31話 僕でした。
森を歩き始めて一時間ほどが経った。
魔物に襲われることもなく安全に町に向かっている。
魔物に出会わない理由は僕が恐怖覇気や竜覇気さらに龍神になったとき使えるようになったらしい神格覇気を使っている。
権能は使い方が分からないものが、多いがこれは使えるようになった。
解析が使えればいいのだが、無知の知の調節をしても表示されないので詳しいことは分からない。
少しずつ自分の権能を把握していかないといけない。
それにしても少し町の近くに下りればよかった。流石に遠すぎる。
僕は大丈夫だが、キラボシは大丈夫だろうか?
キラボシを見ると元気に歩いている。
『大丈夫そうだな』
一応、解析しておく。
~結果~
|名前:輝星
|種族:人間
|状態:健康
|スキル
|EX・痛覚耐性、衝撃耐性、腕力、脚力、動体視力
|ユニーク・勇者、耐久、恐怖
|アチーブメント
|耐久者、魔族殺し
追加した項目の状態を見るに問題なさそうだ。
『それにしても勇者か…………』
普通、勇者なんてスキルを持っている人を処刑になんてしないと思うが?
それに魔族殺し、魔物ではなく魔族
~結果~
|魔族
|人類に敵対する魔王側の種族
人類に敵対する種族、つまりは戦争相手、それを殺した。
つまりキラボシは戦争に参加していたということだろう。
勇者なんてスキルを持っているのなら不思議じゃない。
そしてキラボシの発言。
――私ね、失敗しちゃったんだ
つまり戦争で失敗したことが処刑されかけた理由なのだろう。
『こんな子供を戦わせるなんて酷い、酷すぎる!』
僕はキラボシの頭を撫でる。
キラボシは嬉しそうだ。
「キラボシ、森はまだまだ続くから僕に乗らないか?」
「わーい!」
キラボシを肩に乗せる。
「でも、ここで龍になったら人に見られるかもよ?」
「大丈夫、龍にはならないから」
そう、龍の姿にはならない。
「それじゃあキラボシ、しっかり掴まっておくように!」
「うん」
僕は足の一部を龍にして走る。木にぶつからないように龍神眼を全開にする。
そうするとあっという間に森の終わりが見えてきた。
キラボシを降ろす。
「キラボシ、森のそばに人がいる」
「うん、見えるよ」
「僕らは旅人ってことでいくぞ」
「うん」
別に嘘ではない。
僕とキラボシは森の外を目指して歩いた。
「おい、人がいるぞ!」
木々の向こうから声が聞こえる。
「君たち大丈夫か!」
鎧を着た人が聞いてきた。
「大丈夫なので、失礼します」
「いやいや、ちょっと待ってくれ」
素通りすることはできそうにない。
「君たち、森の中で見なかったのかい?」
「何をです?」
僕が見た物なんて木とゴブリンぐらいで他におかしな物なんて見なかった。
「何をって、ついさっき森の中に大型の魔物が飛んで行ったのだが本当に見なかったのか?」
そんなのが飛んでいたのか、出会わなくてよかった。
もし、出会っていたら面倒だったし本当に良かった。
「出会わなくって本当に良かったな、キラボシ」
「お兄ちゃん、ちょっと耳貸して」
何だろう?と思いながらキラボシに耳を貸す。
「飛んで行った大型の魔物ってお兄ちゃんのことだと思うよ」
「えっ?」
僕の事だった。
「何も無かったのならよかった。通っていいぞ」
「あっ、ありがとうございます。キラボシ、行くぞ」
僕は申し訳なくなりながら町に向かった。




