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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
84/100

80話 最後は必殺技が一番

 トレスは短剣(ナイフ)を投げる。

 カケラはその短剣(ナイフ)竜剣(ドラゴンソード)で弾く。

 トレスが『影牙(シェード)』を実行すると、【斥力】を使用した異様な動き、あるいは【空間収納】から出される竜盾(ドラゴンシールド)の防御によって、回避、無効化される。

 カケラはそれらの攻撃の隙を狙い、トレスに打撃をチマチマと与える。


「いや~、いい勝負だな~」


 観戦席にてキラボシが呟く。

 キラボシは自身の憧れの兄の戦いぶりを眺めている。

 その手には、少し前に屋台で購入した串焼きが三本握られており、その内二本はただの串になっている。

 キラボシは三本目の串焼きを口の前まで運び、噛み切り、咀嚼し、飲み込む。

 この行動によってキラボシの手には三本の串が残った。


 キラボシからすればこの勝負は幼稚な試合であった。

 だが、憧れの兄が最大限の手加減をしながら相手を圧倒する、その姿を娯楽のように観賞することが最高に楽しいのだ。


『あ~、本気も見たいなぁ~』


 キラボシは心の中でそう呟いた。




 カケラは剣で短剣(ナイフ)を弾き飛ばす。


『どうやって、勝負をつけようか?』


 カケラはこの勝負の決着をどうしようか、と考えていた。

 この勝負はこちらが優勢であり、まだまだ本気も出していないため負けることはほぼない。

 現に本気で戦っていれば、『液体化』で大抵の物理攻撃を無視できる。

 『龍の咆哮(ドラゴンブラスター)』だって使用すれば、目の前の彼は消し炭にできる。

 だが、それらを実行すると強めの人に【解析】を使われ、龍神であることが露見する可能性がある。

 つまり、ギリギリでただの強いだけの一般人という範囲で使えることで勝たなければならない。

 カケラは考えた末、一つの案を出す。


『よし、ソクラテス。何か案はないか?』


 その案はソクラテスに聞くということだった。

 要は投げやりである。


『はい、では幾つかありますが、一つ提案させていただきます』


 ソクラテスは待っていましたとばかりに提案する。


『先ほどカケラ様の記憶を閲覧したのですが、漫画という書物で敵に必殺技を使って見開きのページで倒す、という場面が鮮明に残っていました』


 カケラはその許可を出していないことを指摘するが、ロックがされてなかったので、と返された。


『そこで必殺の剣技で倒すことをお勧めします』


 ソクラテスがそう勧めるとカケラは呆れる。


『でも名前が無いじゃないか、名前を知らないのなら必殺技っぽくないだろ』


 異を唱えるとソクラテスは、またもや待ってましたとばかりに言う。


『先ほど、新たな剣を使った必殺技を創り終えました』


 その言葉を聞いてカケラは驚く。


『お前、色々と許可とか指示なしでやり過ぎじゃないか?』


『駄目だったでしょうか?』


『全然いいけど、せめて報告はしてくれ』


『肝に銘じます』


 そのやり取りを終えるとその新技について聞く。

 カケラは技名が気に入り、ソクラテスの案を通した。

 その技名は――――――




 トレスは目の前にいる強者を不気味がっていた。

 それはカケラが強かったからだ。

 その強さは圧倒的で自身の自慢の一撃を何度も防ぎ、それでいてまだ本気ではないように見えるからだ。

 だからこそ不気味がる。

 自分を瞬き一つの瞬間に殺すことだって容易なはずなのに、目の前の強者は単純作業のように一つ一つの技を避けて、または防いでいる。

 その理由がトレスには理解できなかった。


 敵は殺せればすぐに殺す。

 できなければ逃げる。

 それがトレスの常識である。

 今回は闘技大会のため逃げることはしないし、できるだけ殺人もしない。

 だが、カケラは相手を倒すための一手を打たない。

 いつまでも回避、防衛しかおこなわない。

 もうすでに勝負は決したようなものなのだ。


 トレスが納得できずにいるとカケラは剣を握り直した。

 トレスはそれを見てやっとその気になったかと安心した。

 カケラが口を開き、何やら言葉を発す。


「龍王流―――奥義『八頭斬下・地跳ね』」


 その瞬間、その剣技は放たれる。

 奥義『八頭斬下・地跳ね』。

 能力生命体『ソクラテス』が考案した必殺技である。

 その動きはまず対象に急接近、それから計八回の斬撃を瞬時に与えるというものだ。

 その八回の斬撃の威力は、キラボシの放つ他の龍王流の技に比べ格上の威力を持つ。

 そして一連の動きはキラボシの速さを上回り、誰にも認識されることはなかった。

 トレスはその攻撃によって気絶した。




 カケラはその攻撃によって気絶したトレスを見て肩の重荷が下りたように軽くなる。

 まだ生きているということは、ソクラテスの手加減が上手くいったことの証明だからだ。

 通常あの技をまともに受けたら、まず生きてはいない。

 それは正体がバレる以前に不味いのでソクラテスが全力で手加減した。

 速度をそのままで八回の斬撃をみねうちに変え、加える力も減らした。

 その成果として相手は気絶しているだけで済んでいる。

 カケラは内心、ガッツポーズで喜んだ。


「えぇ~、カドモス トレスの気絶を確認。決勝に進むのは一年ミチビキ カケラだ~~!!」


 実況のモルベイが観客に向けて宣言する。

 観客たちは何が起こったのか解らず困惑していたが、その宣言により再度盛り上がる。

 カケラは観戦席に戻ろうと歩き出した。

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