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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
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68話 開催

 数日間、僕は座学をやっていった。

 図書館で本を探し、気になるこの世界のあれこれを調べた。

 おそらく、ギリギリ座学である。


 今日まで、ほとんどの時間を机に向き合って過ごした。

 これはあれだ。

 テスト前なのに全く勉強しないような現象だ。

 本来なら前日に徹夜するものだが、僕はそのまま当日になってしまったという、何とも間抜けで不味い状況だ。

 別に僕が負けることなど無いと思うが………………それでも心配なことには変わりない。

 それなら事前に準備をしておけという話だが、もう遅い。

 闘技大会の開催は今日である。



 僕がそんなことを考えながら生徒用の観戦席に座り、ステージを見下ろす。

 ステージの中心には、学園長が開催の挨拶をしている。

 観戦席は全て人で埋め尽くされている。

 豪華な服に身を包んだ身分の高そうな人や町で見かけるような一般人が大会を観戦しにきたのだ。


「――――以上でここに闘技大会を開催することを宣言する。 神龍歴1228年○月○日」


 学園長の挨拶が終わる。


「続きまして、フィデリス グラン国王より、お言葉です」


 観戦席にいる者たちは、僕などの生徒も含め、闘技場の特別席へ目を向ける。

 特別席に座るのは、この国を統べる国王だ。

 もちろん僕は、今日初めて見た。


 国王からは、かなりの貫禄が感じ取れる。

 それこそ、初めてドラゴンと相対したときに感じたような風格に近い。

 覇気を放ってはいなかったが、覇気無しの気配としては、かなりのものだ。


 国王は豪華な席から立ち上がり、マイクのような魔道具(マジックアイテム)を手に持つ。

 学園長も使っていた音を大きくし、周囲に響かせる効果のある魔道具(マジックアイテム)だ。


「皆の者、知っての通り、我はこの国の王「フィデリス グラン」である。この日の闘技大会を無事に開催できたことを嬉しく思う」


 重圧のある言葉だ。

 ここまで重圧があるというのに、国王の顔は口角が高くなっている。

 わざとやっているわけではなく、喋り方の癖のようなものなのだろう。


「今回の闘技大会では重症者がでないことを願うが、出場する者たちには派手な戦いで会場を盛り上げてもらいたい。頑張ってくれ」


 そう最後に言って、席に腰を下ろす。

 そうして学園の闘技大会が開催された。

 まだ試合も始まっていないというのに、観戦席は歓声で包まれている。

 本当にこの大会は国の一大イベントなのだと再確認できた。


 まず最初に始まったのは、対戦相手の組み合わせ発表である。

 垂れ幕のようにトーナメントの書かれた布が公開された。

 僕はそれを確認した。

 自分の出場するものと、同級生の出場するものの二種類を確認した。


 第一回戦 3年「アルバート ロイ」VS 1年「ウィステリ シリス」

 第二回戦 3年「エアロリン ソフィー」VS 1年「フェイフォン ハウサ」

 第三回戦 1年「ディスター ガーブ」VS 1年「ミチビキ カケラ」

 第四回戦 3年「カドモス トレス」VS 1年「フィデリス メディカ」

 この位だ。

 残りの第四回戦以降の出場選手は、2年や3年の知らない先輩方だった。


 シリスは組み合わせを見ると、観戦席を立ち上がる。

 これからステージに入場するのだろう。

 僕は、頑張って、とだけ言い、シリスを見送った。


 シリスが行ってしまうのと入れ違いになるようにダクトが観戦席に入ってきた。

 朝から見かけなかったが、何処へ行っていたのだろうか?


「ダクト、何処へ行ってたんだ?」


 僕は興味本位で聞いた。


「諸事情です。かなり重要なことだったので言うことはできません」


 それならば仕方がない。

 僕はそれ以上聞かなかった。


「それよりも、一回戦目はどなたとどなたの試合ですか?」


 ダクトが興味しんしんで聞いてくる。


「シリスと3年の――――確か、アルバート ロイって名前の人」


「シリスさんですか! それは楽しみですね!」


 ダクトが目を輝かせて言う。

 僕も楽しみだ。

 あのアドバイスからシリスはかなりの練習をしたはずだ。

 まぁ、アドバイスと言えるアドバイスはしていないが…………

 あれからどこまで成長したのだろうか。


「カケラさん、これどうぞ」


 ダクトがおもむろに串焼きを取り出して渡してくる。


「屋台で買ってきたんですよ。観戦するには必要でしょう?」


 そう言って一本目を食べている。

 まだ、試合は始まっていないのだが…………

 僕はそう思いながら、串焼きを一本貰った。

 美味しい。


「それでは皆様、お待たせいたしました。これより、闘技大会の第一回戦を開始いたします! 実況は私、モルベイが担当します!」


 闘技場にその声が響きわたる。

 観客は待ってましたとばかりに叫ぶ。


「会場も盛り上がってきたことですし………………入場していただきましょう! 学園では『武術の申し子』と称された、三年生「アルバート ロイ」~!!」


 紹介されて入場してきたのは大柄な男子生徒で、腕が太く、力が強そうだ。


 ~結果~

 |名前:アルバート ロイ

 |種族:人間

 |スキル

 |EX・腕力、脚力、動体視力、衝撃耐性、魔法耐性、睡眠耐性

 |ユニーク・武人

 |アチーブメント

 |武術の達人


 それなりに強そうなスキルたちだ。

 少なくとも、前に『解析』した転生者たちよりは強そうである。

 前のままでは、シリスは完敗するだろう。

 今は前よりも強くなっているかもしれないから、断言できない。

 それでもあの人は強いだろう。


「続きまして、今年の期待の新星、新入生代表も務めた優等生! 一年生「ウィステリ シリス」~!!」


 続いてシリスが入場した。

 その手には、あの一冊のノートが握られている。


 シリスがステージの中央に立つと、対戦相手と何かやり取りをし始めた。

 遠くて内容は聞こえない。

 それからすぐに話は終わったようで、両者が身構える。


「それでは、第一回戦、スタート!!」


 試合のゴングが闘技場に響きわたった。

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