30話 ゴブリン退治
「わぁーい! 楽しい♪」
キラボシが嬉しそうに言う。
僕はキラボシを背中に乗せ、空を飛んでいる。
ジェットコースターみたいなものなのだろう。
「高~い! 速~い! 楽し~♪」
キラボシが喜んでくれて何よりだ。
さて、何故飛んでいるのかと言うとキラボシを喜ばせるためもあるが、あの国から逃げる目的もある。
キラボシが言うには、あの国の名前は「ノルディック王国」、龍を毛嫌いしていることで有名な国らしい。
龍の身としては思うところはあるが、もう僕には関係のない国なのでどうでもいい。
「お兄ちゃん! 見えたよ!」
キラボシが町を見つけたようだ。
地上の方を見ると、確かに町が見える。
「それじゃあ、近くの森に降りるぞ」
「は~い」
町から少し離れた森に下りる。
空を飛ぶくらいならこの巨体でも気配操作で誤魔化せるが、さすがに離れた森の中に下りないと人に見られてしまう。
正直、この森でも人がいたら気付かれるのでかなりヒヤヒヤする。
キラボシを地上に降ろすと、僕は龍から人の姿に変わり着地する。
「それじゃあ、町に向かうぞ」
「うん!お兄ちゃん!」
僕はキラボシと一緒に町を目指して歩きだした。
森の木々は不可侵領域に生えている木と変わらず、高頻度でシブミの木が生えている。
キラボシはルンルン気分で時々スキップをして歩いている。
「キラボシ、町に着いたらやりたいこととかあるか?」
「特に無いよ」
「買いたい物とかも無いのか?」
「無いよ、お兄ちゃんこそ無いの?」
「無いことも無いけど、一文無しだしな」
「お兄ちゃんなら魔物でも簡単に倒せそうだけど……」
「キラボシ、魔物を倒せばお金が手に入るのか?」
僕はキラボシに聞く。
「うん、ギルドなんかで討伐依頼が出てたら報酬が貰えるし、解体して素材として売ってもお金は手に入るはずだよ」
いいことを聞くことができた。
僕は気配感知で周囲に魔物がいないか確かめる。
少し離れた場所に動物の集団の気配が確認できた。
「キラボシ、ちょっと寄り道でもしよう」
「?、分かった」
僕は気配の方に向かって歩く。
少し歩けばそこには魔物がいた。
その魔物は人型で肌は緑色、この世界での呼び名は分からないが前世の呼び方で呼ぶとその魔物はゴブリンだった。
「あっ、ゴブリン」
ゴブリンだった。
「キラボシ、お兄ちゃんちょっとあれ狩ってくるから、少しだけ待っててくれ」
そう告げて、ゴブリンの集団に突撃する。
倒すには打撃だけで十分だが、ここはキラボシにかっこいいところを見せるために魔法も使おう。
『ウィンドカッター』
ウィンドカッターはゴブリンを両断していった。
『影刺し』
黒い棘がゴブリンの身体を突き刺す。
最後の準備のためにゴブリン達の精神強度を解析する。
おおよそ15前後だった。
『スキル発動!』
僕は恐怖の掌握を発動させ、ゴブリン達の魂と肉体を分離する。
ゴブリン達は一斉に地面に倒れ、ピクリとも動かなくなった。
「キラボシ、お待たせ」
キラボシは何が起こったか分からないような顔をしている。
「お兄ちゃん、これ全部運ぶの?」
キラボシが聞いてきた。
そう言えば考えていなかった。
「どうしようか…………」
「考えて無かったんだ……」
どうやって運べばいいのか、ゲームとかで出てくるアイテムボックスみたいなのがあればいいがそんなもの持っていないし、キラボシも持っていなさそうだ。
『何か別の空間に物が収納できればいいんだが…………あ』
ここで僕は思いついた。
『影の中に収納すればいいんじゃね』
空気だって入れることができたしできないことも無いはず。
自分の服の袖に影潜りを使いゴブリンの死体を入れてみる。
結果は予想通り、大量のゴブリンの死体を収納することができた。
「よし、町に行くか!」
「あ……うん」
キラボシは驚いたまま頷いた。




