27話 逆行
キラボシはテントを張って、スープを作っている。本当に何もせずただ過ごしている。
何かを探すわけでも無く本当にただ過ごしている。
ここに来た理由も分からないままだ。
ペンダントを『解析』してみてもある一点以外は何の変哲も無いただのペンダントだった。
一点だけの変哲はこのペンダントの作られた時期が全く分からないことだ。
『無知の知』で『解析』の範囲を変えることで通常の『解析』では分からないことも知ることができ、その物の作られた時期も知ることができるのだが、どういうわけかその項目が失敗になる。
『そう言えば、この懐中時計もいつごろの物なのか知らないな』
僕は懐中時計の作られた時代を知るために『解析』をかけてみた。
~結果~
|~失敗~
結果は失敗、あのペンダントと同じだ。
この懐中時計とペンダントには繋がりがあるのだろうか?
僕は何気なく懐中時計の蓋を開けてみる。
懐中時計は横に付いているボタンを押すと蓋が自動で開いた。
中の文字盤に書かれた数字は読むことができなかった。
秒針は動いていた。動いていたが僕の知る時計とは逆に回っていた。
この世界の時計はこれが普通なのだろうか?
そう思っていると時計の秒針が逆方向に回り出した。
『壊れているのか?』
壊れていても不思議ではない。試しに懐中時計の上に付いている竜頭を回そうとしてみる。
竜頭は回せなかった。
僕は動かせそうな部分がないか、懐中時計を調べた。
すると竜頭は回すことはできなくとも押すことができた。
ストップウォッチみたいだと思った。
竜頭を押した直後、懐中時計の針が勢いよく反時計回りに回り出した。
そして周囲が真っ黒になる。
真っ暗ではなく真っ黒だ。
そこには僕しかいない、一瞬で別の空間に移ったような感覚だ。
手には懐中時計が握られている。
僕は焦って竜頭をもう一度押す、すると周囲に木々が戻る。
僕は少し安堵する。
『これって一体何なんだ?』
正体不明の懐中時計を見る。
懐中時計は針が戻ったり、進んだりしている。僕はもう安易に触ることはしないでおこうと決める。
『さて、引き続きキラボシの監視でもしよう』
そう思い、キラボシを探す。
ここである違和感を感じた。木の位置が変わっている。
『もしかして……この時計、瞬間移動の機械なのか?』
僕は背中に翼を出し、空に向かって飛ぶ。
木よりも高い位置に着いたら望遠で遠くを見る。
遠くにはドラゴンスパイラルが壁のようにそびえている。
不可侵領域からは出ていないようだ。
僕はキラボシを空から探す。
不可侵領域の隅々まで飛んで探すが、キラボシは見つからなかった。
もしかしたらもうここから出て行ったのだろうか?
もし出て行ったのならもう僕がここにとどまる理由は無い。
僕は外に出ることにした。
今さらかもしれませんが、カケラはこういう性格です。
少し楽観的過ぎる性格です。




