62話 神との交流
特訓編に突入します。
あぁ~、疲れた。
その感想しか出てこない。
剣術の授業の模擬戦であれから時間が許す限り、何試合も行った。
そのおかげでキラボシの攻撃は、おおよそ『解析』ができた。
後は、その動きを自分にトレースするだけだ。
そう、するだけなのだ。
………………だが、それが難しかった。
もう避けることは、完璧にできるようになったが、動きを自分に取り入れることが難しい。
特に数々の奥義のような技だ。
本来決して木刀なんかで見せるようなものではない、大技だ。
複雑でトレースができない。
そして『解析』し切ったことで、これ以上『解析』をしても無意味になった。
もしかしたら後は、自分で覚えないといけないのかもしれないし、ここから独自の技をつくり上げる段階なのかもしれない。
僕は、寮の自室でベットに倒れこむ。
そして初日の時と同じように眠りについた。
「よう!」
「?」
眠りについた瞬間、いつもハザデスさんがいる地獄のような場所だった。
しかし、そこにはハザデスさんではなく、一人の赤髪の男があぐらをかいている。
その服装は、明らかに今いる世界の服装とは違い、黒のジャケットに白いシャツ、どう見ても前世の世界の服だ。
「………………どちら様ですか?」
僕は、目の前の男に問いかける。
「俺か? 俺はあの龍ジジイに呼ばれてきた「バラシャダ」って者だ」
龍ジジイ――――――おそらく、ハザデスさんのことだろう。
ハザデスさんが呼んだということは、この人は、つい数日前にお願いした別の神様なのだろう。
「初めましてバラシャダさん。僕は、龍神をやらせてもらっているミチビキ カケラと言います」
まず、始めに挨拶をする。
まだ、この神様がヤバイ神かどうかが分からない。
慎重にならなければ。
「おう、カケラね。早速だがカケラ、神の大先輩として俺からアドバイスがある。だから、権能を見せてくれ」
僕は、訳が分からずに権能で強化した『龍の咆哮』や武器にしたドラゴンを見せる。
そしてバラシャダさんは、それを眺める。
そして言う。
「………………カケラ、俺、アドバイスしようと思ったけど、予定変更だ」
よく分からないが予定が変更された。
「俺が『手』出すからカケラは、避けるなり、反撃するなり好きに対応しろ」
そう言った直後、バラシャダさんの背後から謎の浮遊物が出現する。
その浮遊物は、よくよく観察すれば手を握った拳の形をしていた。
大きさは、1mほどでかなり大きい。
それが二つ空中に浮いている。
「それじゃあ、スタート」
そう言った直後、その二つの『手』が宙を飛んで真っすぐ、こちらに飛んできた。
僕は、慌ててその二つを避ける。
「あの! ちょっと待ってください!」
僕は、必死に訴えかけるがバラシャダさんは、頑張れ~、としか言わない。
そして続けて、『手』が飛んでくる。
僕は、また回避する。
必死に回避する僕の横でバラシャダさんは、何かを空中から取り出す。
その何かの上部を少しめくり、内部に湯気のたったお湯を注ぐ。
お湯が出ているのは、同様に空中から取り出された薬缶からだ。
そして上部を元に戻す。
あれは、どう見てもカップラーメンだ。
僕も食べたことのあるメジャーな味の物だ。
「あの、それってカップラーメン…………」
僕は、『手』を避けながら聞く。
「ん? あぁ、そうだけど」
手にカップラーメンを持ちながら答えられる。
そしてしばらく経つとどこからか一膳の箸を取り出し、食べ始める。
マジでこの人は、何なんだ。
僕はそれに気を取られ、もろに『手』がぶつかる。
クソ痛い。
『手』がぶつかった瞬間、二つが同時に消える。
僕は、状況が分からず衝突した箇所をさする。
大怪我ではないようだが、痛い。
「よし、カケラ。今のでおおよその強さの想定はできた」
強さの想定って何だ?
「あの、それってどういう………………」
僕は恐る恐る聞く。
「今のやつは、お前の力量を測るための攻撃ってことだよ」
麺をすすりながら言われる。
「それで僕の力量は、分かったんですね」
「あぁ、予想外に驚くほど………………」
少し言葉をためて言った。
「………………弱い」
「弱い?」
僕はその言葉に固まる。
弱い? これでもそこそこ強いのに?
「そんなに弱いですか?」
「あぁ、神の中ならダントツで最下位だと思うぜ。逆に神に上がっておいてどうしてそこまで弱くなるのかがわからんし、それに…………」
一切の容赦なく、ボロカスに言われる。
そしてその言葉は続けられる。
「…………どうしてその権能でそんなに弱い?」
いや、龍を武器にする権能でどうしろと?
「いや、僕の権能ってそこまで強くないですよ」
これは、自尊とかではなく事実だ。
「は? ………………あ~、そういうことか」
バラシャダさんは、納得したように僕に告げる。
「お前、権能の使い方が間違ってるぞ」
「え?」
権能の使い方が間違っている?
つまり、僕の権能は龍の武器化ではないということか?
僕はバラシャダさんに詳しく聞く。
「お前の権能は、龍の変化だ。その変化先の一つが武器なだけで他にも変化させることは可能だ」
と、断言された。
それはもう自信に満ちたドヤ顔で言い切られた。
「…………でも結局は、龍がいないと使えない権能じゃないですか」
そう反論するとバラシャダさんは、キョトンとした顔で言う。
「いや、お前、龍神だろ」
そうだった。
龍の筆頭だった。
学園生活ですっかり忘れていた。
「よし、本格的に特訓の開始だ」
そうして、バラシャダさんの特訓が本格的に始まった。
それはそれはきつい特訓で、主に痛覚にこたえた。
「違う! そこは、そんなチマチマとエネルギーを送るな。もっと思い切って流せ」
「はい!」
「あっ、でもコントロールはしろよ」
暴発した。
「もっと覇気を纏え、そんでもって気配は消せ」
「はい!」
「………………全然、隠れてねぇわ。覇気も出てねぇ、と言うか弱い」
そうやって特訓を続けた。
体感で数日くらい特訓したように感じる。
そのことをバラシャダさんに伝えるとこう返された。
「それ、体感とかじゃなくてマジだ。リアルにここでは、数日間経ってるよ。ま、安心しろ。ここは時空を少し歪めてるからよ。それじゃあ続き始めるぞ」
それからしばらくが経ち、特訓が終わった。
「よく、俺の特訓をやり切った。これにて特訓は、以上だ」
「ありがとうございました!」
僕は90度のお辞儀をする。
「じゃあな、カケラ。また時間ができたら来るわ!」
そして目が覚めた。
今日は、いい一日になりそうだ。
特訓編、終了。




