38話 森での用事
キラボシと僕は木々の立ち並ぶ森の中を話しながら歩く。
「お兄ちゃん、やりたいことやってきてもいい?」
キラボシが話の区切りがついたときに聞いてきた。
そういえばキラボシは森に入る前に何か用事があるって言っていた。
「いいよ、僕はここで夕ご飯でも作って待ってるから迷子になるなよ」
「は~い!」
キラボシは元気良く返事をして、行ってしまった。
僕は早速、夕ご飯の準備を始める。
食材調達は気配感知で難無く完了した。
狩ったのは鹿に近い見た目をした動物だ。
ついでに道中で見つけた食べられる果実や野草も採っておいた。
解析で毒があるかは確認済みだから安心してキラボシに食べさせることができる。
前世でもあまり自分で料理なんてしたことがないから、簡単に焼いて、切り分け、皿に盛りつけた。
作りながらこれを料理と呼んでいいのか少し悩んだが完成した。
さて、僕は出来上がった料理を空間収納に収納してキラボシを探す。
【索敵】に反応があるので近くにいることは間違いない。
【気配感知】で探すとすぐにキラボシを見つけることができたが、キラボシの周りに複数の魔物の反応があった。
大丈夫だろうか?
僕が不安になりながらも気配を消してキラボシのいる場所まで移動した。
キラボシのいる場所に着くと僕は草むらに隠れ、キラボシの様子を窺う。
キラボシは剣を構え、魔物に向けて剣技を振るい、魔物をバッタバッタと倒している。
見た所、キラボシは怪我もしておらず返り血すら浴びていないが、息切れなのか過呼吸になっていて顔には疲労が見られる。
『頑張れー!』
僕は口には出さず、心の中でキラボシを全力で応援する。
キラボシは最後の一匹を倒した。
怪我もしておらず、返り血も浴びないで倒し切った。
キラボシが自分の額の汗を拭う。
僕はそれを見終えるとさっきの場所へ戻った。
キラボシは少しすると帰ってきた。
僕は帰ってきたキラボシに聞いてみる。
「お帰り、キラボシ、用事は済んだか?」
「うん、済んだよ!」
「へぇ~、ちなみにどんな用事だったんだ?」
「魔物を倒してきたの!」
「魔物を――凄いな! ご飯はもう出来てるから一緒に食べよう」
僕は料理をキラボシに渡す。
キラボシはそれを受けとると、両手を合わせる。僕も両手を合わせる。
「「いただきます」」
僕とキラボシは夕ご飯を食べた。
味は前世の料理や町で食べたサンドイッチと比べても劣るほどの味で、お世辞でやっと料理だと言える物だった。
キラボシは美味しそうに食べているが、僕はもっと練習しなければと反省した。




