65話 vsキラボシ
学園の訓練場。
僕はそこで全速力で攻撃の回避に専念している。
次々と繰り出される剣や魔法を紙一重で避ける。
これでもまだ戦いが始まってから30秒も経っていない。
30秒でこれだけの猛攻である。
キラボシはかなり本気のようだ。
そろそろ反撃しないといけない。
権能発動! 『龍化』
この権能こそ、バラシャダさんとの特訓の成果だ。
『龍化』は、人の姿から龍の巨体になるという権能ではない。
このままだと少しの身体強化だけだ。
この権能はここからが本領を発揮する。
『龍化=地龍』
この権能は龍の情報を入れることによって効果を表す。
地龍の情報を入れると肉体的な耐久性が向上し、さらにユニークスキル【地龍】を獲得することができる。
『地面操作』
僕は【地龍】の機能を発動させ地面により、キラボシを攻撃する。
「おっと、危ない危ない」
キラボシは軽々と迫る地面を回避する。
僕は操作する地面を増やしキラボシを攻撃する。
キラボシは地面の対応に追われている。
~結果~
|名前:輝星
|種族:人間
|EX・衝■無効、■■無効、■■、■■■、■■強化…………
|ユニーク・勇者、■■、■■、■■■…………
|逸脱能力・試行する努力家
|アチーブメント
|耐久者、魔族殺し、魔物殺し、剣技の達人、■■の■■…………
ふむふむ、ほとんどが何らかの妨害により分からない。
と言うか、何で『解析』が勝手に発動されたんだ?
僕はこの不思議な現象について考えようとしたが、すぐに投げ捨てた。
優先すべきはキラボシの所持する逸脱能力である。
~結果~
|逸脱能力【試行する努力家】
|機能
|能力管理、動粒魔法
『動粒魔法』が何か分からなかったため『解析』してみると、物体の動きについての魔法だそうだ。
物体を押し出したりすることができる。
これで判明したが、この魔法こそがキラボシの剣技のミソだ。
あの不自然な動きもこの魔法が可能にしていたのだ。
まぁ、今さら分かったところであまり意味はない。
この魔法はある程度【斥力】で代用可能だ。
キラボシは地面の攻撃を回避しながら僕の方に向かってきている。
そして残り数ⅿほどまで迫ってきた。
『龍化=水龍』
『液体化』
僕はキラボシの剣が届く前に、ユニークスキル【水龍】により体を『液体化』させる。
キラボシの剣は僕の液体へと変化した体を通っていった。
「えぇ! 嘘!」
キラボシはかなり驚いている。
僕はその隙を逃さず、『龍の咆哮』を打ち込む。
もちろん、威力を少し下げて。
キラボシは回避しようとしたが、避け切ることができずに少し腕を掠る。
「やったなぁ」
キラボシが口角を上げて言い、手の平をこちらに向ける。
僕は『解析』によって魔法を発動させようとしていることが分かった。
その魔法は『動粒魔法』だ。
僕は『龍の力場』で対抗する。
その魔法の対応によって生じる一瞬の隙の間にキラボシは距離を詰め剣を振るう。
僕は避け切ることができず、キラボシの剣をもろに食らう。
『液体化』も使ったが今度は効果がない。
対策されたのだろう。
痛みがあるが、気にならない。
「やったなぁ、キラボシ」
僕はそう言うと【空間収納】から竜剣を取り出し、構える。
それからは剣や魔法の打ち合い、打たれ合いである。
僕は【再生】を持っており、おそらくキラボシも持っている。
持っているにも関わらず【再生】が間に合わない傷がいくつかある。
今では二人揃ってボロボロだ。
僕とキラボシは立ち止まって、相手を見る。
「………………ボロボロだね」
「………………ボロボロだな」
そのやり取りから数秒間沈黙があり、そして………………
「「アッハッハッハ」」
二人で大笑いした。
これにてキラボシとの戦いも終わりである。
「それにしてもこの傷、中々治らないな」
僕が言うとキラボシがすぐに返事をする。
「再生を阻害するユニークスキルを使ったからね。それに私の方も治らないけど?」
「それはこの剣の効果だろ」
剣を『解析』すると『再生阻害』が付与されていた。
「お互いさまだね」
「お互いさまだな」
そうして二人で訓練場をあとにし、それぞれの寮部屋に帰った。
寮の自室に戻った僕はボロボロになった体を見る。
切り傷などからの出血はすでに止まっているが(別に出血した程度であれば龍は死なないが)かなり見た目が悪い。
僕は傷口についている血を洗い流して、傷に包帯を巻く。
別に巻かなくてもいいのだが、傷をそのままにすると見た目的に気分のいいものではないので、隠さないと落ち着かない。
包帯を巻き終わるとベットに横になる。
そしてそのまま眠りについた。
今回はハザデスさんの所にも行くことはなく熟睡することができた。
そして次の日の朝、そのまま教室へと向かった。
なお、キラボシも包帯グルグル巻き状態で教室に来た。




