53話 王都へ行こう
「龍の咆哮」
高密度の魔力を含んだ、光線が魔物を焼き殺す。
そして、キラボシが剣を振るい、魔物を真っ二つに斬る。
斬られた断面から赤黒い血が流れ出て、非常にグロテスクだ。
「これで、最後!」
そう言って、最後の1体を斬り捨てる。
「やっとだ~」
キラボシが地面に腰を下ろす。
「そこまで疲れたのか?」
「精神的に疲れるんだよ」
「精神的に」と言っていることから、キラボシは肉体的には疲れていないのだろうということが分かる。
「そうかそれじゃあ、少しここで休もう」
僕はキラボシを気遣い、提案する。
「いや、大丈夫だから、行こう」
キラボシは立ち上がり、主張する。
「本当に大丈夫なのか?」
再度、確認する。
「大丈夫、お願いだから、早く出発しよう」
そう僕にせがむ。
何故かとても焦っているように思える。
ドラゴンスパイラルを下山をしているときは、特に急いでいるような素振りはほとんどなかったはずだが、何か用事を思い出したとかだろうか?――――まさかな、と自分の考えを否定する。
もしも用事があるとしたら、二日も話し続けるなんてことはするはずがないし。
「それじゃあ、走って行こうよ。全力でさ」
キラボシがポーズをとって、提案する。
その誘いを聞いて、絶対になにか急いでいる、と確信する。
「分かった。それなら、走って行こう」
予定があるなら言えばいいのに、そう思い誘いに乗る。
「……………………3」
キラボシがカウントを開始する。
「………………2」
「…………1」
「……0!」
その言葉を合図に僕とキラボシは走り始める。
森には木や岩などの障害物があるため、回避しなければならない。
まるで、パルクールのようだ。
少し前にもこんなことがあった気がする。
速さはキラボシの方が前に出ている。
僕は『龍の力場』で加速しているのに差は縮まらない。
さすがに妨害はするのは気が引けるので、加速を続ける。
そしてしばらく競っていると、僕とキラボシが並ぶ。
だが、並んでから数秒経たずに王都の入り口である巨大な門が見え、追い越す暇もなく同時にゴールした。
「いや~、同時か~」
キラボシは息を切らしているようすはない。
すると門から近づいてくる人がいる。
「おい、ここで何をしている?」
衛兵のようだ。
「衛兵の人ですか? 王都に入りたいんですけど」
キラボシは衛兵に話しかける。
「何か身分を証明できる物を提示してください」
キラボシは【空間収納】から紙を取り出し、衛兵に渡す。
「これ、通行証です」
衛兵はそれを受けとると、隅々まで目を通す。
「では、通行を許可します」
「はい、行くよ」
キラボシは僕を連れて、門をくぐった。
僕はこの国に――――フィデリスドラコ王国に入国した。
~キラボシが焦っている理由~
『下山成功!』
すると、魔物が出てくる。
『うっとうしいなぁ』
戦闘が開始する。
『そう言えば今日って何日だっけ?』
計算する。
『あの時が10日だから……………………19日か――――って、あれ?』
19日に用事があることを思い出す。
そして、ギリギリになった理由が自分のした旅の話だと気が付く。
『言いだし辛い』
これが急ぎ始めた理由である。




