59話 先輩の教え~スキル~
僕は睡眠を取る必要はない。
眠気も無く、何時間起きていても肉体的な疲労を感じることはない。
では、僕は何故寮ですぐに寝たのか?
それはこのためである。
「ハザデスの神様講座!!」
ハザデスさんは手を叩くような仕草をするが、全く音は出ていない。
仕方なく僕は、ハザデスさんの代わりに手を叩く。
「今日は、スキルについての講座じゃ。早速じゃが小僧、スキルとは何だと思う?」
僕は少し考えてから答える。
「……………………超能力とかですか?」
「残念ながら不正解じゃ。その事について説明する前に、次の問題じゃ。スキルには三つの種類があるがそれぞれを何スキルと呼ばれている?」
僕はすぐに答える。
「EXスキル、ユニークスキル、逸脱能力」
「その通りじゃ。そしてここで小僧に教えるべき知識が一つある」
ハザデスさんは驚きの事実を言う。
「実はEXスキルとユニークスキル以上のスキルは、別のものなんじゃ」
EXスキルとユニークスキル以上は別のものということは、ユニークスキルと逸脱能力は同じと言うことか?
僕はそのことについて聞く。
「その通りじゃ。そして話を戻すがスキルとは何かについての答えは、EXスキルとユニークスキル以上のスキルの二つ分ある。どちらから聞きたい?」
僕は、EXスキルと答える。
「EXスキルとは、主に経験から獲得できるスキルで生き物としての適応や進化のようなものじゃ」
確かに言われてみればEXスキルには、耐性などのスキルが多かったイメージがある。
「ここで関係ないが豆知識じゃ。EXスキルは熟練度が設定されておって、熟練度が高ければ高いほど効果が強くなるんじゃ」
結構ありがたい豆知識だった。
これからは熟練度を上げることも意識しよう。
まぁ、龍神になってからは耐性のスキルの効果があるのかも怪しいのだが………………
「それじゃあ次は、ユニークスキルと逸脱能力についてじゃな。これは、まず逸脱能力について教えなければならん」
僕は、ユニークスキルは? と思いながら話の続きを聞く。
「逸脱能力とは、簡単に言えば一個の世界じゃ。そして同時に生命体でもある。まぁ、生命体と言っても中には意思がないものもおるがな」
僕は、ここで理解が追いつかなくなった。
逸脱能力が世界? 生命体?
「逸脱能力の中に『独自世界』と言う機能を持つものがあるのじゃが、これはその名の通り自分のスキルの世界を一時的に展開する機能じゃ。凄く珍しいがな」
話が大きすぎて頭に入ってこない。
「そして生命体についてじゃが、これは簡単で世界=生命体だからじゃ。以上、逸脱能力の説明終わり」
もう完璧な理解は諦めることにした。
しかたがないと自分に言い聞かせながら次のユニークスキルの説明を聞く。
「ユニークスキルは、逸脱能力の卵のようなものじゃ。進化すれば逸脱能力になるが進化には大量のエネルギー、それに細かい条件を満たす必要がある。とまあこんな感じで説明は以上じゃ。質問はあるか?」
意外に早く終わってしまった。
「それでじゃあ、僕の【哲学の父】や【冷酷な殺戮者】も世界ですか?」
「あぁ、もちろんじゃ。逸脱能力であれば例外はない」
それを聞いて僕は、質問を続けた。
「じゃあ、【哲学の父】は生命体――――生きているってことで、いいですか?」
「あぁ、例外はない」
僕は質問をする。
「………………僕の前世の話なんですが」
「急になんじゃ?」
僕は話す。
前世での知識、その一つである大昔の偉人であり、哲学者である天才の話。
そしてその人の名前が「ソクラテス」であったこと。
そして獲得のためのシークレットアチーブメントの条件が有名なその人の逸話の話から引用されているであろうこと。
その話を聞きハザデスさんは、少し考えるような顔をする。
「………………小僧、ワシも考えてみた結論じゃが………………」
ハザデスさんは少し溜めてから、その結論を言った。
「わからん!!」
とてもはっきりと言った。
「生きた者がスキルになるなど少なくともワシは、聞いたことがない。じゃが、無関係とも言い切ることはできなさそうじゃし。ワシからは、わからんとしか言えん」
元龍神でもわからないとなれば、おそらく世界で知る人は存在しないと考えた方が良さそうだ。
そして今の会話で一つの要件を思い出す。
「そうですか、そういえばお願いしたいことがあるのですが………………」
「なんじゃ、急に改まって」
僕は、一つハザデスさんにお願いをした。
「実は、別の神様にも会ってみたいのですが、できませんか?」
それは、ちょっとした好奇心からのお願いでただ、会ってみたいだけだ。
だから無理でも構わない。
「小僧、正気か?」
ハザデスさんから予想外の返事が返ってくる。
会える、会えない、よりも先に正気を疑われるとは考えなかった。
「他の神様って、そんなにヤバイ人達なんですか?」
そう試しに聞いてみると、ハザデスさんは急いで答える。
「否、別に一部を除けばまともな奴がほとんどじゃが……………………本当に会いたいのか?」
これはおそらく間違えてはいけない選択だろう。
もしも、会いたいと言ったら予想以上のヤバイ神様が出てきて苦労することになるだろう。
でも、別の神様にも会ってみたいという気持ちがある。
数分ほど悩んだ末、僕は決定する。
「お願いします。できれば、まともな方で」
「まぁ、小僧がそこまで会いたいならええじゃろう」
そうして、他の神様に会えることになった。
会う場所はここで、時間は僕が眠ったときになった。
僕が眠った時間で本当に大丈夫か、聞いてみると。
「時間はあんまり重要じゃないんじゃよ。どうせ権能を使って捻じ曲げてくれるからの」
というわけで、僕は心配しなくても大丈夫なのだそう。
「それじゃあ、もうそろそろ起きる時間じゃし、また次の機会を楽しみにしておくぞ」
そう言われ僕は眠りから目覚めた。
窓を見ると、光が入ってきている。
体感ではそこまで時間が経っていないように感じる。
日が暮れるより前に眠ったので、おそらく12時間以上も寝ていた。
我ながら良く寝たなと思うが、寝た気は全くしない。
僕は制服に着替え、学校の支度を終わらせ、部屋の扉を開け、外に出た。




