85話 快適な空間
朝日が差し込む。
ここはカケラの寮の自室であり、闘技大会が終了してから一週間が経過している。
今日もカケラは、起き上がり、身支度をし、寮を出て、食堂にてシリスやダクトと合流し、朝食を食べ、教室へ向かい、いつもの席へ座る。
「シリス、今日の授業何なんだろうな」
「何でしょうね」
カケラとシリスは、同じような言い方で言う。
何故こんな薄い内容の会話をしているのかと言うと、原因は前日の担任が言った予告だ。
――――明日から数日間、特別授業があるからな~
これである。
詳細は無し。
生徒の間で考察が盛んになっている。
「何ですかね~」
ダクトも気が抜けた声を出す。
これは三人の日常風景だ。
「それでは、皆さんお待ちかねの特別授業の時間です」
ドクタスが教壇に立って言う。
「先生! 特別授業とは、どのような内容なのでしょうか?」
シリスが開始早々、質問する。
「よし詳細を話すぞ。内容は――――」
カケラは、森の中にいる。
近くには、お馴染みのシリス、それにハウサがいる。
何故、このメンバーで森にいるのかというと、これが特別授業だからだ。
もちろん、ただのサバイバルなどではない。
ドクタスが説明した詳細とは、実に単純明快で獲物と狩人という内容だ。
獲物側と狩人側に分かれ、戦うというものだった。
安全性に問題があるが、そこは監修の人物が黙らせた。
安全監修は、キラボシであり、誰もが納得した。
そして現在は、サバイバルの基盤を構築する時間である。
「おーい、そっちは寝床できたかー?」
ハウサが昼食の鍋を混ぜながら言う。
「あともう少しかかりそうです」
シリスは寝床の屋根部分を調整しながら答える。
「そっかー、昼飯できたら手伝いに行くわー」
そう言って昼食づくりを再開する。
「カケラ君、問題はありませんか?」
シリスは、カケラに聞く。
カケラも何もしていないわけではなく、周辺に異常がないかを確かめていた。
「問題なし!」
「それは良かったです」
問題なし。
それは、危険な魔物がいるかどうかではない。
それは、狩人側がいるかどうかの問題なし。
彼ら三人は、獲物側なのだ。
それでも気ままにサバイバルをしている。
「あっ、でも近くに魔物がいる。多分、猪」
カケラは察知した気配を報告する。
「猪なら仕留めてくれ。夕飯に使う」
ハウサが命じる。
「了解」
カケラは狩りに乗り出す。
すぐに接近して、竜剣で一撃で斬る。
そして一時的に『空間収納』に入れ、拠点に運び込む。
そして解体し、材料として再度『空間収納』に収納する。
そうやって拠点をつくり上げていく。
数時間後には、寝床も机もその他もろもろの簡易的な設備が完成する。
完成すると三人は、机を囲み椅子に座る。
そして昼食を食べ、一息つく。
「いやー、快適になった」
「そうですね」
ハウサの言葉にシリスが同意する。
ハウサもシリスも達成感により、満足している。
「いや、忘れるなよ? いつ狩人側が攻めてくるかもわからないんだから」
だが、カケラは満足していない。
何故ならカケラは、拠点の設営の間、周囲の警戒を行っていたからだ。
最初こそ三人で設営を行っていたのだが、カケラに向いていなかったので、満場一致でその役割に就いたのだ。
「分かってる、分かってる。でも、狩人側は、まだ戦闘準備中だと思うぜ」
「根拠は?」
シリスがハウサに問う。
「メディカなら絶対そうする」
ハウサは、すぐに言う。
「君がそう言うのなら間違いないのでしょう」
シリスは納得した。
「二人とも何か来た」
カケラが報告する。
「何か?」
「魔物じゃない。集団で動いてる」
「よし、意外と早かったな。焦ったのか?」
「それじゃあ、行きましょうか」
三人は迎撃に向かった。




