34話 換金
「前世…………転生者?」
僕は少年……ダクトの発言から彼が転生者であるという結論に達した。
今の数秒で考えられたのは思考加速のおかげだろう。
「そうそう、それ! 転生者! こんな変な世界でも転生者って言葉はあるんですよね」
もしかして……
「お前、前世は日本人か?」
「そうですよ! そうなんです! 前世、日本人! 何で分かったんです?」
『あぁ~、なるほど』
こいつの前世に心当たりがある。
このしゃべり方、露店での交渉術、ユニークスキルの名前、クラスに似ている奴がいた。
学校では知らない人はいない有名人、名前は水前 商
交渉上手で中古のテレビを3000円で手に入れたこともあるとか、しかもそのテレビを三か月後に2万で売ったらしい。
「お前、水前 商か?」
「はい、僕の前世です。そこまで分かるということはあなたも僕と同じ転生者ですね! 少なくとも一度会ったことのある人物」
「あぁ、僕も転生者だ。名前は月並」
「えぇ、えぇ?…………………………あっ、月並さんですね思い出しましたよ。あの………………普通な月並さんですね」
そこまで僕は影が薄かっただろうか?
ある程度の存在はあると思っていたのだが……
僕は少しへこんだ。
僕がへこんだのを見てダクトはあわてて弁明をする。
「いや、別に月並さんの影が薄かったとかではありませんよ! ただ初めて見たときに興味が湧かなかったので記憶が薄っすらとしかなく、僕の記憶力の問題で本当に月並さんの影が薄かったわけではありませんよ」
余計に自信が無くなってきた。
ダクトはそれでも弁明し続ける。
「それに僕が興味を持つことなんて非常にまれですし、クラスメイトの名前だって半分以上はすぐに出てきませんよ月並さん。そう言えばやっぱり前世の名前よりも今世の名前で呼んだ方がいいですか? 今世ではなんと呼べば?」
「…………ミチビキ カケラ」
僕は渋々名乗る。
「分かりました。カケラさんですね。今世は憶えましたよ。それに今世では興味が湧きましたし…………あっ、着きましたよ。ここがギルドです」
ギルドの外観は他の建物より立派なレンガ造りの建物だった。
内装は外装の印象とあまり変わらず、木製の机や椅子が置いてあり、受付らしき場所や飲み物を飲めるバーのような場所もある。
ダクトはそのうちの一つの受付へ真っすぐ向かい、受付の人に話しかける。
「すみませーん、この上位回復薬を売りたいんですけど」
そう言って。受付に瓶に詰めた上位回復薬計11本を置く。
「解析魔道具に掛けるので少々お待ちください」
受付の人はそう答え、回復薬を持って奥の部屋に入っていった。
しばらくして戻ってくるとこう言った。
「確認が完了しました。計11本の上位回復薬、買取価格は金貨8枚でどうでしょう」
「そこをもう少し上げれません?あと1枚くらい」
「では、金貨8枚と銀貨8枚でいかがでしょう?」
「わかりました。その価格でお願いします」
ダクトは換金に成功した。
キラボシに教えてもらった上位回復薬の相場は金貨1枚だから、金貨7枚分の利益が発生したことになる。
やはり、前世から変わっていない。
僕は受付の人に聞く。
「すみません、森でゴブリンを倒してきたのですが換金できますか?」
「ゴブリンならば依頼が出ていたのであちらの受付で報酬を受け取ることができます」
そう言って別の受付に案内された。
「ゴブリンの討伐依頼ですね。何かゴブリンの討伐を証明できるものはありますか?」
「それなら……」
僕はゴブリンの死体を影から取り出す。
「これでいいですか?」
「…………はい、結構です」
そしてゴブリンの死体を数え始める。
「はい、ゴブリン12体なので金貨2枚と銀貨4枚が報酬です」
僕は金貨と銀貨を受け取り、影に収納する。
〈熟練度が一定値に達しました。EXスキル【空間収納】を獲得しました〉
【空間収納】をゲット!
僕はついさっき影の中に収納した金貨と銀貨を【空間収納】に移動させる。
「ダクト、僕たちは宿を探す。ギルドの場所を教えてくれてありがとう。じゃあまた」
「はい、また!」
そう言って僕とキラボシはダクトと別れた。
キラボシが話の外にいってしまった。




