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転生したらドラゴン!  作者: カム十
学生期
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58話 自己紹介

「ここが皆さんのクラスです」


 案内されたのは何の変哲もない教室だ。

 見て周った時に覗いた教室と全く一緒だ。


「担任の教師を連れてきますので、少しこの教室で待っておいてください」


 そう言って、教室から出ていく。

 そして教室が騒がしくなった。

 周囲から聞き取れる話題はお互いの前世の確認だ。


「………………なんか、私が場違いみたい」


 キラボシが呟く。


「お初にお目にかかります。勇者様」


 新入生代表のシリスがキラボシに話しかける。


「お聞きしますが、勇者様は転生者ですか?」


「いいや、違うよ」


「そうですか……………………」


 シリスは「では」と言い、去っていった。

 あの人は多分、委員長だろう。

 一番分かりやすい。

 そんなこと考えていると肩を誰かに叩かれる。


「お久しぶりですね。今は確か、カケラさんでしたっけ?」


 振り返れば、そこにはダクトがいた。


「ダクトか、久しぶりだな」


「えぇ、実に七年ぶりですね」


 そんな会話をダクトとしているとき、教室内に大きな音が響く。

 僕はその音の聞こえる方に振り向く。

 僕だけでなく、ダクトやシリス、その他の教室内の全員が視線を動かす。

 そこにはキラボシと大柄な男子生徒がいた。

 キラボシは男子生徒の拳を受け止めている。

 あいつはまた何をやっているんだ。


「おい、おい、硬すぎるだろ………………」


「君が軟らかすぎるだけじゃないかな?」


 キラボシは煽るように言葉を返す。

 本当にあいつは何をやっているんだ?


「クソが!」


 そう吐き捨て、キラボシの腕を掴もうとする。

 キラボシは逆にその腕を掴み、次の瞬間には男子生徒は床に叩きつけられていた。

 周囲の者や叩きつけられた本人ですら、何が起こったのか分かっていない様子だ。

 僕も『思考速度加速』と『解析』を使わなかったら、知覚できなかった。

 キラボシは、彼を叩きつけていない。

 そして彼は叩きつけられたわけでもない。

 正確に言えば、彼はキラボシに転ばされたのだ。

 腕を掴んだキラボシは、腕を引き、相手の重心を不安定にさせ転ばさせた。

 その一連の流れを普通では知覚できない速度で実行したのだ。

 とんでもない体術だ。


「は? 何で、俺が地面に?」


 転んだ彼はこの一瞬の出来事に混乱しているようだ。


「君、いつまで寝ているの? そんなに床が好きなの?」


 男子生徒はキラボシの煽りを聞き、我に返ったように立ち上がり、キラボシを睨む。


「何? まだやるの?」


 キラボシは面倒だと言わんばかりに言う。

 男子生徒は舌打ちをして離れていった。


「キラボシ、大丈夫か?」


「気分は最悪だよ。あれも前世の知り合い?」


 キラボシは不快そうに言う。

 何でどいつもこいつも、こう前世が分かりやすいんだ?


「あいつは確か………………」


「おそらく、石田さんでしょう」


 シリスがいつの間にか近くに来て言った。

 石田――――――「石田 豪紀(いしだ ごうき)」のことだろう。

 僕が思い浮かべていた人物と同じだ。

 性格は見ての通り、荒くれ者。

 前世と全く変わっていない。


「彼の今世での名前は「ディスター ガーブ」、何でもノルディック王国の貴族だとか」


 あれのどこが貴族なのだろう。


「ノルディック王国か………………」


 キラボシが険しい顔に変わる。

 キラボシはノルディック王国で処刑されかけている。


「教えてくれてどうも、委員長」


「元ですよ」


 シリスはそう訂正する。


「そう言えば、あなたはどなたです? 見当がつかないのですが………………」


「僕は月並ですよ。今世ではカケラと言います」


「分かりました。覚えておきましょう…………」


 そう言ってシリスは別の人に会いに行った。


「お久しぶりですね。勇者様」


 そんな声が聞こえる。

 キラボシの方を向くと二人組の女子生徒がキラボシに挨拶をしていた。


「えぇ、メディカ様にエイダさんもお久しぶりです」


 キラボシが王様に発言するかのように言う。

 キラボシは僕が思った以上に顔が広いようだ。

 そんな時、廊下から足音が聞こえてくる。

 そして扉が開かれ、そこには学園長と男性の教師が一名立っていた。


「皆さん、指定はしませんので、一度席に座ってください」


 その学園長の言葉を聞いて、教室内の生徒全員が各々近くにあった席へ座る。

 全員が席に着いたことを確認すると、学園長が連れて来た担任と思われる教師が話し始める。


「俺は、今日からお前達の担任になった「ドクタス」だ。教科は魔術を担当している」


 そしてため息を吐き。


「聞くが、もう自己紹介とか終わらせちゃった感じか?」


 ドクタス先生は個人に聞くでもなく、全体に聞く。


「つい先程、終わりました」


 シリスが先生に言う。

 流石、新入生代表。


「そうか………………それじゃあ、予定を飛ばして寮について説明するぞ」


 そう言って、寮についての説明を始めた。


「まず、寮は男子寮と女子寮で分かれている。方向はあっちだ」


 そう言って教室の中から寮のある方向を指差す。


「部屋は各自、この後鍵を配るのでそれを見てくれ」


 その後も説明は続く。

 しかし、説明の全てが最低限に達していないような情報量で、いい加減だったり、他人任せだった。

 この人は何故、教師をやっているのか分からないほどに説明が下手だった。

 そして鍵が配られ、そのまま解散となった。

 僕を含めて、ほとんどの生徒はそのまま寮に向かった。

 鍵に書かれている部屋に向かうと、廊下の突き当りにその部屋があった。

 鍵を開け中に入る。

 部屋にはベットが一つと机が一つあり、畳のような大きさの窓が付いている。

 僕は制服を着替え、ベットに横になる。

 そしてそのまま目を閉じ、眠りにつく。


 すると目に見える景色が変わる。

 あの瞼を閉じた見えているかもわからない真っ暗の視界から、薄暗い景色に変わる。

 ここに来るのは、もう何回目だろうか?

 そしていつもの声が聞こえてくる。


「小僧、やっと来たか………………」


 そこにはハザデスさんが待っていた。

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