2話 食べ物を取ろう!
親ドラゴンを待ち始めてから早数時間、一向に帰ってくる気配はない。
『ドラゴンが爬虫類かどうかは分からないけど爬虫類って子育てする種類の動物じゃないのか?』
僕はこのまま親が帰ってこないと起こる問題について考える。
それは餓死だ。
待ち始めてから少しのころから自身が空腹なことを気にしていた。
親が帰ってこないなら食べ物を与えてもらうことができず、自分で食べ物をとってこないといけなくなる。
そうなった場合、生まれたばかりの自分の弱さが心配になる。
様々な作品でドラゴンは強く表現されるが、生まれたばかりの生物は大抵弱いので今の自分は弱いと考えた。
だからこの生まれた場所を離れず親が帰ってくることを待ったのだが、このままだとそうも言ってはいられない。
『このままだと最悪の場合餓死するが、ここを出て行ったら今すぐにでも死ぬかもしれない』
悩んだ末、僕は仕方なく岩山を下り森の中に入って行った。
木々の見た目に大きな変化はない。
強いて言えば大きく見える位だが自分の体が小さくなったからだと考える。
僕は食べることができそうな木の実や動物を探した。
動物は種類によっては自身が食べられることも考え木の実を探した。
『あぁ~日本食が恋しい』
前世では特に好きでもなかった日本食が恋しいと思えるほどに空腹だった。
『リンゴみたいな実ならいいけど、そういう植物が野生で生えるのは珍しいしあるわけないか』
そんなことを考え木になっている木の実を探す。
『あった、あれ木の実だよな?』
一本の木に食べることが出来そうな木の実を見つけた。
その木の実は果物にはほど遠くどんぐりに近い見た目をしていた。
『どんぐりって確か食べられたよな?』
昔の人はどんぐりをクッキーにしていたと言う話を思い出す。
『よし、食べよう』
僕はここである重大な事実に気が付いた。
『どうやってとればいいんだ?』
僕の今の大きさでは高い場所になった木の実をとることができないのだ。
木を登ろうにもドラゴンの体では枝をつかむことさえできない。僕は決心する。
『飛ぶ練習をしよう!』
まずは両翼を同時に大きく羽ばたかせる。少しだけ耐空したがすぐに落ちてしまう。
それでも僕は何度も挑戦する。何度も、何度も、何度も。
『何がダメなんだ?タイミングか?』
試行錯誤をして何度も何度も繰り返す。
繰り返すうちに少しだけ飛べるようになる。だが、木の実の高さには及ばない。
『この調子で練習すればいつかは木の実に届くはず』
そう思い練習を続ける。
〈熟練度が一定値に達しました。EXスキル【飛行補助】を獲得しました〉
頭の中で声が聞こえた。
前世でも聞いたことがないような声、言葉にするならば脳内アナウンスと表すことができる。
『なんだよこの声!異世界っぽくなってきたな』
僕は喜んだ。
飛行補助というスキルは名前からして飛ぶのに役立つと考えられるからだ。
『試しに飛んでみよう』
僕は羽ばたくと脳内アナウンスが聞こえる前より体が軽くなったと感じる。
このスキルのおかげで木の実のある高さまで飛ぶことができたのだ。
木の実を落としてから地面に戻る。
そして翼でつかみ口に運ぼうとするが思い出したように心の中で言う。
『いただきます』
前世では気にしたこともなかった食事をする前の言葉を龍生はなぜか言った。
そして木の実を口に運ぶ。
味の感想は渋く苦味が強い、自生している植物だからこんなものだろうと考える。
『ごちそうさま』
食べ終わると最後に心の中で言う。
『それにしてもこの世界にはスキルなんてものがあるのか。あのスキルを獲得したおかげで飛ぶのが楽になったな』
僕は脳内アナウンスの内容について考える。
『あの声は確か「熟練度が一定値に達した」って言ってた。てことは熟練度をためればスキルを獲得できるのか?』
何をすれば熟練度が貯まるのか、どのくらい貯めればいいのか分からないがこれからの目標はスキルの獲得を目指すことにした。