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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
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77話 準決勝・一回戦目

 ハウサとシリスは、試合が始まるとすぐに動いた。

 シリスは魔法を一発撃ち、ハウサはそうくるだろうと予想していたので回避の態勢に入った。

 ハウサの回避方法は、『注目!』により魔法を自分に集め、それをギリギリで避けるという、かなり危険なものである。

 シリスが火魔法の火球を放つ。

 その火球は本気ではなく、威力を弱め魔力を最小限しか使用していない一撃。

 火球はハウサへ向かって真っすぐ飛び、ハウサはそれを華麗に回避した。


 シリスはそれを見て、一つ解ったことがあった。

 それはハウサが魔法を引きつけているということ。

 先ほどシリスが放った火球は、実を言うと軌道をかなりずらして撃たれたものなのだ。

 その火球の軌道が命中しかけるほどに修正されたということは、そういうことなのだろうと考え、ハウサの回避方法暴いた。


 シリスは、魔法を撃って攻撃することを諦める。

 軌道が意味を為さないのなら、いつまでも回避されるだけだと考えたのだ。

 シリスが次に行うのは、剣への『属性付与』だ。


 ハウサは続けて魔法を放ってこないシリスを見て、すぐに魔法の準備を始めていた。

 おそらく、『注目!』を使った仕掛けがバレたのだろうと、感づいた。


 ハウサが発動させた魔法は、シリスも発動させた火球だ。

 だが、先ほどのシリスと違い、こちらの火球はハウサの手加減なしの代物だ。

 数は十個ほど。

 それを可能にするのは、【魔力制御】とハウサの天性の才能(センス)


 シリスへ向かって約十個の火球が飛んで行く。

 本来なら回避は厳しい。

 それこそハウサほどの異質な才能を発揮しなければいけないほど厳しい。

 観戦者たちは、シリスがどのようにしてそれを捌き切るのかが気になり、ステージに見入る。

 カケラもダクトもキラボシも学園長に王様も、全員がシリスの行動に注目した。


 シリスがとった行動は、誰もが――キラボシを除いてだが――予想だにしていなかった。

 シリスは迫る火球の群を剣で斬り、消し去ったのだ。


 本来、普通の剣では、魔法が斬れない。

 仮に斬れたとしても消し去ることはできない。

 では、どうやったのか?

 それは、シリスの使った魔法『属性付与』に関係がある。

 普通の剣に『属性付与』を使用するとその剣が特性のみ魔剣レベルまで向上する。

 その魔法により、シリスが付与した属性は、聖属性だ。

 その属性は、魔力の浄化の効果がある。

 つまりは、そういうことである。

 聖属性により魔法の魔力ごと浄化し、消し去ったのだ。

 その事に気付いていた者は一人、気付いた者も一人である。


 この一瞬でハウサは剣を構える。

 そして『強化魔法』をかけ、接近する。

 ハウサも相手に魔法は通じないということを理解し、剣術の勝負に持ち込もうとしたのだ。

 シリスとハウサは、お互い剣を構え近づき、剣を振るった。


 そして刀身が衝突し火花が散った。

 ハウサの剣は、砕けなかった。

 本来ならば『属性付与』をされた剣と『強化魔法』を使用した剣では、圧倒的に性能が前者の方が高く、付与された属性が聖属性ならば『強化魔法』も発動させるための魔力ごと浄化されるので、ハウサの剣は破壊されるのが自然なのだ。


 砕けていないのは、ハウサが行った【魔力制御】のおかげだ。

 ハウサは、一瞬で『属性付与』の術式に干渉したのだ。

 ハウサの異常な才能(センス)による抵抗だ。


 もちろん、シリスも何もしないわけではない。

 シリスは、術式を改変しハウサによる干渉への抵抗をする。

 だが、ハウサも負けじと術式が発動する前に干渉する。


 その攻防が数分ほど続いた。

 二人は、何も解らぬ者から見れば、ただ剣をジリジリと押し当てているようにしか見えないし、解る者から見れば、その攻防は白熱し、予想外にあふれた激戦に見えただろう。


 その駆け引きの間、ハウサは【思考加速】を獲得した。

 さらに互いが相手の次の手を予測し、潰すということをやり続けた結果、両者がユニークスキル【先手】を獲得していた。

 それはまるで未来が見えているかのような戦い、高速でチェスをするような勝負だった。


 だが、その戦いはシリスにより終わった。

 それは【先手】の『行動予測』により出てきた予測で押し負けるという結果が出たからだ。

 シリスはハウサから距離をとり、態勢を立て直す。

 ハウサはそんなことお構いなしに近づき剣を振るう。


 その剣同士が衝突した瞬間、一本の刀身が折れ、宙を回転しながら飛んでいった。

 折れた刀身は、石で造られた闘技場の床に楽器のような音を出して三回跳ね、止まった。

 その刀身はシリスか? それともハウサか?

 観客たちは茫然と見ていた。



 折れたのは、ハウサの剣だった。

 今、ハウサの手には、剣の柄しか残っていない。


「―――降参します―――」


 ハウサが宣言した。

 数秒間誰も動かず、何も言わない空気が漂っていた。

 誰か一人がその空気を壊すように歓声を上げた。

 それからは、一人、また一人と動きだし、声を発した。

 静寂というダムの門が開かれ、潤うように活気に満ち溢れる。


「闘技大会、準決勝一回戦目、勝者、ウィステリ シリス~~!!」


 モルベイさんが闘技場にその勝者宣言を響かせた。

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