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転生したらドラゴン!  作者: カム十
逆行期
29/99

28話 龍と罪人

 僕は雲を突き抜け、地上から遥か高く空を飛ぶ。

 雲は地面のように続いている。


 なぜ山頂を通らないのか、それは道中のドラゴンの相手が面倒くさいからだ。

 負けはしないが面倒くさい。


 不可侵領域の外に出たら何をしようか? 美味しい物でも食べるか、人間の町を観光するのもいいかもしれない。とても楽しみだ。

 そういえば、ドラゴンを倒すのを忘れていた。

 これではお金が手に入らない。


『……まぁ、今度倒せばいいか』


 そんなことを考えながら飛んでいると、雲が途切れる。

 地上を見ると建物の集合した場所が見える。

 おそらくこの世界の町だろう。


 『望遠』で覗いてみると、町には人が居なかった。

 広い道を猫しか歩いていない。

 町にある一際大きい闘技場に人々が集まっているのが見える。

 人々は観戦席から闘技場の中央を見ている。

 闘技場の中央には女の子が捕まっていて、脇には槍を持った兵士が待機していた。


 僕は状況から考えて、女の子が処刑されかけていると推理した。


『可哀相に……』


 そう思った。女の子は見たところ、小学校低学年ほどに見える。

 あんなに幼い子供が処刑されるなんて少なくとも僕は可哀相に思う。


 だから僕はその子を助けることにした。

 そんなことをしてもいいのかって?

 いいのだ。なんて言ったって僕は龍神――神様なのだから。


 僕は闘技場に下り立つ。

 人々は皆、僕を凝視している。

 龍が空からやって来たのだから驚いて当然だ。

 僕は驚いている観衆を無視して処刑されかけている少女の方に目を向ける。


 少女の表情は死んでいた。

 もう全てを諦めたような、この世界に絶望しているかのような顔だった。

 生きたいという気持ちなど一切感じとれない。

 僕はその少女を龍の手で持つ。

 周りでは兵士が武器を構え警戒している。

 彼らは仕事をしているだけだ。

 なので危害は加えない。

 僕は少女を持ったまま闘技場から飛び去った。


 そして町から離れた森の中に着陸し、少女をゆっくりと地上に降ろす。

 少女の顔を見るとなぜかキラボシを連想させた。

 キラボシは明るい表情だったが、この子は暗い表情をしている。

 それでもキラボシと似ている。


 そんなことは置いておいて。

 僕は龍から人の姿に変化して、少女の前に立つ。

 そして少女の手にはめられている鎖の付いた腕輪を取る。


「おい、大丈夫か?」


 少女に声をかける。

 少女はこちらの顔を見たあと……


「何で助けたの?」


 ……と聞いてきた。


 助けたことに深い理由があったわけでは無い。

 だから僕は正直に答える。


「可哀相って思ったからだよ」


 そう言うと、少女は有り得ないものを見るような目で僕を見てきた。

 そして……


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 泣き出してしまった。

 少女の目から大粒の涙が雨のように落ちていく。

 きっと我慢していたのだろう。

 自分だったら今どんなことを言われたいか考える。

 そして僕は泣いている少女の頭をなでながら、こう声をかける。


「頑張ったね。もう大丈夫だよ」


 少女は泣き続ける。


 僕はその少女を安心させるように声をかけ続けるのだった。

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