48話 キラボシは凄い
「それで、その時に首都へ迫る魔物の大群を私が一掃したんだ」
キラボシは自慢げに語る。
話しているのは僕と別れてからの旅の話だ。
些細なことであったり、歴史に関与していそうな大事件の話などもあるが、大半は修行の事だ。
「それでEXスキルを獲得したら急に「しーくれっとあちーぶめんと」って言う、珍しいアチーブメントを達成したみたいでさー」
中にはこんなとんでもない話も混じっている。
「凄いなキラボシ」
本当に凄い話ばかりだ。
「元気そうだし。大きい怪我とかしてなくてよかったよ」
そう言うとキラボシがキョトンとした顔になる。
「いいや? 大怪我はしたよ? 腕が消しとんだりだとか………………」
僕が驚いて止まる。
腕? え?
僕の様子を見てキラボシは慌てて訂正する。
「安心して。すぐに再生して生えてきたから」
「お前、平然と言うな…………」
再生、おそらくは傷を治すスキルなのだろうが、腕まで生えるとは…………
「あ、完成したよ!」
キラボシは鍋からスープを注ぐ。
このスープはキラボシが一番好きな料理だそうで、旅の話をしながら作っていた。
キラボシによれば、旅では自炊がほとんどだったらしい。
僕はスープを一口飲む。
「美味いな…………」
さすが、日常的に自炊していた人は違う。
僕なんかとは比べ物にならないほど美味しい。
「ふふーん! これぐらい作れないと、旅なんてやってられないからね!」
キラボシはドヤ顔で言う。
そしてキラボシは自分の分のスープを注ぎ、飲み始める。
「いやー、数日ぶりにご飯を食べた気がするよ」
キラボシはのんきに言う。
数日って………………
「キラボシ、少なくとも数日は過ぎているぞ?」
キラボシが泣きやんで、話し始めてから、二回は日が沈んでいる。
キラボシはスキルなのか分からないが、飲まず食わずで話し続けるので、僕が「ご飯にしよう」と提案してやっと食事をとったのだ。
話し続けるキラボシは兄ながらとても恐ろしかった。
「別にいいの、いいの」
キラボシ、やはり凄い子だ。
「そう言えば。ドラゴンスパイラルはどうやって越えたんだ? 頂上に龍がいただろ、倒したのか? それともいない場所を通ったのか?」
「あ~、いたよ。でも倒してはいないから安心して」
いたのに倒していない?
「何属性の龍だ?」
「火属性だよ。ほら、お兄ちゃんが剣に変えてた」
なるほど、火龍さんか。
「火龍さんは元気そうだったか?」
「うん、あんまり変わってなかったよ。強かったし」
戦いはしたのか。
倒してはいないということは模擬戦のようなことでもしたのだろう。
「今なら僕よりキラボシの方が強いんじゃないか」
僕がそう言うとキラボシは、
「確かに今は私の方が強い……………………と言いたいところだけど、私的にはお兄ちゃんの方が強いかな」
「ありがとう、キラボシ」
キラボシは僕の強さを買いかぶっている。
今ならキラボシの方が強い。
でも少し嬉しい。
「それじゃあ、お兄ちゃん、おやすみ」
キラボシは寝てしまった。
そして僕も眠りにつく。
「久しぶりじゃの、小僧」
眠るとそこは地獄でした。




