32話 町の露店
町の入り口に着いた。
町の入り口には人が並んでおり、先頭では衛兵が通行審査をしている。
数分ほど待っていると僕たちの番になった。
衛兵の一人が近づいて来た。
「お名前は?」
「ミチビキ カケラ、こっちは妹のキラボシです」
「そうですか、町での目的は?」
「僕たちは旅の者でして……」
「旅人の方なんですか。ところで知ってます?つい数時間前に巨大な魔物が森の方に飛んでいったらしいですよ。恐ろしいですよね」
『急に世間話に切り替わったな』
「それは怖いですね」
「この町が襲われていなくて、本当にホットしていますよ」
「それはよかったですね」
「はい……それでは通行を許可します。よい旅を」
そんな会話をして通行審査を終え、僕とキラボシは町に入った。
町は人が行き交っていて、露店のような店が大通りに出店している。
売っている物は食べ物であったり、布であったり、本であったり、武具の類や使い道の見当がつかない道具などが売っている。
片っ端から解析してみるが、店頭でうたっている効果より効果が低い粗悪品がほとんどだったが、一部は効果のいい物が販売されている。いわゆる掘り出し物と言われる物だろう。
まぁ、今の僕たちは無一文だから掘り出し物だろうと、粗悪品だろうと買うことはできないけどね!
「キラボシ、ギルドってどこにあるのかとか、建物の外見とか分かるか?」
「町によって違うから分からない」
地道に聞き込みをしないといけなさそうだ。
「おい、返金しろ」
ギルドを探す方法を考えていると、露店から声が耳に入ってくる。
「おい、おっさん! さっき売ってもらったこの上位回復薬、中身は下位回復薬じゃないか! 返金しろ!」
誰か詐欺にあったようだ。
あんなに粗悪品があれば騙されても無理はない。
僕は騒ぎの方に目を向ける。
文句を言っているのは子供だった。
キラボシと同じほどの歳の少年が買ったものに文句をつけている。
「坊や何度も言ってるだろ、返金はできないだよ。騙されたと思って受け入れな」
「だけど……」
少年が何か言いかけると店主らしき男が言葉を遮って続ける。
「坊や、ここら辺では騙した奴が悪いんじゃない、騙された奴が悪いんだ。これに懲りたら買い物は選べよ」
日本だったら問題発言だが、この世界ではあの言い分が正しいのだろう。
「分かった。返金は諦めるよ。でもせめて上位回復薬と同じくらい回復できる分のこのポーションを売ってくれ」
「それぐらいなら対応してやる。何本欲しい?」
「9本だ」
「9本だな。銀貨9枚だ」
「そこはちょっとまけてくれよ」
「う~ん、確かに騙されてもらったし、サービスで銀貨7枚でどうだ?」
「それでいい。ありがとよ」
そう言って。少年は店主に銀貨を7枚渡し。液体の入った瓶を9本受け取った。
少年は瓶を抱え、嬉しそうに去っていった。
周りから人々の話声が聞こえてくる。
「おい、見たか? あいつ上手いこと売りつけたよな」
「子供だってのにかわいそうだな」
「あぁ、相場だけ見りゃ坊主はいい買い物だったが、あんなに沢山の下位回復薬は消費しづれぇ、気の毒にな」
僕はその会話を聞いて少年を追いかけた。
ただの親切心で伝えようと思った。
今伝えてもかえって後悔するだけかもしれないが失敗も成功の元だ。
そうして少年の肩を掴む。
「ん? 何か用、お兄さん?」
「さっきの買い物を見ていたが……」
僕が伝えようとすると予想外の返事が返ってきた。
「あぁ、この下位回復薬のこと? それなら考えがあるから大丈夫だよ。何なら見ていく?」




