6話 兎、再び
『兎はどこだぁー! 次こそは仕留めてくれる!』
【風圧】を使い今までとは段違いに速くそして高く飛んでいる。
標的は数日前に逃がしたあの兎だ。
『あの時は結構痛かった。あの兎さえ避けなければ地面にぶつかることも無かったはずなのに、次会ったら今度こそは逃がさん!』
と、誰がどう見ても100%兎は悪くない逆恨みをしながら兎を探している。
復讐も少しあるが主な目的は兎を狩って食べることだ。
この世界に生まれてからシブミの木という名前からして渋みの強そうな木の実を主食として食べている。実際にこの木の実は渋く、苦い。
そしてその木の実以外の食べ物を食べたことがない。
前世では食べ物にそこまで執着しなかったがこんな木の実ばっか食べていたら日本食が恋しくなってしまう。
『味噌汁に白米それに焼き魚』
この欲求を少しでも満たすために兎を食べる。
〈熟練度が一定値に達しました。EXスキル【索敵】を獲得しました〉
『名前からして効果が分かるが一応、【解析】』
~結果~
|EXスキル【索敵】
|効果:一度見た生き物が近くにいるかを確かめられる
予想通りの効果だった。
早速、【索敵】を発動させる。
~結果~
|反応あり
ここら辺にいることが分かった。
『一体どこに………いた!ここで会ったが百年目!今度こそか弱い兎よ、このか弱いドラゴンの餌となれ!』
そして習得したての急降下を使う。
兎に向けて風のような速さで突撃する。
兎は僕の鋭い後ろ足の爪に捕まった。
兎は気が付いたらドラゴンに捕まっていたという状況でさぞ混乱していることだろう。
『安心しろ残さず全部食べるから。だからごめん!』
そう思いながら、兎に爪を刺し仕留めた。
『兎さん、君の犠牲は無駄にはしない。それじゃあ早速いただきま……』
このくだりは何度目になるだろうか、一番最初はシブミの実をとることだった。
まだ数日しか経っていないのにもう昔のことのような気がする。
そしてこれからもきっと同じ思いをするだろう。
そしてこう考えるのだ。
『どうやって食べれば?』
全く考えていなかった。
火を起こすことも吐くこともできないのに一体どうやって食べるというのか。
『仕方がない。食べないのは兎さんに悪い』
だから仕方なく生で食べることにした。
生のままで腹を壊さないかは心配だがドラゴンだし大丈夫だろうと考える。
さらに心配なことがやはり味だ。
『最悪、まずくても我慢して食べよう。よし、いただきます』
結果から言うと火はやはり偉大だったことがよく分かった。