50話 武具の類
「お兄ちゃんに提案があるんだけど」
「何だ?」
キラボシが朝食をとった後に何の脈絡もなく言ってきた。
「実は私、今年から学校に通うんだ」
「そうか学校か、頑張れよ。キラボシ」
学校か、この世界の学校は一体どんな風なのだろう?
そんなことを考えていると、キラボシが聞いてくる。
「それで、勇者の推薦の枠があるんだけど、お兄ちゃんどう?」
最初聞いたときは自分の聞き間違いかもしれないと思った。
なので確認する。
「キラボシ、推薦って?」
「つまり、私の推薦でお兄ちゃんが学校に通えるってこと」
聞き間違いではなかったらしい。
僕がキラボシに理由を聞くと、こう答えられた。
「お兄ちゃんって、強いんだけど………………一般的な常識が欠けてるからね」
キラボシによれば、過去での僕の行動の節々に悪い方で常識はずれなことが多かったらしい。
当時は気にしていなかったが、成長し、一人で旅をするようになって違和感を感じたそうだ。
そう言われると僕は断ることができない。
「それなら頼む」
僕はキラボシに言った。
僕の返事を聞くと、キラボシは歩きながら学校の説明を始めた。
「私たちが通う学校は、王立学園で、丁度今向かっている方向にある「フィデリスドラコ」っていう国の学園だよ」
キラボシが指を指す。
確かこの方角の山頂にいるのは火龍さんだ。
越えるついでに挨拶でもしておこう。
「学園では、剣術なんかの武術や魔術、薬学、兵学などなど、色々なことが学べるよ」
それを聞いて僕はキラボシに質問する。
「お前は何を学ぶんだ?」
「私は大体のことを実践でやってきたからね。学ぶことはほとんど無いよ」
じゃあ何で学校に通う必要があるのか、とキラボシに聞く。
「そりゃあ、楽しそうだからね」
まぁ、言いたいことは分かった。
「それに学園は国でも有名なところだから。コネがつくれるよ」
コネ、僕は今欲しいわけではないが、確かに役立ちそうだ。
「私が知ってることはこれぐらいかな………………」
意外とキラボシも学園について知らなかった。
「…………あれ?」
キラボシが何かに反応する。
「どうした?」
「この先にドラゴンがいるみたい。どうする?」
ドラゴンか………………
龍神として、なるべく倒したくはない。
「なるべく倒さないように進めないか?」
「う~ん、難しい。他の魔物なら覇気系のスキルで遠ざけられるけど、ドラゴンは逆に向かってくるからな~」
「好戦的すぎるな…………」
「と言うか、お兄ちゃんはドラゴンの頂点なんだから、どうにかできないの?」
どうにかと言われても困る。
僕を龍神として扱ってくれたのなんて、火龍さんくらいだし、方法なんて知らない。
今度、ハザデスさんに教えてもらわないと。
ドラゴンだが、権能でどうにかできないだろうか?
僕は『神格覇気』を発動させる。
「あ~、寄って来てる」
キラボシが伝えてくれる。
この距離だと、僕の【気配感知】にも引っ掛かる。
数は10体弱だ。
そして、僕とキラボシの目の前に姿を現す。
ドラゴンは属性をまだ持っていないようだ。
僕は一応、コミニケションを取ってみるが、返答は無し。
戦うしかなさそうだ。
できれば権能で無力化したい。
ドラゴンは僕に向かって来るが、僕にとってはもう遅い、遅すぎる。
あくびが出る――――とまではいかないが、とても遅い。
僕は向かって来たドラゴンに触れ、権能を試す。
『龍の武器化』
権能を発動すると、ドラゴンは光り出し、形を変える。
そして、後に残ったのは一本の剣だ。
「成功」、その二文字が頭にうかんだ。
正直、成功するかは賭けだった。
だが、こうして成功できた。
「キラボシ、ドラゴンはどうにかできそうだ」
僕はキラボシに伝える。
キラボシは剣を抜こうとしている最中だった。
「そう? それなら、任せるよ」
キラボシはそう言うと、剣から手を放す。
早いタイミングで権能が通じることを知れてよかった。
そう思いながら、僕は向かって来るドラゴンを次々と武器に変える。
盾、槍、戦斧、短剣、弓に矢、さらに鎧などの武器に変えていく。
そして、最後の一匹を武器に変える。
辺りには大量の武器。
「終わった?」
「終わったよ」
僕は落ちている武器を手に取る。
「それ、どうするの?」
キラボシが聞いてくる。
「自然に帰すに決まってるだろ」
僕は武器をドラゴンに戻そうとする。
が、何故か戻らない。
使い方は間違っていないはずだ。
僕は武器に『解析』をかける。
~結果~
|分類:竜槍
|スキル
|なし
スキルがない。
火龍さんの時はスキルがそのまま付いていたはずだ。
そこで僕は魂の有無を確認してみた。
すると魂は確認できなかった。
この武器に変わったドラゴン達は死んでしまったことが分かる。
まさか、死ぬとは思わなかった。
火龍さんの時は全く問題なく戻すことができたから、ドラゴンでもいけると思ったのだが、失敗したようだ。
すまん、ドラゴン達。
僕は手を合わせて、ドラゴン達に謝罪した。
「もう戻らないみたいだ」
「えっ、そうなんだ………………じゃあこれはどうするの?」
キラボシが大量の武器(ドラゴン製)を指差して聞く。
「とりあえず持って行こう」
僕は【空間収納】に武具(ドラゴン製)をしまった。
「それじゃあ、行くか」
「そうだね」
僕とキラボシは再び歩きだした。




