンは破損し、すぐに再生、そして魔剣を破壊している。

 マグの創り出した魔剣が壊され、そこら中に落ちている。

 シナルはこれ以上魔剣を失うことを恐れ、後ろに退く。

 シェードドラゴンは接近しようと近づくが、唐突にその行動を停止する。


『?………………何だ?』


 シェードドラゴンは、シナルを無視して別の方向へ進む。

 その方向に存在する物は、壊れた魔剣。

 シェードドラゴンは自身の影の中にそれらの魔剣を収納し始める。

 シナルの目には、その行動が肉体に魔剣を沈めているように見えることだろう。


 そもそもシェードドラゴンの仕組みは、『影魔法』の新たな術である『影の形代』を使いドラゴン型の形代を作成、その形代に『影実態化』を使用、さらに『影操作』で遠隔操縦をするという流れでつくられている。

 そして動きも再生も『影操作』でソクラテスがオートで行っている。

 つまりこういうことが可能だ。


「なっ!?」


 シェードドラゴンの体から棘が飛び出し、伸びた先でも分かれる。

 突然のことだった為、シナルは回避できない。

 棘はシナルの肌に少し刺さった所で止まる。

 シナルは青ざめる。

 シナルには、『籠手』がある。

 この防御性能は高く、シェードドラゴンの爪でも突破はできなかった。

 それが突破されたのだ。

 シナルは、シェードドラゴンの相手を諦める。


『こいつは不死族(アンデット)でもない! もっとヤバイ何かだ!』


 そう考え、逃げるように走り出す。

 その方向は、イロハたちが言っていたカケラのいる方向だ。

 シナルは術者を倒すことに作戦変更(シフトチェンジ)した。


 暫く走るとシナルの視界に走ってくるカケラが見えてくる。

 魔剣を構え、踏み込み斬りかかる。

 だが、カケラは忽然と目の前から姿を消す。


背影龍牙(シェード)


 カケラがシナルの背後で言う。

 そこへ追っていたシェードドラゴンも合流する。

 シナルから血の気が引いていく。

 初めの攻撃が避けられた今、シナルの勝算は絶望的になった。

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