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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
83/99

79話 狩人狩り

 闘技場にて、これから始まるのは、準決勝。

 この勝負に勝利した者は、決勝へ進み、同じく準決勝で勝利したシリスと戦うことになる。

 対戦するのは、学園三年生のトレスと一年生のカケラ。

 二人は、闘技場の中央にて相対し立っている。

 トレスは二本の短剣(ナイフ)をそれぞれ両手に構え、カケラは竜剣(ドラゴンソード)を構えている。

 観客はその様子を見守り、試合が始まるのを今か今かと待ちわびている。

 そして、モルベイが音響魔道具(マイク)を片手に戦いの始まりを宣言した。


 試合が開始すると、最初に行動したのは、トレスだった。

 トレスは前の試合でも行った、速い斬撃を繰り出す。

 その斬撃は、単純に速い。

 さらに上乗せで速く見せて、スキルで威力も底上げしている。

 ほとんどの人間―――否、普通の生物であれば初手のこの攻撃で戦闘不能になる。

 前の試合で時間がかかったのは、相手の異常な回復手段のせいであった。

 その一撃はトレスのユニークスキル【狩猟】の『会心補正』が使われている。

 これにより余程、運が味方をしないかぎり、ドラゴンだってただでは済まない。

 そんな強力な一撃をカケラは、試合開始早々に貰ったのだ。

 トレスは、油断せずに警戒しているが、内心では勝利を確信した。

 手ごたえからして会心が発動した。

 人間ならば戦闘不能で悪ければ命に関わる重症になる。

 そう、人間ならば。

 カケラに攻撃が直撃するが、カケラは傷を負いながらもその場で直立していた。

 トレスは自分の目が信じられなかった。

 まるでドランゴン――否、それ以上の何かに相対しているような気分に変わった。




 カケラは試合どころではなかった。

 その理由は、試合が開始すると頭の中で聞こえた声が原因である。

 その声は、トレスが動き出すと聞こえだした。


『斬撃注意、斬撃注意、回避してください』


 カケラはその声を聞いて、急な警報に混乱し、回避をしなかった。

 避けずとも、大した損傷にはならないので、声への追及を優先した。

 カケラはまず、この声へ質問を投げ、この声が一方通行ではなく、こちらからも話すことができる――要は会話を試みた。


『え~、この声の方、どちら様でしょうか?』


 カケラが聞くと、声はすぐに反応をかえした。


『はい、私は逸脱能力(アノマリースキル)哲学の父(ソクラテス)】の能力生命体『ソクラテス』です』


 カケラはその言葉を聞いて、心の中だが驚愕した。


『…………能力が意思を持ったってこと?』


『その認識で問題は無いです』


 カケラは『ソクラテス』との質疑応答にて彼のことを理解した。

 実在したソクラテスではなく、あくまで名が同じだけの別人だと言うこと。

 今までの不自然な『解析』や警告は、『ソクラテス』が行っていたこと。

 そして、かなり有用だということ。


『それじゃあ、ソクラテス、戦闘のサポートを任せた』


 カケラはそう言って、ソクラテスに戦闘の面倒なものを丸投げした。


『承知しました』


 ソクラテスは了承し、演算を開始した。

 そしてカケラは、意識を戦闘に向けた。

 このソクラテスとのやり取りの間も試合は続いていた。

 今まで回避に専念していたが、カケラが戦闘に本腰を入れ始めた。

 カケラは、ソクラテスの演算により性能が向上した『思考加速』を使用する。

 その瞬間、カケラの周囲が止まったかのような速さになった。

 さらに【斥力】で動きを加速させ、その世界を何もないかのように移動する。

 そしてトレスに近づき観察する。

 よくよく見るとトレスの動きだけは、少しずつ動いているのが解る。

 カケラは手始めに蹴りを入れる。

 蹴りは容易に直撃し、トレスは勢いよく飛ばされた。




 トレスが蹴り飛ばされた時、観客は何が起こったのかすぐに認識することができなかった。

 先ほどまでトレスの攻撃を避け、剣で弾いて、防衛に徹していたカケラが一瞬でトレスに蹴りを入れたのだ。

 観客でその一連の出来事を認識できたのは、勇者であるキラボシくらいであった。

 だが、その様子を見ていたキラボシは、試合の行く末に興奮し、ステージに見入った。




 トレスは急で強力な蹴りに反応することができず、受け身もまともにすることができなかった。

 二つの意味で痛い一撃であった。

 トレスは【動体視力】を持っている。

 だというのに見えたのは、蹴り終わった姿だけだったのだ。

 トレスはこれまでの人生の中でかなりの強さの魔物にも勝利してきた。

 だが、目の前に立っている者は、魔物よりも恐ろしい何かなのだと認識した。

 トレスが立ち上がろうとするとカケラはまたもや常人には認識できない速さでトレスに接近し、次は拳を放った。

 拳は立ち上がろうとするトレスにめり込み、そのままその体を弾きだすように飛ばした。




 カケラはあまりに勝負が簡単になってきていて少し不味いと感じていた。

 こんな一方的な勝負を見て楽しく盛り上がるのか、と。


『―――あまり面白くないと思います』


 ソクラテスもカケラの意見に同調した。


『よし、手を抜こう』


 カケラはそう考えソクラテスに出した演算の命令をキャンセルした。


『では、私は何をすれば?』


 ソクラテスがカケラに問う。


『それじゃあ、スキルでも見て、遊んでおいてくれ』


 カケラはそう指示し、ソクラテスにスキルへの干渉権限を与えた。

 カケラは意識を元に戻す。

 そこには、体勢を立て直そうとしているトレスがいた。

 流石に攻撃するのは忍びないので、魔法を撃つフリをしてその間の時間を待った。

 その瞬間であった。

 トレスの居た場所には、短剣(ナイフ)が一本残されていた。

 カケラはその短剣(ナイフ)に気を取られ、トレスの居場所を探るのが遅れた。

 それが作戦だと解ったのは、トレスに背後を取られたときだった。


 トレスは、短剣(ナイフ)を両手に構え、素早い動きと『影潜り』で接近する。

 そしてスキルで威力を上乗せし、技術で強化した一撃を放つ。

 技の名を『影牙(シェード)』と言う。

 この技は、トレスの奥の手であり、必殺技であり、最後の頼みの綱であった。

 その威力は、機能である『会心補正』と人々が扱う技術の『覇気法』により、かなりの威力を持つ。

 そしてその技がカケラに直撃するという瞬間、トレスは勝利を確信した。

 だが、その確信はすぐに消え失せた。

 唐突な現象、カケラの背後に盾が現れたのだ。 

 その盾によりトレスの渾身の『影牙(シェード)』は防がれてしまった。

 本来ならば『影牙(シェード)』は並大抵の盾を破壊することができるが、その盾は少しの傷が付いただけで終了した。

 その盾は、竜盾(ドラゴンシールド)であったので、それは当然だった。

 トレスは万策尽きてしまった。


 カケラは面白い発想が上手くいったことに満足していた。

 その発想は、【空間収納】から背後に盾を出すという発想だ。

 その試みは上手くいき、攻撃を防いだ。

 カケラは背後を振り返る。

 背後では、盾を腕で払いのけ、再度『影牙(シェード)』を繰り出そうとしていた。

 カケラは剣で短剣(ナイフ)を弾き飛ばし、妨害する。

 トレスは距離をとり、どこからともなく短剣(ナイフ)を補充する。

 カケラはそれを見て、一体何本持っているのだろうと考えた。

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