46話 元の時代へ
キラボシと別れた僕は、不可侵領域に向けて飛んでいる。
が、前がよく確認できない。
理由は涙だ。
あの後すぐに涙があふれた。
キラボシ、本当にごめん。
こんなダメなお兄ちゃんでマジでごめん。
そして、未来の――僕からしたら現代なのだが――キラボシも本当にごめん。
それにしても、あのペンダントのことだ。
あの時は訳が分からず返されたが、あれは確かに僕がキラボシへ貸したものだった。
キラボシは七年後まで僕と交わした約束を覚えていたのだ。
めっちゃ嬉しい。
それと同時に自分がふがいなく感じる。
だが、一つ気になることがある。
それはペンダントがどこから来たのかだ。
僕が託したペンダントは元々、現代でキラボシから返された物だ。
そしてそのペンダントは過去で僕が託した物で、さらにそれは……………………
こんな風に無限に繰り返される。
これが『解析』で失敗した理由なのだろう。
僕はそれをそういう物なのだと認識した。
涙を服の袖で拭いながら、不可侵領域を確認する。
人の手が一切入らない場所なので、風景は七年後とあまり変わらない。
そもそも木と岩くらいしかないので、変わりようがないというのもあるだろう。
木々があり、岩があり、僕の生まれる岩山もあった。
ちなみに自分らしき卵はどこにも見当たらなかった。
さて、これ以上ここで何かをすると、未来に影響が出てくるかもしれないので、早く帰るとしよう。
僕は木の小屋へ向かおうとした。
だが、そこで気が付いた。
小屋ってどこに立ってたっけ?
小屋の場所は未来でも記憶していない。
また、一から小屋を捜さないといけない。
めんどくさい、と一瞬思ったが、すぐにその考えを消した。
また、キラボシに会うためだと――そう自分に言い聞かせた。
僕は不可侵領域を練り歩き、小屋を捜した。
時間はたっぷりとあったが、急いだ。
早くキラボシに会いたい。
そして、謝るのだ。
こんなダメで情けない兄で面目ないと、七年も待たせてしまってすまないと、そう謝りたいのだ。
そうして必死で捜していると、それを発見する。
その小屋はやはり未来と変わらずに建っていた。
未来の方は僕が焼き払ってしまったので、この小屋を見るのもこれで最後だ。
この小屋のせいで散々な目にあった。
だが、キラボシとのことだけは、この小屋が起こしたことの中で唯一のいいことだった。
そのことだけを言えば――――いや、そのことだけでこの小屋を建てた奴の罪は無しでいい。
僕は小屋に入る。
中はやはり殺風景でほとんど何もない。
机の中央にはあの懐中時計が置いてある。
僕は行きの懐中時計を机に置き、帰りの懐中時計を手に持つ。
七年後には行きの懐中時計の一回分の充電がされるのだろう。
原理はサッパリだけど、されるのならそれでいい。
僕は懐中時計の竜頭を押す。
待ってろよ。輝星
僕は元の時代へ跳んだ。




